私の瞳に映るもの
2021/08/14
初めまして。私の名前はさゆりと言います。よろしくです。
自慢じゃないですが、スタイルは、日本女性の平均よりは、わりといい方だと思います。
自慢じゃないですが、胸もそこそこある方ですよ。あはは。
残念ながら、顔の美醜は、自分ではよくわかりません。美人さんだといいな。
って、あはは。本当のこというと、わりとどうでもよかったりしてます。
ちょっと前までは、けっこう気にしてましたよ。自分の顔が可愛いかどうかって。
でも、今はね、か、可愛いよ、って、言ってくれる人がいるから、それで、十分なんです!
……すみません。
少々、のろけが過ぎました。さゆり、少し、反省。
でも、少しくらいのろけさせてくださいよ。
自慢じゃないですが、けっこうキツい人生送ってきたんですよ。
片意地張って暮らしてましたよ。他人と違うハンデがありましたからね。
ありましたというか、今もそうなんですが、私、目が見えません。
私の場合は、先天的です。“見える”ということ自体が、よくわかりません。
触らなくても、ものの形がわかるらしいですね。便利そうで、うらやましいです。
うらやましいですが、見えなくても、あまり困りはしません。
近いものは触ればいいですし、遠いものでも、音や匂いや風の感触で、だいたいわかりますから。
困らないどころか、両親にも愛され、友達にも恵まれ、私は幸せ者でした。
そりゃもちろん、幼少のみぎりには、軽?くいじめられたりしましたり、
世間の風当たりっていうんですか? まあいろいろと、うけまくってきちゃいましたよ?
聞きたい? 聞きたいですか? ちょっと引いちゃいますよ。
聞きたくないですよね?。もっと楽しい話がいいですよね?。
そんな私ですが、一つだけ、あきらめていたことはありました。
それは、やっぱり、その、こ、こここ、恋ってやつですっ!
わ、私だって、かっこいい男の子と、ラヴラヴになってみたいっ!
愛してるよハニーって言われたいっ!
女の子なら、誰だって、当然願うことですよね……。
え? “かっこいい”とか、見えないのにわかるのかって?
そのくらいわかりますよ。というか、普通の人とは規準が違うだけです。
わかりやすくいうと、声萌えです。声萌え。
アニメや洋画の吹き替えで有名な、あの男性声優とか、この男性俳優とか、
もう、声を聴くだけで痺れちゃいます。もう萌え萌えなんだったら!
えー、失礼しました。あとはやっぱり、匂いですね。
たばこ臭いのは嫌っ! 適度に清潔で、でも少しだけ、男の子の匂い。
このあたりは、なかなかわかってくれる人がいなくて、少し寂しいです。
そして、手触りですね。適度に筋肉質なのがよいです。痩せ過ぎや太り過ぎは、やです。
最後に味ですが、これは、その……あ、味を知ってる男の子は、
その、ゆーくんだけなので……く、比べようが、ないんです。
ゆ、ゆーくんの、あ、味はね……、だいたい、塩味です。
あはは。あ、汗が塩味なんだから、あったりまえですよねっ!
ほっ、ほかに、違うものが、ゆーくんから出たりは、するけどしないんだったらっ!
……ごめんなさい、さゆりは少し嘘をつきました。
いつの間にか、名前出してますが、ゆーくんっていうのが、私の、こ、恋人です。
聞きたい? 聞きたいですよね? ゆーくんと私の、馴れ初めを聞きたいですよね?
もう、しょうがないですねぇ。
本当は二人だけの大切な思い出ですけど、今日だけ、特別ですよ?
・・・
もうだいぶん暖かくなってきた、ある春の日。
普段の散歩道、杖をついて歩いていた私は、うかつにも野良犬に杖を咥え去られてしまいました。
さすがにどうしたものやらと。
通い慣れたこの道。帰れなくはありませんが、杖がないのは少々危ないです。
困っていた私の前に、聞き慣れない声が聞こえました。
「(すーっ)あっ、あのっ! お困りではありませんかっ!」
めちゃくちゃ緊張しているようです。話し出す前の深呼吸まで聞こえています。
「はあ。その。犬に杖を持って行かれてしまって……」
「でで、でしたら、もしよろしけれましたら、ご自宅までご案内させていただきまするっ!」
私は目が不自由ですが、この人は日本語が少々不自由なようです……。
まあ、慣れない慈善に緊張しているのでしょう。
普段、困っていないときの親切は、丁重にお断りしているのですが、
困っているときは、素直に助けてもらいます。意地張ってても、仕方ないですしね。
あとは、この人に悪意がないかどうかですが……。私は耳を澄まします。
目の前の人の鼓動が聞こえます。あれま。とくとく、じゃなくて、ばくばく、ですね。
声の口調も心音も、正直、小心者の類です。
たいした悪事は出来ないでしょう。まだ陽も高いですしね。
「では、ご案内いただけますか?」
「はっ、はいっ!」
私は笑みを返します。
「ここから自宅まで、十五分ほどですが、お時間は大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫ですっ!」
「では、参りましょうか」
私は自宅の方に歩き出します。なぜかお相手の男性は、進もうとしません。あれ?
