有名人官能小説 鈴木あみ
2018/08/30
(どうしてあんなブスがテレビに出れてるのに私は出れないの?…)
「うたばん」を見ながら、つい1年前までトップアイドルだった
少女が、憂鬱な気分になっていた。そう、小室哲哉プロデュースで
鳴り物入りでASAYANからデビュー、立て続きにヒットを飛ばした鈴木あみその人である。
画面上にはASAYANでは負組み扱いだったモーニング娘。が
楽しそうにトークをする場面が映し出されている。
もともと、稚拙な歌唱力とダンス、両親の大手芸能プロからの独立志向で業界から
ほされたうえにジャニーズの滝沢とのスキャンダルまで表沙汰になってしまい
今のあみはまさに傍から見ても本人からしても芸能人としてはすでに終わった
と見られていた。
生来明るいあみが塞ぎがちなのを見かねて、両親も彼女の力になってやりたいと思っていたが、大好きなダンスのレッスンでさえ無断で休むほど状態は悪化していた。
そんなところに、以前親交のあった芸能人のマネージャーから
とある自己啓発セミナーを勧められた。
その自己啓発セミナーの講習を受けたものは、
驚くほどポジティブになり、また、講師はスピリチュアルな力を持ち、
受講者の運気も受講後上昇するという。
最初「金目当ての宗教だろう」と一笑に付した亜美の父親も、
講習を受けたあとに金銭をせびられることは一切なく、受講者には
大手芸能プロから独立した後起死回生のヒットを飛ばした大物芸能人Gや、
最近以前とキャラクターを変え大ブレイクしたSなどがいるときき、
このセミナーについて調べてみることにした。
人づてにSの事務所にといあわせたところ、このセミナーに関して悪く言うものは誰も
おらず特にS本人がセミナーに深く感謝しているとの返答があった。費用も予想しているより
随分安いようだ。ためしにうけさせたらどうだろう。
「あみちゃん、気持ちを明るくする会に行ってみない?」
あみの顔つきはここ数日かわらない。暗く眠ぼけているかのような覇気のない顔だ。
「Sさんも受けてるみたいなの。そこで気持ちを明るくしたら、今みたいに
なったって」
「おかあさん!私そこいってみたい!」
力強く素早い返答だった。芸能人としてまた強く羽ばたきたい。落ち目のSが復活したことに自分を重ね合わせているのだろうか。
母親は改めてあみの芸能への執着に気付かされた。
そうときまれば善は急げ。Sに紹介される形であみはセミナーを受講することになった。
数日後。セミナーはビルの一室で行われること、服装はジャージなど動きやすい服装でくること、受講者は一人で来る
が他の受講生もいること、セミナーは丸まる一日かかることなどが指定されていた。
ジャージって事は動くセラピーなのかな?
あみはそれだったらおもしろそうだなーと考えていた。
ビルに着き、指定された階につきドアを開けると、
「こんにちわー。鈴木さんですね。本日はよろしくー」と
女性がでてきた。黒い髪を後ろでくくり、タンクトップにジャージを履いていてラフな格好だが
なかなか綺麗な人だ。部屋に眼をうつすと、ピータイルの部屋にカラフルな
ビニールマットが数枚置かれている。
あっ、ヨガマット?そういえばこの人ヨガっぽいし、この人が講師なのかな。ちょっとお香くさいしこの部屋。
さらに奥に目をやると、数人の男女がいた。みんなTシャツや、スエット、
スパッツにジャージと大人なのに部活みたいだ。
妙にスタイルのいい男が一人いる。あれは芸能人だろうなー、私と一緒で落ち目なのかな。
ま、私のほうが有名だけどね!などとあみの頭を様々な推測がめぐった。
「鈴木さんも皆さんと待機しててください。まだこられてない方がいますので、
全員揃ってから先生をお呼びします」
あ、この人じゃないんだ先生は。と奥へ亜美もいくと、他のメンバーに異変が起きた。
腐ってもトップアイドル鈴木あみである。男性は緊張したのかあらぬ方向に目が向いたり、
驚いたように凝視したり、女性は品定めするような目でじっとりとにらんできたり、
放心したようになっている。後できくところによると、
あみのことをしらなかったのは40代の女性一人だけだったが、
彼女もあみの顔の小ささやスレンダーさにびっくりして凝視してしまったらしい。
しばらくすると、受講者らしき人物が二人はいってきた。
「これで、全員揃いましたので先生をお呼びしてきます」
先ほどの女性が外に出て行った。受講者は全員で10人で、パッと見20代後半位の
人が一番多く、あまり年が多い人はいないようだ。
しばらくして、「先生」と女性が入ってきた。先生は和やかそうな顔つきの
男性だったが、助手の女性と違いジャージではなく濃紺の作務衣だった。
なんかエセくさっ・・・
「はい、皆さんこんにちは。ぼく下腹でてるからねー、こういうのじゃないと
