昔、族やってた 1/2
2018/11/12
俺今は普通のオッサンなんだけどさ、昔は恥ずかしいけどいわゆるゾッキーだったのね。
いわゆる暴走族ね。
今は本当に普通のオッサンだよ。
交通ルールも守るし煙草も止めた。
こないだなんてチーズバーガー頼んだのに、チーズ入って無かったけどクレームもいれなかったしな。
まぁ丸くなったっていうか元々ヘタレがいきがってただけなんだが。
んで10代の時入ってたチームでの慣わしに、自分の彼女を先輩っつうか幹部の飲み会にお酌させる為、参加させるって制度があったんだ。
年貢とか上納させるって言ってたな。
軽いセクハラくらいはあるんだろうって思ってたけどな。
まぁ断るなんて出来ないしケツ触られるくらいなら仕方ねーか、って同じ境遇のタメのダチなんかと一緒に部屋でヤキモキして、飲み会が終わるの待ってたな、ってか元DQNの話なんて需要無いかどの程度詳しく書いてった方が良いのかわからんけど、まずは俺と彼女の馴れ初めから。
出会いは中一の時。
一緒のクラスになったから、その頃は別に俺もヤンキーやってたわけじゃないし、彼女も別に普通の女の子だった。
むしろ垢抜けない地味な女の子ってのがそん時の印象。
まぁ当時は髪染めてたらエイリアンのような扱いだったからな。
言動なんかも温和で引っ込み事案な女の子だった。
地味といってもいいだろう。
ただし今思うと俺の目に狂いはなかった。
化粧を憶えると一気に化けたのは後の話。
中一の夏休みが終わるころにはいつの間にか好きになってた。
でそのころから徐々に仲良くなってったんだ。
当時は携帯なんてなかったから大変だったよ。
告白したの中一の終業式。
返事は保留だったが春休み中に手紙っつうか、そのころ文通やってたからその流れでOKの返事貰った。
まぁそのころは普通のニキビ面の男子中学生だったからな。
色気づいたガキどもの間では文通とか交換日記は珍しくもなんともなかったんだ。
まぁそっから彼女(恵美と名づけよう)との交際が始まった。
清い交際だった。
お互い部活もやってたからデートはせいぜい一緒に下校する程度。
それもばれたら冷やかされるから中々出来なかったしな。
ようやく手を繋いだのが付き合い始めて半年後くらいだったかな。
ベタなんだが中三になってすぐくらいに親が離婚した。
それで少し荒れた。
部活も辞めてガラの悪い連中と付き合うようになってった。
煙草も吸い始めたいきがり始めた俺は、恵美との初キスをヤケクソ気味に奪った。
ムードもへったくれもない粗雑なキスだったな。
勿論二人ともファーストキスだった。
あいつは俺の状況知ってたからそういう振る舞いも、笑って受け入れてくれてたんだ。
煙草だけはずっと抵抗されたけどな。
それから恵美とは一緒の高校に入った。
俺は馬鹿だったけど、まぁ奇跡が起こったんだろう。
進学校とまではいえないまでも、そこそこの学校に入れた。
恵美はもっと良い学校に入れたんだが俺に合わせてくれた。
中学の教師にも説得されつづけていたらしい。
俺と別れることも。
でも恵美は「一緒の学校行きたい」と頑なに言ってくれた。
高校に入ると部活にも入らなかった俺にとある友人が出来た。
そいつは健二といった。
もちろん仮名。
いかにもシンナーやってる顔つきにひょろひょろの縦に細長いやつだった。
ただ気は良い奴でカツアゲとか万引きには手を出さないところで気が合い、何となくそいつとつるむ内に健二の先輩を紹介された。
豚と骸骨二人とも年は2つ上で学校は辞めて少人数だがチームを作っていた。
チーム名は烈怒仏琉(レッドブル)。
どちらも先輩風吹かす嫌な奴らだったが、族に興味があった当時の俺は健二に誘われると、ほいほいと飲み会なんかについて行ってた。
恵美はそんな俺を諌めながらも模範的な学生生活を送っていた。
授業は真面目に受けて部活で汗を流す。
友人も真面目な人間ばかりで、そこでもやっぱり俺と別れることを薦められていたらしい。
もうその頃には俺は学校でも完全に脱落者コースに入っていたが、それでも恵美は以前と変わらず俺と向き合ってくれてた。
留年もせずに卒業できたのは恵美のおかげ以外の何者でもない。
高2の夏休みに恵美と初めて結ばれた。
場所は俺の部屋。
思ってたより結構血が出たからびびった。
あと最後まで上手く出来なかった。
それでも恵美は嬉しそうに微笑んでたけど、3回目でやっとちゃんと出来るようになった。
そっからは猿だった。
恵美も少しだけど甲高い声を出すようになった。
今思うと優等生女子校生が半端なヤンキーに、放課後のトイレや教室で立ちバックでやられてる姿ってすごい興奮すんな。
でもフェラは恥ずかしくて頼めなかった。
いきがっちゃいたけど恵美の前ではただのガキだった。
豚と骸骨のチームに入ったのは高2の冬だった。
恵美は最後まで反対してたけど俺は興味は捨て切れなった。
入ったあとは体の良い使いっぱで大変だったけど楽しかったよ。