「あっ、あのっ!」
「はい?」
「お、お手など、繋がさせていただかせていただかされた方がよろしいかと存じ上げますが?」
「あのー、普通に喋ってくれませんか」
「はっ! その、はいっ。すみません……」
「手を繋いだ方がいいか? という質問でしょうか?」
「はい……」
「別に結構です。私の進行方向に障害物があったら、教えてください。それで十分です」
「あっ、はい……」
あらあら。みるみる消沈してしまいました。
言い方がキツかったでしょうか。そんなつもりはないのですが……。
なんだか、気を使わせる人ですね。
「あの、教えていただけるだけで、私、十分助かるんですが」
「はっ、はいっ! お任せ下さいっ!」
単純そうな人で助かりました。
穏やかな春の日差しを受けながら、二人、てくてくと歩きます。
「あの、いい天気ですね」
「そうですね?」
「あっ、あそこっ! 桜が咲いていますよっ! きれいですね」
「えぇ、そうですね」
「……はっ! あっ、あのっ、すっ、すみません」
「いえいえ」
「その、お気分を害すようなことを言ってしまい……」
「別に気分は悪くありませんが」
「……」
あーもーめんどくさい子だなー。
「桜の美しさを眺めることは、私にはできません。が、桜を愛でることは、私にもできますよ。
桜があるのは、左手の方ですよね。もう少し先にある」
「えっ! どうしてわかるんですかっ?」
「風が桜の香りを運んでくれます。あと、桜の花びらの舞うさざめきが、聞こえませんか?
このぐらいですと、もう満開ですかね」
「すごいっ! よくわかるんですねっ!」
まさか。桜が何分咲きかまで、わかるわけがありません。
確かに香りはわかりますが、もっともっと近づかないと無理です。
場所は単に知っているだけの話。あとはニュースで桜の開花情報を聞いただけです。
「別に普通です。あなたと一緒で、桜を愛でているだけです」
「あっ、はい……そうですね、一緒に、桜を愛でているだけですね」
“一緒”のあとの助詞が違う気がしますが、まあ、別にいいです。
その後も、他愛もない話をして、私たちは、私の自宅の前に辿り着きました。
特に障害物もなく、結局彼には、散歩に付き合ってもらっただけになってしまいました。
私が礼を言うと、礼には及ばないでござる、と、謎の口調を残して、彼は走り去っていきました。
急いでいたのなら、悪いことをしました……。
・・・
「あの、きょ、今日も、散歩でござっ……散歩ですか?」
次の週に、同じ場所で彼に声をかけられたのが、私と彼のお付き合いの始まりでした。
これは、だいぶん後になってから聞いた話ですが、
彼の家は、この場所の真ん前で、前から散歩をしている私を、部屋の窓からぼんやり眺めていたそうです。
な・ん・で・も、一目惚れっ! だったそうですよっ!
都合よく彼の目の前で私が途方に暮れ、これ幸いと、声をかけたらしいです。
もしかしたら、犬をけしかけたのも彼の仕業かと思い、問い詰めてみましたが、
それは本当に偶然だと言い張っていました。まあ、どっちでもいいですけど。
しばらくは、散歩友達として。
そのうち、ゆーくんは、何かと理由を付けて、私をあちこちに誘うようになってきました。
クラシックのコンサートなどが多かったですね。一応、気を使ってくれているようです。
見知らぬところに行くのは、私にとっては、かなり勇気がいる行為ですが、
ゆーくんが時に必至に、時に優しく、私の手を引いてくれるので、
私も、少しずつ、楽しくなってきました。
デートを、ゆーくんに会うのを、心待ちにするようになりました。
まあその、私に気があるのかなーなんて、思うと、少し嬉しかったですね。
でも、単なる気まぐれかな、物珍しいだけなのかな、慈善事業気分なのかな、
とかだったら、あはは、心がペチャンコになっちゃいそうだったので、
あんまり嬉しがりすぎないように、していました。
夏が過ぎ、秋になろうかという頃になると、ゆーくんのデートコースも、そろそろネタが尽きてきたようです。
映画鑑賞とか美術館巡りとかはできませんから、限られた範囲で、ゆーくんは頑張った方ですね。
さゆりさんはどこか希望はありますかと聞くゆーくんに、私は海に行きたいと言いました。
そういえば、この頃にはもう、ゆーくんを“ゆーくん”と呼ぶようになっていましたね。
「えっ? さゆりさん、もう泳ぐには寒すぎるよ」
「泳ぎたいわけじゃないから……波の音をね、聞きたいなぁと思って」
「あっ、そうか。そうだね。あはは」
「水着姿が見たかった?」
「えっ! いやっ、そっ、そんなことはっ!」
「そうなんだ……ゆーくんは私の水着姿に興味がないんだ……しょんぼり」
「ありますっ!」
「えっ?」
私がきょとんとしていると、とってつけたように、ゆーくんが笑い出します。
「あっ、あははは……」
「笑ってごまかすなよ、このやろー」
