僕の幼馴染

2017/11/28

私は17歳の高校2年生です。
高校生と聞けば、皆さんはどの様なことを頭に思いうかべるのでしょうか。
やはり、恋愛や部活や勉強のことを思いうかべるのでしょうか。
とりあえず、卒業した方も、まだ入学していない方も
ほとんどの人たちが楽しいイメージを持っていると思います。
では実際にはどうなのでしょうか
高校生は皆が皆、楽しい生活を送っているのでしょうか
私の周りを見てみたところ
確かにほとんどの者は楽しそうに高校生活を送っています。
皆さんのイメージ通りです。
しかし皆が皆が楽しい生活を送っているかどうかとなると
それは違うと思います。
なぜなら僕がそうだからです。
楽しんでいる者達の裏で
地味にひっそりと学生生活を送っている者達が少なからず存在します。
それはそうです。皆が皆
閉ざされたクラス、学校社会のもとで
平等に過ごせるわけはありません。
見えないながらも確実に階級ができてしまいます。
人気者の1軍
一般的な学生生活を送れる2軍
地味で権力の弱い3軍
というように閉ざされた教室の中では自分の立ち位置が自然にできあがってしまいます。
そしてこの教室での地位が学校全体での地位にもつながります。
では、私は一体何軍なのでしょうか
そうです。もちろん、答えは3軍です。
日々、一軍や二軍の目をうかがいながら
ひっそりと学生生活を送っています。
3軍の者は一歩間違えるといじめられっこに転落してしまいます。
特に1軍に目をつけられると終わってしまいます。
だから、大体面倒くさい役割は
最終的に、僕を含めた少数の3軍に回ってきます。
さらに僕の通っている高校は決して頭の良い学校ではなく
半分が進学、半分が就職といった形の高校で
ヤンキーやチャラ男の類が少なくはありません。
そして、そのヤンキーやチャラ男たちが
1軍を占めているため
権力の弱い自分が逆らえるわけもなく
ほぼ奴隷のような生活を送っています。
おそらく他の進学校などのヤンキー、チャラ男が少ない
学校の3軍に比べてだいぶと辛い日々を過ごしていると思います。
皆さんも感じたことがあると思いますが
中学や高校では、
ヤンキーやチャラ男のような
活発で元気で多少気性の荒い者達に人気がでるのです。
女の子にももてます。
それに比べて私は地味で平凡です。
入学する前から私の3軍は決定していたのかもしれません。
しかし、三軍で辛い日々を送る自分にも
安息の時は存在します。
それは登下校の時間です
僕には小さい頃から思いを寄せている幼馴染がいます。
AKBの横山由依ちゃんに似ていてかわいい女の子です。
ですのでここでは由依と呼ばせてもらいます。
僕はその由依とあろうことか毎日一緒に登下校を共にしています。
何故地味で根暗な僕が好きな女の子と登下校を共にできるのか。
実を言うと由依と私の家は隣同士で、本当に幼いころから
小学校、中学校と仲良くしてきました。
そして、私がこの高校へ進学すると知ると、何故か僕が行くならと
一緒の高校についてきたのです。
由依は自分よりも数段頭が良く、進学校でも上のランクに行く実力をもっています。
それなのに僕についてこの学校にきたのです。
そして、さらに由依から毎日一緒に登下校しようよと誘ってくれて今に至ります。
僕も地味ながらも男です。
そんなことをされたら由依は自分に気があるのではないかと嫌でも思ってしまいます。
僕は正直、きもいと思われるかもしれませんが付き合ってもいないのに将来は由依と結婚したいと思っています。
そんな由依と共に過ごせる時間が本当に僕の癒しなのです。
辛い高校生活を癒してくれる女神です
しかし、そんな由依にも今は告白などできません。
由依は学校全体でみてもかわいい部類に入り
僕と違って明るく社交性も高いため
1軍とは言えないものの友達も多く楽しい生活を送っています
いくら仲がよくても3軍の僕が告白する勇気はありません
それに登下校以外では学校において
僕と由依に接点はなく、
由依が僕に気があるというのは勘違いかも知れないし
とにかく今の僕では由依に告白する自信なんてみじんも生まれませんでした。
また、由依が僕以外の特定の男の子と親密にしている姿もこの一年半で
見たことがなかったので特に早く告白しなければならないという焦りも生まれませんでした。
そして、そんなこんなで毎日、平凡で辛い日々を送っていると、学生最大のイベントが実施される時期がやって来ました。
修学旅行です。
修学旅行といえば学生の皆が楽しみにしているイベントです。
しかし、僕ら3軍にとっては決して良いイベントではありません。
なんせ嫌いな1軍の奴らと3日間も行動を共にしなければならないのですから
しかも行動班がヤンキーやチャラ男と同じになったらもう最悪です。
