仕組まれた雑誌のモデル

2018/02/11

さらに依頼した僕も僕だ。
当然最後は、もう行くところまで…というのが約束だった。
「モデル料入ったらごちそうしてあげる」って彼女の言葉がちくりと来た。
でもそんなそわそわが落ち着かないまま、撮影の土曜日を迎えた。
もちろんその前の晩は、酒を飲もうが中々酔う事はできずにまったく眠れなかった。
僕は当然、野外撮影には立ち会えなかったけど、夕方からの部は淳ちゃんに知られないよう、合流する予定だった。
見られなかった前半の分は後日丁寧に、撮影写真のデータと、メイキングのビデオテープが送られてきた。
それによると、衣装は高校生の服装でスタート。
紺色の3つボタンのブレザーに赤いネクタイ、今今の流行よりは少し長めのプリーツスカートに、白い靴下。
僕が見たことない淳ちゃんの制服姿。
「えー、私ってそんなに童顔ですか?」ビデオの中の淳ちゃんは、てっきり年齢相応の衣装での撮影と思ってたらしい。
「いやいや、普段着はあれだけかわいいんだし、制服が合うのは当然だよ」と返すカメラマンさん役。
実は本職のカメラマンでもあるらしいけどスムーズだ。
スタイリスト役の愛佳さんも美人で、どうしてこういう所業に絡んでいるのか不思議だった。
ロケは喫茶店のオープンテラスからスタートし、海岸沿いではしゃぐ姿を撮影。
所詮、素人モデルな淳ちゃん。
撮影やシチュエーションに戸惑う度に、「笑顔~笑顔~。そっ、視線は雑誌のむこうの彼氏にね」というのがカメラマンの口癖だった。
そして、いよいよ撮影は後半に。
場所は貸しスタジオの個室の中に移動。
そこは青年男子の一人部屋のセット。
ベッドに机に、学生部屋の最低限の設備。
部屋の中にはカメラマンさんと淳ちゃん、スタイリストの愛佳さん。
そして…ご相伴にと、部屋全体を見渡せるマジックミラーの後ろの僕。
どういうことか、ティッシュペーパーとくずかごのサービス付きだった(笑どうしてこういう仕掛けがあるのかについては、色々と怪しかったけど、正直なところ、もうどうでもいい。先回りして鏡の後ろに隠れてるんだけど、実はもう動悸がおさまんない。淳ちゃんは前半の撮影で使った制服姿のままだった。部屋という閉鎖された空間の中、午前とは違い、少し緊張しているようだった。カメラマンさんの声で、撮影再開。「じゃあ、シーンを変えてみよう。そうそう、可愛いね。次は彼氏の部屋に。彼の家族は…うーん、都合よく一家で旅行中、数日は戻ってこないと言うことにしようか」
「ご都合主義ですよぉ~」と仲がよさそうに笑いながら話す淳ちゃん。
「そんなの適当でいいの。彼の部屋に入って、適当に座って、といわれて、なんとなくそこのベッドに座ってみた。ベッドはふかふかでー、今のセットのこの感触と一緒。ちょっとおしりが沈み込んで、うっかりバランスを崩したって姿勢できる?そうそう、腰の方にバランスを。あー、いいねー」カメラマンは姿勢をてきぱきと指示する。
「で、ふっと気がつくんだ。無防備だなーって、あはは、わかる?そうそう、今なにげに顔が赤くなってるけど、その表情いただくね」言われるとさらに淳ちゃん、自覚したように表情に朱が差す。
身じろぎして、足をぎゅっと閉じる。
「じゃ、もっと想像してみよう。ベッドに彼氏と隣り合って座るんだ。お互い何を話していいか判らない微妙な雰囲気。少し恥ずかしい、けど何かされそうな予感は少しある。キスかな、ハグかな…?ちょっと俯き気になって、上目遣いで彼を見てる、そういうふうな」彼女は言われたとおりに、赤らめた頬を上目遣いに。
目が少し潤んでる。
とても可愛かった。
僕もこんな彼女は見たこと…正直には、ある。
それは喧嘩した後。
淳ちゃんはいつも目を真っ赤にして怒って、そして謝る。
実は僕が謝る回数の方が多かったけど。
そんな負い目の多さから生じた、意味のない劣等感も、今回のこんな企みのきっかけなのかもしれない…「うわーぐっとくるねー。そうそうその調子。もう撮影だと判ってても誘われちゃいそうだね。じゃあ、ちょっと唇をなめてみてくれる?あー、なんかそのつぶらな視線、いいなぁ」カメラマンはその後しばらく数枚、彼女の顔をアップに撮影してから、「おし、グラビアの読者さんにサービスと言うことで。ちょっとだけ肌見せてみよっかー。可愛いんだしそんなにエッチに撮らないから安心して。彼が両手を頬に添えてくるんだ。そうそうキスのちょっと前みたいに。うわ、可愛いねー。その顔いただき!」愛佳さんが淳ちゃんの正面に立って手を振る。
笑顔の淳ちゃんの視線を引き受け、カメラマンさんは斜め角度から撮影、最後に正面アップ。
「ちょっとだけスカートの裾を乱してもらえるかな。いやいや下着まではいかないって(笑)少しだけひざとフトモモ気味に引っ張り上げて。
そうそう。
そんな感じ。
足細くて綺麗だねー。
今まで撮影した中でルーズはいてる子はたいていダメなんだけど、靴下もいけてるね。
スタイリストさんの手柄かな?」