「すみません……」
「水着姿でなくて悪いけれど、海に行きたいの。いい?」
「もちろんっ!」
二人電車に乗り、海辺の街まで出かけます。駅を出ると、そこはもう潮風の匂い。
寄せては返す、波の音を聞きます。
どこかの誰かが、夜の海は、その波の音は、吸い込まれそうだと言っていましたが、
確かに私にも、そう聞こえます。
今は昼ですが、私には違いありません。
「さゆりさんっ!」
唐突にゆーくんが、叫びました。
「はいっ!?」
びっくりして私は、素っ頓狂な声を上げてしまいます。
「僕と付き合ってくださいっ!」
「ゆーくん、いきなり大きい声出さないでよ、びっくりするじゃない」
「あっ、ごめん」
そのときの私は、勇気を絞り出したであろう彼の告白を、思いっきり遮ってしまいました。
「で、何? どこに付き合えばいいの? またコンサート? 行く行く!」
「……」
「あれ? ゆーくん、なんでしょんぼり?」
「さゆりさんって、僕がしょんぼりしてるとか、機嫌がいいとか、よくわかるよね」
「息遣いでわかるのよ」
「すごいね」
「ゆーくんは、特にわかりやすいから」
「そう」
「それで、どうしてしょんぼり? 海、つまらない?」
「……だったら、今の僕のこと、わかるんじゃない?」
「君の、何を?」
「僕が、さゆりさんを、好きだっていうこと」
幼い少女の頃から夢見てきた瞬間でしたが、多分、そのときの私は、青ざめていました。
立っているのも苦しいぐらい。体から全ての血が抜けたように。
「さゆりさん、僕と、付き合ってほしい」
「……」
「聞いてくれてるのかな?」
「……えぇ」
「返事を、今、聞いてもいいかな?」
「……」
「だめかな?」
「……手の込んだ、冗談?」
「本気だっ!」
震えるような声で、かろうじて発した私の言葉は、はじめて聞くゆーくんの怒声にかき消されました。
「……ふざけないでよ」
「本気だよ」
「……からかってるだけでしょ」
「本気だよ」
その後のことを、私はよく覚えていません。
気がつくと、私はゆーくんに抱き抱えられていました。
二人、びしょ濡れで、ゆーくんは涙を浮かべながら、私の名を叫んでいました。
なんでも、ゆーくんから逃げ出した私は、そのまま海の中に走り出し、
追いついたゆーくんを振り払い、もがき、二人共々半分溺れかけながら、
気を失った私を、ゆーくんが、必死の思いで、引き上げてくれたそうです。
確かに口の中は塩辛かったですが、そんなこと、私がするはずありませんよね?
さゆりさんさゆりさんと、泣きながら私の名を呼ぶゆーくんの声が聞こえます。
安心させたくて、慰めたくて、声のする方に手を伸ばします。
彼の濡れた体に伝わる、温かい液体。
私は、ゆーくんの頬に手を添え、彼の涙をぬぐっているのだとわかります。
考える前に、声が出ていました。
「ゆーくん、泣かないで」
「私のこと、嫌になったら、すぐに言ってね」
冷静になったつもりで、そう言ったら、彼に強く抱きしめられました。
・・・
ドラマチックの代償は、高くつきました。
二人、ずぶ濡れ。このまま電車に乗って帰っては、風邪を引きそうです。恥ずかしいし。
「ゆーくん、どうしよっか?」
立ち上がり、靴を半分脱いで、たまった水を抜きながら、ゆーくんに尋ねます。
「どうって、どうしよう?」
あらあら。さっきは男らしかったのに……。
「このままだと風邪引きそうだし、どこか服を乾かせるところ、ないかしら」
「えっ、えーっと、えーっと」
何ですかね、この間は。あぁ、まわりを見回しているのですか。
「えっ! いっ! いやいやそれはっ!」
ゆーくんが、一人盛り上がっています。なんだ?
「どうしたの?」
「いや、その、向こうに、ほ、ホテルが見えるんだけど」
「あら。ちょうどよかったじゃない。今日は、そこに泊まりましょ?」
「泊まるのっ!? 休憩じゃなくてっ!?」
「休憩? ホテルは泊まるとこでしょ?」
「そ、そそそそ、そうだねっ!」
何故にこの男は、うろたえまくっているのでしょうか。
「日帰りのつもりが、一泊旅行になっちゃったね。さぁ、行こうよ」
「うううう、うん」
「あぁ、なるほど」
私はあることに思い当たります。ははぁ。ゆーくんが慌てていたのは……。
「なななな、なに!?」
「……その、ゆーくん? 部屋は、別々よ?」
「……」
押し黙るゆーくん。ちょっ、そっ、それはないんじゃない?
「だっ、だって、そのっ、物事には順序というものがっ!」
「……さゆりさん」
ゆーくんが、意を決したように、口を開きました。
「なっ! なにっ!?」
「無理なんだ」
「なにがっ!」
「その、部屋、別々ってわけには」
「なんでよっ!」
「ら、ラブホテルだから」
「……」
知識としては聞いたことがあります。
ラブホテル。
それは、恋人同士が、愛を育むところ。
ぶっちゃけ、えっ、エッチなことをしちゃいまくっちゃうところっ!