そして今日はその最悪な班決めの日でした。
うちのクラスはくじ引きで班とホテルの部屋を決めるのですが、
今日の結果で修学旅行の良しあしが決まります。
くじ引きは朝に行い、発表は帰りのホームルームで行われます。
私はそのせいで発表までの数時間まったく授業に集中できませんでした。
そして帰りの発表時、待っていたのは最悪の結果でした。
僕の行動はんはチャラ男2人に少しケバイ女の子2人
ホテル部屋は、チャラ男とヤンキーと僕でした。
本当に最悪でした。
「なんでこいつがこの班にいるんだよ」
「まじでこいつと同じ部屋無理」
とか様々な罵倒が僕に浴びせられました。
そして帰り道、案の定
由依から修学旅行の話題がでました。
僕はその日は精神的に由依の話を真剣に聞く余裕もなく
話の半分も理解しないまま帰宅しました。
そして次の日から修学旅行に関する話し合いが忙しくなり、
どこのクラスも帰りのホームルームを延長する状態になりました。
しかし僕はというと班のみんなからは嫌な目で見られ
半ば強制的に帰らされることになりました。
他のクラスの人々が楽しそうに修学旅行の話題で盛り上がっている中
私はひっそり帰路の廊下をひたひたと歩いていました。
すると由依の楽しそうな笑い声が唐突に耳に流れてきました。
私が思わずその方向に目を向けると
そこには僕の知らないイケメンと楽しそうに話す由依がいました。
本当に爽やかで顔の良い男でした。
私がむなしく仲間はずれにされている中、由依は楽しそうにしています。
別にいつもなら特別何も思わないのでしょうが、
先ほどのこともありその日の私の精神は大変なことになりました。
そして数日たった修学旅行も間近となった日
いつものように机の上で寝たふりをしている僕の耳にある会話が聞こえてきました
「健二、次は由依ちゃんって子狙ってるみたいだな」
「ほんとあいつ、とっかえひっかえだよな」
「そのために班決めも細工したみたいだぜ」
「修学旅行でモノにするだってよ。あのヤリチン」
僕はゾッとしました。
由依っていうのは僕の知っている由依なのか
もしそうならば由依を狙っているイケメンは、
もしかしてこの前由依と楽しそうにしゃべっていたイケメンか
私はさりげなくいつもの帰り道で由依に
修学旅行のことについて多くのことを聞きだしました。
するとやはり時たま健二という名前が会話の中にでてきていました。
健二は由依の中ではおもしろい友達だそうです。
僕は由依が本当に危ない状態にあるのではないかと改めて認識しましたが
結局、何もできずに修学旅行の日が来てしまいました。
修学旅行は京都です。
いざ修学旅行が始まると、僕は班の奴らと行動を共にするのに必死で
由依のことなどすっかり忘れていました。
そして、ある神社についたところで、班の奴らがいきなり妙なことを言い出しました。
「もうすぐだな。おまえら隠れろ。」
僕が何のことかわからずボケっとしてると
顔にパンチを一発入れられ強制的に木の裏にしゃがまされました。
数分すると、なんとそこに由依と健二がやってきました。
会話を聞いていると
「みんなどこいったんだろ」
「迷子になっちゃったね。携帯もつながらないし」
「とりあえずここで一休みしよっか」
と小さいながらも微かに声が聞こえてきました。
二人は迷子になったのでしょう。
おそらく意図的に
そして私はこの状況はやばいと把握したと同時に
由依と健二の前に
3人ほどのチンピラが突然現れました。
一瞬、健二の友達なのかなと思い出しましたが。
チンピラは健二に喧嘩を売ると同時に由依を連れて行こうとしました。
すると
一瞬のうちに健二はチンピラに殴り掛かり、モノの数分でチンピラたちをボコボコにしました。
それを見て僕の班の奴らはニヤニヤしています。
そうです。やらせです。漫画のようなやらせです。
漫画ではバカらしくて笑ってしまうやらせですが。
今日見てわかりました、実際にこういう場面にでくわすと、緊迫感があり笑えません。
由依も泣きそうな表情をしていました。
そしてやらせのチンピラを撃退した健二は
泣きそうになっている由依をそっと引き寄せ抱きしめました。
由依は拒みませんでした。
そして由依と健二の目がすぐに合いました。
お互いにじっと見つめあった状態です。
私は本当にやばいと思いました。
本来ならすぐにでも出て行かなければなりません。
しかし、身体が動いてくれません。
脳だけが錯乱した状態です。
本当に僕の臆病さを恨みます
そしてそうこうしているうちに
あろうことか数秒後、健二と由依の唇が僕の目の前で重なっていました。
そして
「やっぱり健二はすげぇわ」
という班の奴らの声が僕の耳を虚しく通り…

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