「私もルーズは嫌いなんです。なんかごわごわだぶついてて」
「そうなんだ。僕もどっちかというとシンプルなヤツの方が好きかな~。いい趣味だわ。スタイリストさん狙ってます?(笑)」愛佳さんは「こいつどうにかして」と苦笑い。
「ちょっとだけブレザーのボタンを外してみよう。上から1つだけね。」
「あとネクタイも少しだけゆるめて…そうそう。普段は堅苦しくて、真面目そうな制服の中に、だんだん女の子の魅力が見えてくるんだー」淳ちゃんは言われるとおりに、ブレザーの上着のボタンを1つ外す。
といっても、留めるボタンは3つしかないので、自然に胸元は開く形になる。
そしてネクタイを…この衣装のネクタイは、首の後ろのフックで止めるタイプのヤツじゃなくて、スタイリストさんが締めてくれた本物。
これをなんかサラリーマンのように人差し指でくいっと引く。
下のワイシャツの首回りが、少し露わになるのを見て、ごくり、と僕はミラーの裏側で唾を飲んだ。
心臓ばくばく、両手はもう、汗っぽい。
男の部分は正直張りっぱなし。
カメラマンさんは撮影を続ける。
「ええっと、お願いいいかな、ブレザー取ってくれる? 大丈夫かな?そうそう。せっかく可愛いからもうちょっとだけ進みたいんだ。もちろん、嫌だったら言ってね。そこで止めるから」淳ちゃんは少し戸惑ったようだけど、ブレザーをするりと脱ごうとした。
何か気が乗ってきているのか、興奮してるのか、目の潤みがすごい。
そして、ブレザーから片腕を抜こうとしたところで「っと、そこで止めて。袖はそのままで。ブレザーを背中の後ろで羽織ったような感じ。このくらいなら大丈夫?」…っと。
淳ちゃん本人には判らないんだろうけど、端から見てるとこの光景は結構、そうまさに、「誰かに脱がされている途中」。
カメラマンさん本気だなと、さらに思わされる。
「じゃあ、ブレザー取っちゃおうか…大丈夫。可愛いねぇ。も今までのモデルさんと比べて、トップクラスだよ」腕をブレザーの袖から抜くとき、少し淳ちゃんの顔にためらいが走った。
重さと温度が変わったあの感触に、少し自分を取り戻したように見えた。
ベッドの上でへたり込んで、白いワイシャツ姿になる淳ちゃん。
「いいかなネクタイ抜いちゃって、シャツのボタン…ええと、上から2つくらいならいいかな?これが限界かな? そっか…そだよね、昨日今日撮影始めたばっかだもんね。無理だったらいいよ?」
「ま…まだ、大丈夫です」ちょっと迷ったみたいだったけど、シャツのボタンを上から2つはずした。
はだけたシャツの奥に、肌色の胸元が少しだけ見えた。
「ありがとう。ここまで付き合ってもらえるとカメラマン冥利だな。じゃ、もう少しだけ。あとほんの少しスカートを上げようか。あ、下着は見せちゃダメだよ?って当たり前だよね」
「うーん、ワイシャツのボタン、もう1つ外せるかな…?」
「想像してみよう、彼はキスをするんだ。そしてワイシャツのボタンを1つ1つ外して、ビクっとした淳ちゃんを見て、そこで我に返っちゃう。ごめんね、って」
「紳士な…彼…なんですね」
「そうそうそう。で、淳ちゃんにごめん、って謝るんだ。そこでおしまい。実は雑誌的にもそこでぎりぎり。ここから先、本当のモデルさんなら、水着とか別のシーンになるけどね」そして、一息おいてカメラマンさんが切り出す。
「本当はもっと続きを撮りたいんだけどね。心を許してくれた淳ちゃんを」カメラマンさんの視線が、じっと真っ正面から淳ちゃんをとらえる。
「恥ずかしい…けど…」
「それはいいってこと?」
「…」淳ちゃんは断るでもなんでもなく、うつむいてしまった…しばらくの空白。
そしてカメラマンさんは、わざとらしい明るい口調で切り出した。
「じゃ、無理しない程度に続けよっか。下着は見えないようにするね。彼は淳ちゃんがうつむいたのを見て、もう一度キスをして抱きしめる。でもそこからは進もうとしないんだ。彼は大丈夫? ごめんね? といいながら、柔らかく抱いてくれるんだ。体を抱きしめられたのを想像できるかな?」淳ちゃん、少し身じろぎして、そして動かなくなった。
何を思っているのだろうか。
僕じゃない架空の彼に、ベッドの上で上着を脱がされて、そして抱きしめられてキスされて…。
カメラマンさんは心から残念そうに続ける。
「無理だったらストップって言ってね。でも正直言うと、僕は淳ちゃんのすべてを撮影したいなって思った。こんなにのめり込むのは久しぶり。ねぇ、愛佳さん?もちろん、掲載する内容は上着まで。もし撮っても外には出さないから。これはプロとしての約束」愛佳さんは頷く。
勇気の一押しが欲しい、淳ちゃんの視線が向くのを承知の上で。
もちろん合意は出来レースだ。
淳ちゃんを追い込むための舞台の一つ。
「わかりました。でも…本当に下着を少し…までですよ…ね?」
「もちろん! 契約を破っ…

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