「……しょうがないわね」
「えっ?」
「せ、背に腹は代えられないわ。いっ、行きましょう」
「……ど、どこへ」
「どこへって、言わせんなよっ! ラブホテルだよっ!」
「さゆりさんて、時々男らしいね」
「うっさいっ! へ、変な期待しないでよっ! 服乾かすだけなんだからっ!」
「もっ、もちろんっ」
「……嘘でしょ」
「そっ、そんなことないっ」
「匂いでわかるのよ」
「うそっ!?」
「まあ、さすがに嘘だけど……まあいいわ。さぁ、いくわよ。体、冷えてきたし」
「そ、そうだね。じゃ、手、握るよ?」
二人、手を取って、ラブホテルに向かいます。
……ゆーくんの体、濡れてるわりに、熱いったら。
・・・
「着いたよ。ここ、ベッド。座るね」
「い、いきなりベッドなの!?」
「だって、この部屋、ベッドと、バスルームぐらいしかない」
「たっ、確かに、それだけあれば、十分だものね」
「そっ、そうだね……」
さあ。私は覚悟を決めないといけません。
実を言うと、ラブホテルでも、普通のホテルでも、私には同じ話だったんです。
「……あのね、ゆーくん」
「はっ、はいっ」
「私、一人でシャワー浴びるのは、ちょっと……むり」
「えっ! あっ! そっ、そうだね……」
「家のお風呂なら、なんとかなるかもだけど、危ないし、普段はお母さんと入ってる」
「そっ、そうだね」
「だからね」
「うっ、うん」
「い、一緒に入ってほしい……」
最後は消え入りそうな声で。
「わわわわっ、わかったっ! そのっ! 決してやましいことはっ!」
「うん……じゃあ……連れてって」
私は、彼に手を引いてもらうため、腕を伸ばします。
「ここから、バスルームだから」
「うん。じゃ、その、ぬ、脱ぐから……」
「うっ、うん」
「あっ! まっ、待って」
「なっ! なにっ!」
「さっ、先にゆーくんが、脱いでほしいなっ!」
「へっ?」
「だ、だって、その方が恥ずかしくない気がするから……」
「そ、そう?」
「ゆ、ゆーくんは、いいでしょ。別に裸になっても、私、見えないんだし」
「ま、まあ、そうなんだけど、見られてないとわかっていても、
さゆりさんの前で裸になるのは、なんだか、恥ずかしいかな」
「私なんかっ、見られているとわかってて、裸になるんだぞっ!」
「そっ、それは、そうだね……」
「わかったら、さっさと脱ぐっ!」
「はっ、はいっ!」
・・・
「どう、脱いだ?」
「うん……脱ぎました」
「じゃ、じゃあ、わ、私も脱ぐから」
「う、うん。そ、そこに椅子があるから、座った方がいい。手、とるよ?」
「うん」
ゆーくんに手を取られ、低い椅子に腰掛けます。
「う、後ろ向いてて」
「う、うん」
「まあ、こっち向いてても、わからないんだけどね」
「ちゃんと後ろ向いてるから!」
「あっ、あはは。ありがと」
「うん」
どのみち、シャワーを浴びるときには、見られることになるのですが……。
私は上着から脱いでいきます。ま、間が持たない……。
「実はね。私、あんまり恥ずかしくないかも」
「ど、どうして?」
「その、“見られる”ってことに、あんまり実感ないんだ」
「そっ、そう」
「恥ずかしい気持ちが、ないわけじゃないのよ。
ただ、“見られる”より“触られる”方が、とっ、とても、恥ずかしい……」
「そっ、そうだね」
穿いていたジーンズを脱ぎ、下着姿になります。思いきって、ブラに手をかけます。
今し方、そう言ったとはいえ、“見られる”という知識はあります。
男の人は、女の子の、裸を“見る”と、こ、興奮するそうです。む、胸とか……。
「ねっ、ねぇ」
「はっ、はいっ?」
「わ、私の胸、どうかな?」
「どっ、どうって?」
「お、大きさ、とか」
「いっ、いいんじゃないかな」
「……こっち見てんじゃんっ!」
「みっ、見てないっ!」
「じゃあなんで、いいとか悪いとか、わかるのよっ!」
「服の上からでも、わかるよっ!」
「いつも、そんなエッチな目で見てたのかよっ!」
「そんなつもりじゃないって!」
「はぁ。い、意味ないわね。どうせ、これ脱いだら、見られちゃうんだから」
「できるだけ見ないようにするよ」
「ううん。ゆーくんは、見ないと危ないんだから、その、ちゃんと、見て」
「うっ、うん」
「もうちょっと待ってね。最後、脱ぐから」
「うん……」
私は裸になりました。
息を吸い、そして、吐きます。
恥ずかしいですが、見られるのがゆーくんなら、我慢できるはずです。
ですが、私は、椅子の上で、膝を抱え込んで、小さく丸まってしまいます。
「こっち、きて」
「うっ、うん」
バスルームの中を、ぺたぺたとした足音が近づいてくるのがわかります。
背中を丸めて、縮こまったまま、私はゆーくんに声をかけます。
「ちゃ、ちゃんと、見てる?」
「……うっ、うん」
「へ、へんじゃないかな……ううんっ! やっぱりいいっ! 聞きたくないっ!」
「とてもっ! とても……きれい……だよ」
「……うん……シャワー……かけてくれないかな」
「あぁ。うん」
蛇口をひねる音。シャワーから水が出る音。
そして、シャワーのお湯が、背中にかけられる感触。温かい。
お風呂の中にいるという実感は、少しだけ、私を安心させます。
「ゆーくん。私、お父さん以外の男の人に、裸見られるの、初めて」
「ぼ、僕も、母以外の女の人の裸、見るの、初めて」
「ゆーくん、女の子と付き合ったこと、ないんだ」
「うっ、うん」
「いっ、一緒だね」
「うん」
「あっ、あの。髪、洗いたいんだけど、洗って……くれる?」
「うっ、うん」
「あっ、頭、あげないと、洗いにくいよね」
「そっ、そうだね」
「ゆっ、ゆーくんのこと、信じてないわけじゃないけど、体、触ってもいい?」
「えっ?」
「その、ゆーくんも、はっ、裸か、確かめたい……」
「あっ、ああ」
背を丸めたまま、恐る恐る、腕を伸ばすと、ゆーくんが私の手を取り、導きます。
手のひらに感じる、男の人の肌。熱いくらいの、ゆーくんの体。
「わ、私、どこ、触ってるのかな?」
「むっ、胸」
「た、平らだね」
「そっ、そりゃ、男だから」