ただ単車が無いのがコンプレックスだった。
バイトはしてたけど基本的に貧乏だったし、集会の時とかはいつも健二のケツに乗ってた。
それを見かねた豚が新しいのに乗り換えるのを契機に、俺にお下がりを格安で譲ってくれた。
その見返りに恵美に幹部だけの飲み会でお酌させろと要求してきたんだ。
健二が言うにはそういうシステムが昔からあるらしい。
今回の俺と豚との貸し借りのような関係無しに、下のもんは彼女いるなら幹部の飲み会にコンパニオンガールとして差し出さなきゃいけないって。
ただ恵美はあくまでそういうのとは無関係な真面目な女学生だったもんだから、豚達も流石に気が引けるというか遠慮してたらしいんだ。
ただ俺は恵美を何度か集会に連れてった事があって(当然恵美は毎回げんなりしてたが俺は俺で良いとこを見せたかった。勿論今思うと馬鹿すぎて死にたい)そん時に結構気に入られてたらしい。
特に豚は他の幹部にやたらと俺に恵美を差し出すよう画策を練ってたって話を後から聞いた。
まぁただお酌させるくらいなら良いか、ってなふうには俺は思わんかった。
ありふれた馬鹿なガキの妄想だけど、当時の俺は恵美と結婚したいと本気で考えていた。
何度か口にしたこともある。
勿論照れくさすぎて逆切れするようにだけど。
そんな俺とは対照的に恵美は何てこと無いふうに、「良いよ」と微笑んでくれてた。
そのころ初めて生でHしたのも憶えてる。
H中に将来結婚したいだのなんだの言ってたら、恵美から「ゴム外しても良いよ?」って言ってくれた。
勢いで中出ししちまったけど、その後は猛烈な罪悪感に悩まされた。
より一層コイツを一生守ろうと思ったね。
そういう事もあって俺はお酌の件は断ろうと思った。
単車なんてそのうちどうにかなるだろうし。
ただ恵美は中学の頃から俺がずっと雑誌を見たり、単車への思いを熱く語っているところを知っていたから自分から提案してきた。
「それくらいなら良いよ」って。
ただ恵美からもいくつか条件を出してきたんだ。
・メットは絶対被ること・免許は後できちんと取りにいくこと・二十歳まで煙草を止めることぶっちゃけ免許はともかく他の二つは守れる自信無かったが、ただ恵美は普段から自分の要望を話さない奴だった。
誕生日のプレゼントもUFOキャッチャーで取った。
ヌイグルミで良いって言ったり。
だからそん時の恵美の気迫にびっくりした。
彼女だからとかじゃなくて、一人の人間としてその覚悟に答えなきゃって思った。
セクハラされるかもしれないのにそうまでして俺の身を案じてくれるその覚悟に応じなきゃって。
だから俺はOKした。
単純に単車が欲しかったって気持ちも無いでもなかった。
でもやはり恵美の誠意に答えたいってのが本音。
それで当日いつも飲み会なんかをやってる溜まり場は、豚達の更に何代もOBが経営してる建築系の会社のほったて小屋の使ってない部屋だった。
その日は健二の彼女も一緒だった。
いきなり一人は何かと不安だろうって骸骨の配慮だった。
まぁ実際恵美は健二の彼女と面識はあったから、俺はその時愚かにも骸骨に心底感謝した。
「じゃ終わったら連絡すっから」と言って幹部達は中に入っていった。
不安そうな顔で俺を振り返ってる恵美の肩に、豚は手を置いて中に促していった光景は今でも覚えてる。
その時点で中止なんて申し出たら間違いなくタコ殴りで、そのうえチームも追放だったろうが、そうした方が良かったと今でも後悔してる。
その間俺と健二は健二の部屋でうだうだ愚痴を言ってた。
なんでこんな事やんなきゃいけないんだって。
健二の彼女は何度か貸し出してるらしい。
恵美との約束も忘れて二人で異常なくらい煙草をふかしてた。
「上納させた時はいつもこんなペースで吸うんだ」って健二も無理矢理笑ってた。
話を聞くと終わった後彼女に聞くと、ケツを触られたとか言ってたらしい。
俺はもし恵美がやられたらと思うと、それだけでも許せなかった。
3時間くらいで連絡用のポケベルが鳴った。
煙草は何カートン吸ったことか。
健二と二人で猛ダッシュでほったて小屋に向かった。
すでに部屋の入り口に恵美はいた。
豚が隣にいてにやにや俺を見ながら、恵美の肩に手を回してた。
恵美はただじっと俯いていたが、健二の彼女は普通っぽい感じだった。
俺は急いで恵美の手を取って自分の方に引き寄せたよ。
それで挨拶もそこそこに速攻恵美を家まで送ってった。
チャリの二人乗りだったんだけどどっちもずっと無言だった。
途中で我慢できなくて、一旦停止して、キスしようとしても何故か無言で顔を背けられた。
生唾飲み込んで意を決して聞いたよ。
「何かされたのか?」って。
恵美は身体をびくっとして無言で首を振ってた。
明らかに様子が変だったから俺はしつこく問いただした。
でも「何も無い」の一点張り。
それから再びチャリを漕ぎ出したら、後ろでぼそっと「ちょっと身体べたべた触られた」って声。
俺はそれでも泣きそうだったけど「そんなん関係ねーし。