隠せないのよ。皆さんみたいに若くてスタイル良かったらTシャツでもタンクトップでも
きちゃうんだけどねー」みんな笑った。そういわれれば先生はホッペもふっくらしているし
ちょっとポッチャリ目かもしれない。プーさんに似てる!と亜美は思った。
年齢は自分より上だろうけど、よくわからない。こういう場に
似つかわしい人だ。
「ハイ、今日は一日がかりで皆さんのストレスを解消してもらいたいと思ってます。
まず、リラック・・・あっと、自己紹介忘れてた。ボクはにしはら、でも今日は先生
で通しますね。それからこっちが助手のかがわ。みんなは今日ボクより彼女にお世話になるかもねぇ」
女性が一礼した。
「皆さんも順番に自己紹介お願いします」
先生と最初に、目が合ったのは妙にスタイルのいい男性だった。
「あ・・えーと、よしざわです。えっと、モデルの卵です。西原先生の
とこに伺ったらイイ事があるらしいって事務所の先輩に聞いてきました。えっと、
ケッコー根暗つーか話ベタなとこあるんで、そういうのも改善できたらとか思ってます。
と、とりあえずよろしくお願いします。」
見た目に似合わず、か細い声で暗いというのもなんとなく納得できる感じだった。
ほんとに芸能人の間で有名なセミナーなんだ。あみは少し安心した。
「はーい、よしざわ君。今の理想的な自己紹介だったよ。全然口下手じゃない
じゃない。みんなよしざわ君、よろしくー!」
次々と自己紹介がすすんでいく、さすがにこういったセミナーだけあって
口下手でどもったりする人も数人いたが、先生はやさしくユーモラスに
コメントしている。いな、褒めている。どうやら芸能人はあみと、よしざわだけらしい。
最後にあみの番になった。人前で喋ることは昔から大好きだった。
「鈴木亜美です。皆さんも知ってるかと思いますが、歌手です。最近
落ちこみがちなんですけど、そういう自分を元気にするためにここにきました!
皆さんよろしくっ!」
「はい、こんにちわ、鈴木さん。あみーごの歌、ボクも大好きよ!
でもかわいいからってえこひいきしないからね。今日は皆と楽しくやってきましょう」
「まず、皆さんにリラックスしていただくためにうちの特製のお茶を飲んでもらいます。
そのあと、ストレッチ!パワーヨガをしてもらいます。かがわさんは、
向こうでも認められたインストラクターですからね。もうこれだけでも元は取れますよ」
かがわさんが、みんなに湯飲みをくばっている。ヨガなのに和風?
まぁ先生の服装も和風だし…とあみは勝手に納得した。
先に配られていた女性が歓声をあげた。「何これすごい・・・」
「ちょーかわいぃ!」
あみにも湯のみが手渡された。湯飲み自体は普通の素焼きの湯のみだ。
かわいらしい柄だが、別にありふれている。すごいのはお茶だった。
蓮の花?が一輪まるごと入っている。膨らんだ花が蓋をするかのように
底が見えない。多分日本茶じゃあないだろうと言うぐらいしかわからない。
他にも種類の違う小さな花が二つ三つ浮かんでいる。
「全員に行き渡りましたので、できたらゆっくり飲んでくださいねー。
お花は害はないけど食べなくていいですからねぇ」
飲むとレモンティーのようで甘いが、時折ぬるぬるっとしたゼリーのような感触もある。
花の成分だろうか。
飲み終えるとヨガの時間になった。マットをしいたうえに、
背中を伸ばしたりしてバランスを取る。かがわさんが後ろから
みんなの姿勢を修正したり、ほめたりしている。
魚のポーズ、鳥のポーズ、蛇のポーズ。一時間ほどでおわったが
激しい運動でもないのに疲れてきた。
「そう、下手な人が教えると慣れてない人はつったりすることもあるんです。
結構キツイ運動なんですよ。その分脂肪も燃えますから、ダイエットにもなります」
あみはダンスを習っていたためかそこまできつくはなかったが、
社会人の男性は香川さんの言葉にギョッとしていた。彼は体が硬いのか、いくつかの
ポーズでダメだしされていたのだ。女性たちは、ダイエットと言うところで
表情を明るくしている。
「では、次は睡眠です。皆さんにお昼寝をしてもらいます。寝る前にトイレに
いきたい人はどうぞ。急にかけこむとこみますからね。考えていってください」
数人がトイレに行く。あみはしばらくしてから、年の近い女の子と一緒に行った。
その後、他の人がしているようにマットに横たわると運動したばっかりなのに
眠気が襲ってきた。あれ、れ・・・
気がつくと、他のメンバーもちらほらおきており
マットの上にタオルケットがかけられていた。とてもきもちがいい。
若干ぼんやりしているが、疲れは取れている。
全員が目を覚ますと、先生が告げた
「次は皆さんにとってきついかな。でも終わったあととてもすっきり
しますよ。」