「あっ、これ、乳首だ」
「ひゃっ!」
私がゆーくんの乳首をさわさわしてしまったので、彼の口から、素っ頓狂な声が上がります。
「ゆーくん、疑って、ごめんね」
「いっ、いや」
「二人とも、は、裸だから、は、恥ずかしくないよね。うん」
私は両腕で自分の胸を隠しながら、頭を上げます。
ゆーくんの手が、私の髪に触れます。
シャンプーが泡立てられ、髪の毛が、洗われていくのが、わかります。
「えへへ。頭、洗ってもらうのって、気持ちいいね」
「そっ、そうだね。僕、女の人の頭、洗うの初めてだよ」
「私だって、洗ってもらうの、初めてよ」
「痛かったりしてない?」
「そんなことないよ。ゆーくん、上手」
「はは、ありがと」
流すね、とゆーくんに言われて、シャワーのお湯が頭にかけられます。
海水でべとべとしていた髪の毛も、すっきりしました。
「ふぅ。さっぱりした。ゆーくん、ありがと」
「どういたしまして」
「そうだ。お礼にゆーくんの背中、流してあげるよ」
「えっ?」
「さ、私の前に座って」
「でっ、でも、さゆりさん、恥ずかしいんじゃ?」
「そりゃ、恥ずかしいけど、もう、見ちゃったんでしょ」
「あっ、うっ、うん……」
「じゃあ、もういいよ。5分見られるのも、10分見られるのも、一緒でしょ?」
「そっ、そうなのかな……」
「ほら、早く座って」
「うん」
「これっ、タオル」
「はい」
「すっ、座った」
「じゃあ、流すねー」
「よっ、よろしく」
渡されたタオルを持ち、前の方に腕を伸ばします。
ゆーくんの背中に辿り着きました。がっしりとした肩。男の子ですね。
さあさあ、背中をごしごししましょう。
「ねぇ、ゆーくん」
「なに?」
「……さっき、好きって言ってくれて、ほんとは、嬉しかった」
「さゆりさん……」
「私なんかでいいのって、聞いたら、ゆーくんは、怒るよね」
「うん。怒る」
「ゆーくん、ゆーくん、ありがと……」
私は、背中に抱きついていました。
なにも映すことのない、私の瞳から、涙だけが、あふれていきます。
額をこすりつけるようにして、ゆーくんの背中で泣きました。
「……ぐすっ。え、えへへ。ごめん、まだ途中だったね」
「そっち、向くから」
「へっ?」
ゆーくんの方から物音がして、私は慌てて、胸を腕で隠します。
「さゆりさん、好きだ」
「えっ、ちょっ、ゆっ、ゆーくん?」
「キス、するから」
ゆーくんには、私の体に触れるときは、事前に言ってからにしてほしいと、頼んであります。
いきなりだと、びっくりするので。
こんなときまで、ご丁寧に……。
私は覚悟を決めます。
「……はい」
肯定の言葉が終わると、私の唇に、熱いものが触れます。ゆーくんの唇が、重ねられます。
私達は、キスを、しています。
長くて短い時間が過ぎて、唇が離れます。
「さゆりさん、抱きしめるよ」
裸の私が、裸のゆーくんに、抱きしめられます。
腕に、肩に、背中に、胸に、ゆーくんを感じます。
私は、
「ゆーくん、ゆーくん、大好きだよ」
好きで好きで好きで好きで、好きで好きで好きで好きです。
頭が回らないくらい、涙が出るくらい、熱にうなされたように、ゆーくんが好きです。
「ゆーくんの体に、触っていい? ゆーくんのこと、全部知りたい」
「うん。僕も、さゆりさんの体に、触りたい」
「えへへ。じゃあ、さわりっこ、しよっか」
「うん」
私は右手を伸ばします。ゆーくんがそれを握ってくれます。
「まずは、頭から」
私が言うと、ゆーくんの左手が、私の手を、ゆーくんの頭に導きます。私はゆーくんの髪に触れます。
同時に、ゆーくんの右手が、私の髪を、優しく撫でます。
「ゆーくんの髪、長くないね」
「男だしね」
「太くて、堅い」
「えっ、あぁ。髪の毛ね。さゆりさんの髪は、長くて柔らかくて、きれいだよ」
「ありがと」
髪を褒められました。いい気持ちです。私は手を動かしていきます。
「これは耳だね」
「さゆりさん、くすぐったいよ」
ゆーくんの手が、同じように私の耳をくすぐります。
「くっ、くすぐったいっ!」
私がゆーくんの耳を触っている間は、ゆーくんも私の耳をくすぐるのを、止めてくれそうにありません。
しかたがないので、私は手を這わせていきます。
「ここは、ほっぺた?」
「うん」
「少しざらざらするのは、髭かな?」
「うん、剃ったの朝だから、少し伸びてきた。さゆりさんのほっぺは、柔らかいね」
「髭生えないしね。あっ、これは鼻だ。けっこう高いね」
「さゆりさんの鼻は小さいね」
「そして、ここが、唇」
「うん」
二人、先程重ねた、お互いの唇を、指先でなぞります。
とてもとても、ドキドキします。
「あご、くび。ゆーくんの首は、太いね」
「さゆりさんの首は、細くて、その、女の子らしい」
「うふふ。あぁ。ここは胸だね。さっきも触った」
同じように動いてきた、ゆーくんの手が、ぴたりと止まります。
「いいよ。触って。触ってほしいな」
ゆーくんの手が、私の胸に優しく触れます。包むように、添えられます。
「あんっ」
こらえきれずに、私は小さな吐息を漏らしてしまいます。
「わ、私の胸って、どうなのかな?」
「とっ、とても、気持ちいいよ。温かくて、柔らかくて、大きくて」
「男の人は、女の子の胸に触ると嬉しいんだよね」
「うっ、うん」
「ゆーくん、嬉しい?」
「うんっ」
少し興奮気味の声。やった。やった。ゆーくんは、私の胸が、嬉しいんだ。
「もっと、触って」
ゆーくんの手のひらが動き、もにゅもにゅと私の胸を揉んでいきます。
「ゆっ、ゆーくん、なんだかエッチだよ?」
「えっ、あっ、あぁ。ごっ、ごめん」
「ううん。いいの。嬉しいから。でも、次にいっていい?」
「うっ、うん」
私は腕を、降ろしていきます。
「ゆーくんのお腹。ゆーくんの体は、どこも硬いね」
「さゆりさんの体は、どこも柔らかいね」
「って、何これ?」
「わっ!」
下腹部まで手を下ろすと、ゆーくんの体から、不自然に飛び出ているものに、ぶつかりました。
棒のようなもので、握れます。握ると、堅くて熱いです。
棒で握ると堅くて熱い。はっ!
「あっ、あっ、そのっ、ごっ、ごめんなさいっ!」
慌てて、その、おっ、おちんちんから……手を、離します。
「あっ、あのねっ、ち、知識としては、知ってるんだけどねっ!」
「いっ、いいんだけどね」
「こっ、こんなに、大きいものだったんだっ!」
「いや、その」
「でっ、でもっ、普段って、こんなに大きかった? ぶつかったことないよ?」
「いっ、今は、大きくなってるから……」
そっ、そうでした。それも、知識としては知っていました。
男の人は、その、エッチな気分のとき、お、おちんちんが、大きくなるんでした。
「その、お、おちんちん、もっと、触って、いい?」
「へっ?」
「ゆーくんの体、全部、知りたいから。はしたない?」
「そっ、そんなことない」
「わっ、私のあそこも、知って、いいから」
「うっ、うん」
再び、先程と同じ位置に、手を伸ばします。ありました。ゆーくんのおちんちん。
今まで触ったゆーくんの体の中で、一番熱いところ。
手を添えてから、優しく握ります。形と大きさ、熱さを、感じていきます。
いつでも、いつまでも、思い出せるよう、念入りに。
私の太ももの内側に、ゆーくんの手が、当たりました。
その指先は、震えながら、少しずつ、内側へ進んできます。
私がおちんちんを撫でさすっている間に、指は、私の体の奥へ奥へと、入っていきます。
「あんっ!」
こっ、声が出てしまいました。思わず、おちんちんを強く握ってしまいます。
「くっ!」
ゆーくんからも、声が上がります。
「ごっ、ごめんなさい、痛かった?」
「だっ、大丈夫。さゆりさんは、平気?」
「うん。その、ゆーくんに触られていると、なんだか、ぽーっとする」
「そうなんだ」
「ぽーっとするのに、声が出ちゃう。ぴくんってなる」
「うん」
「ほんというと、気持ちよくって、えっ、エッチな気分に、なる。
ゆーくんは? おちんちん、触られるのって、どんな感じ?」
「えっと、おんなじ。気持ちよくって、興奮する」
「えっ? そうなんだ? えへへ、一緒だね」
「うん。一緒」
「どうされるのが、いちばん気持ちいい?」
「その、上下にこすられたり、とか」
「こうかな?」
ゆーくんのおちんちんを、こすこすとこすってみます。
「さっ、さゆりさんっ、だめっ!」
「あっ、痛かった?」
「ううん。その、出ちゃう」
「出るって、何が? あっ……そっ、そうね。で、出ちゃうんだよね」
「あのねっ、さゆりさん。こっ、こすってもらうのも気持ちいいんだけど……」
「わっ、私の、中で、だっ、出すんだよね?」
「そう、したい」
「あの、ゆーくん。出すのって、一度に一回きり?」
「へっ、いや、何度かは、出せると思うけど」
「にっ、二回、出せる?」
「う、うん」
「一回目は、私の手に、出してもらっていいかな?」
「へっ?」
「さっ、触ってみたいから」
「あんまり気持ちのいいものじゃ、ないと思うけど」
「我慢するし、ゆーくんの体から出るものなら、好きになれると、思う。うん」
「そっ、そう?」
「出してくれる?」
「うっ、うん」
「どうすればいい? さっきみたいに、こすればいい?」
「うん。あと、さゆりさんの体に、触っていたい」
「好きなだけ、好きなところ、触っていいよ」
「さゆりさんの、胸とか、キスしていい?」
「好きなだけ、好きなように、キスして」
ゆーくんの体が、私にぴったりとくっついてくるのが、わかります。
ゆーくんの手が、私の手を、ゆーくんのおちんちんに、導きます。
私は、ゆーくんのおちんちんを、しごきます。
こすこすこすこす、こすります。
ゆーくんは、私の胸を触ります。わたしの胸にキスをします。
私の乳首に吸い付いて、私のあそこに手を這わせます。
くちゅくちゅと音が聞こえます。
どこからだろう。私のあそこからだ。
掻き回すゆーくんの指に、とろりとしたものが、からみつくのが、わかります。
私の体は、準備ができつつあるようです。今、握っているものを、入れる準備が。
そう思うと、自然、握る手に力が入ってしまいます。
「さっ、さゆりさん、もう、でそうっ」
ゆーくんの切なげな声が聞こえます。私は、激しく手を動かします。
「うっ!」
うめき声と同時に、私の体に熱いものが浴びせかけられました。
熱い熱いものが、次々と体中にかかっていきます。
あぁ、これが、精液なんだ。ゆーくんは、私の手で、射精したんだ。
「はぁっ、はぁっ……ごっ、ごめん。体に、かけちゃった」
「へぇー。これがゆーくんの精液なんだ」
自分の体にかけられた、ゆーくんの精液を、指でなぞります。
「熱くて、ぬるぬるしてて、なんだか変な匂い」
「ごっ、ごめん、臭くて」
「いいの。出してっていったの、私だし」
「うぅ。味は、微妙?」
「なっ、舐めないでよっ!」
「えへへ。味も知っておこうかなと思って。うん、よくわかった」
「普通は舐めないから」
そんなことを言っておきながら、今のゆーくんは、フェラチオ大好きなんですけどね。
そのときの私は、そんなこともつゆ知らず。
「だって、ゆーくんの精液、ちゃんと知っておきたかったし」
「そっ、そう」
「これが、私の中に、出されちゃうんだねぇ」
指についた、ねばねばした精液をこすります。
「いや?」
「ううん。嫌じゃない。嫌じゃないけど、今日は、その、避妊、して」
「あっ。うん。もちろんだよ」
「その、赤ちゃんできたりしても、育てる自信、ないし。幸せにする自信、ないし」
「……今は、今はまだだけど、いつか、二人に自信ができたら、考えて、ほしい」
「それって、その……プロポーズ?」
「えっ? はっ! いっ、いやっ、その、違うけど、違わないけど……」
「どっちだよ」
「ぷ、プロポーズです……」
「……もっとかっこいいのがよかった」
「ごめん……」
「あはは……えへへ……ぐすっ……あんまり、私ばかり泣かせないで」
「ごめん……」
「本当に、後悔しないの?」
「そんなことない」
「自信、もてるようになると、思う?」
「一人なら、無理でも、二人なら」
「……上手いこと、言うね」
「本心だよ」
「そう。じゃあ、ゆーくん、二人で、一つに、なろう?」
「……さゆりさん、ベッドまで、連れて行くから」
ゆーくんに手を取られ、私は立ち上がります。
裸のままの二人、歩いていきます。
優しく、体を倒されます。そこは、ベッドの上でした。
抱きしめられ、抱きしめます。濡れた体のまま、シーツを濡らして。
ゆーくんの指先が、唇が、私の体の至る所を、撫でていきます。
唇も、頬も、首筋も胸もお腹も太ももも、私の体の奥にあるところも。
私は、体中を舐められています。
くすぐったくて、気持ちよくって、とろとろと溶けてしまいそうです。
聞こえるのは、自分でも驚くほどの、甘い甘い喘ぎ声。
猫が鳴くように、はしたなく嬌声を上げます。
聞こえるのは、ゆーくんの荒い荒い息遣い。
犬がするように、はあはあと口で息をしています。
「さゆりさん、ちゃんと、つけたから。握ってみて」
ゆーくんが、私の手を取ります。べとついた、ゴムのような手触り。
「んっ……そっか、これがコンドームってものなんだ」
「うん。僕の、ちんちんにかぶせてある」
「ごめんね。こんなのしてたら、あんまり気持ちよくないかもだね」
「普通はみんなするから、そんなこと言わないでいいよ」
「そっか、そだね」
「謝るのは僕の方だよ。さゆりさん、これから、痛いことするよ。
ごめん。僕、もう、我慢できそうに、ないんだ」
「ううん。私も、してほしいから」
「さゆりさん……」
「どんなに私が痛がっても、止めないでね」
「う、うん。でも、少しでも痛くならないようにするから……足、開いて」
「うわぁ……自分で、足、開くの?……痛い方がいいかも……」
「何を今さら恥ずかしがってんの。さっ、いい加減観念して」
「うん……」
私は、ゆっくりと、足を開きます。
太ももに、おそらくはゆーくんの顔が当たります。
あそこに、そそらくはゆーくんの唇が当たります。
ぺろぺろと舐められ、伸ばされた舌が、私の、体の中に、入ってきます。
「きゃんっ! あっ! くぅん!」
嬌声を上げながら、私の体は、どこもかしこも、とろとろとぬるぬるになっていきます。
とろとろになった私は、ゆーくんをぬるぬるに、していきます。
「入れるよ」
「……はい」
激痛が、走ります。
熱くて堅くて、堅くて熱いものが、入りきらない、ものが、ねじ込まれて、います。
ゆーくんの、おちんちんが、私の、中に、は、入って……。
「うぐっ!」
私は歯を食いしばります。
痛くて痛くて、でも、これは。これは、ゆーくん。
ゆーくんが入ってくるんです。私はゆーくんを、迎え、入れるんです。
私の体で、ゆーくんを気持ちよくするんです。
私が痛い分だけ、ゆーくんは気持ちいいのなら、私は、痛くて、いい。
「くっ……さゆりさん、痛くない?」
「なっ、泣きそうなほど、痛い」
「むっ、無理しなくても……」
あぁ、もぅ。めっ、面倒くさい子だなぁ……。
「今からっ! しおらしいことを言うからっ!」
「さっ、さゆりさん?」
「私、ゆーくんのおちんちん入れられて、とっても嬉しい。ゆーくんは、気持ちいい?」
「うっ、うん。熱くて、キツくて、とっても、気持ちいい」
「どんどん、私で、気持ちよくなって。私のあそこで、おちんちん、思いっきり、こすって」
「さゆりさん……ありがとう」
「うぐっ……ははは、まいったかこのやろー」
ゆーくんが揺れます。ゆーくんのおちんちんが、ゆっくりと前後します。
私の体の中を、こすっていきます。
気が触れてしまいそうな痛みと、気のせいにしか思えないような快感。
今、私は、セックスをしています。
いっぱいいっぱいです。痛くて泣きたいです。涙が出るほど、幸せです。
「くっ、ゆーくんっ……」
「さゆりさんっ! さゆりさんっ!」
ゆーくんの動きが激しくなるにつれ、私は支離滅裂になっていきます。
「ゆーくんの、ばかぁ……」
「なっ、なんでっ!」
「ゆーくんっ、好きだよぅ……」
「くっ、さゆりさんっ!」
「ひっく、痛いよう……」
「さゆりさんっ、さゆりさんっ、愛してるっ!」
「ゆーくんの、エッチぃ……」
「さゆりさんっ! ぼ、僕っ、もうっ!」
「ゆーくんっ……まだまだ……がんばれ……」
「さゆりさんっ!!」
ひときわ大きく叫んだゆーくんの動きが、ぴたりと止まり、
私の中のおちんちんだけが、ぶるぶると震えています。
息を切らせたゆーくんが、ゆるやかに、私に抱きついてきました。
「はっ、はぁ……」
「さっ、さゆりさん、大丈夫だった?」
「……っ、はぁー」
「大丈夫?」
「へっ? あっ、あーうん。なんとか」
「ごめん。無茶しちゃって」
「まあ、貴重な体験だったよ……この痛みが、いずれ病み付きになるんだろうねぇ」
「いや、そういのとは、違うんじゃないかな」
「そうなの? まあ、それはそうと、ゆーくんは、気持ちよかった?」
「うん、とっても気持ちよかった」
「そっかー。うんうん、じゃあ、よかった」
「さゆりさん……」
ゆーくんは私の頭を撫でながら、体を私の上からずらし、横に寝そべります。
小さくなったおちんちんは、するりと抜けてしまいました。
あれだけ私を苦しめた、憎いあんちくしょうですが、いなくなると、なんだか寂しい。
私はぴったりと、ゆーくんに体を寄せます。
・・・
それから二人、うとうととしてしまいました。
気がついたときには、二人、裸のまま。濡れた服はバスルームに脱ぎ散らかしたまま。
テレビからは、夜のニュースが流れています。
ゆーくんに、服を洗って、乾かしてもらいます。
二人とも、手洗いでも目立たないような、ラフな格好で助かりました。
とはいえ、乾くまでには、時間がかかります。
予定通り、泊まっていくことにします。
シーツにくるまっていると、洗濯のすんだゆーくんが戻ってきます。
「明日には、乾くと思うから」
「私の下着、じっくり見た?」
「いや、見てない見てない」
「ふーん、いいけどね」
「目の前に裸のさゆりさんがいるんだから、別に下着だけ見なくてもいいし」
「えっ? み、見えてる?」
「シーツにくるまってるけど、あちこち見えてるよ」
「もうっ!」
ぎゅっと、シーツを体に引き寄せます。
「あはは。丸っこくなってるさゆりさんは、可愛いねぇ」
「何? なんなの? やっちゃうと、男は豹変っ!?」
「そりゃないよ……」
「だってさっきから、ゆーくんちょっと、いじわるよ?」
「そんなことないよ。さゆりさんのことが、大好きだよ」
「そして、歯切れがいい」
「そんなに悪かった?」
「ちょっとね。かなりね」
「さゆりさんのが、うつった」
「……ちょっと、こっちこい」
「なに?」
「だから不公平でしょっ! ゆーくんが私の裸を見た分、私もゆーくんの裸に触るのっ!」
「あはは。また、エッチな気分になっちゃうよ」
「もうおちんちん、大きくしてるじゃない」
「なんでわかったの?」
「口調と息遣い、そして匂いで」
「……頬に触るよ」
にやりと笑う私の頬を、彼が優しく撫でます。
私は彼にしなだれかかり、彼の体を撫で回します。
私は少し、困った体になってしまいました。
彼に触っていないと、不安で落ち着かない、困った女になってしまいました。
「そんなに、ちんちんばっかり触らないでよ」
「はぁ。なんか、安心する?」
「ちょっ、そんな、頬ずりしないで」
「ねえ、ちゅーしていい?」
「どこにっ?!」
私は愛しいものを、ちゅーと吸い、ぺろりと舐めました。
この後、私が一晩中おちんちんを触っていたので、翌日のゆーくんの声は、少しやつれていました。
・・・
「できたっ! 盲目の美少女の、愛と感動の物語っ!」
「さゆりさん……これじゃ官能小説だよ……」
「そんなことないよ。昨日ゆーくんとしたことなら、官能的だと思うけどね?」
「あっ、ははは……」
というわけで、今から二人、昨日の続きをしようと思います。