僕の彼女のヒロミ

2017/10/13

バイト先での話。
俺=ユウジは、なんでか知らんが女子受けがよく、その新しいバイト先でも直接声をかけられはしないものの、女の子達の間に「ユウジ君いいよね」という声があるのは聞こえていた。
彼女=ヒロミもそのうちのひとりで、同期のバイトの子といろいろ俺のことを品定めしていたらしい。
経過は省くけど、結局、俺とヒロミは付き合うことになった。
しかしそのバイト先では未だバイト同士で付き合うケースがなかったらしく、ウルサイ社員がいたことからも、俺らは付き合っていることを内緒にした。
そんな状況の中、社員を巻き込んだ大々的な飲み会が催された。
1次会でたらふく飲んだ俺らは、特に人員落ちすることもなく、そのまま2次会のカラオケボックスに突入。
やんやの大騒ぎ。
大勢で狭いボックスにひしめき合うもんだから、ソファは満杯。
ヒロミはその日、ミニスカートを履いていた。
女の子を優先的にソファに座らせて、男は床に座り込んでマイクの奪い合い。
すると、友人のひとりが俺にそっと耳打ちする。
「ユウジ、ちょっと見てみろよ。ほら、あっち」
「何よ?どうしたの?」
「ヒロミちゃん、パンツ丸見え。ウオ!白!」
「・・・。あ、ああ!いいですな!」
床に座るのはいいんだけど、なんでコイツら、カラオケのディスプレイがわざわざ見えにくいこんなところに集まっているのかと思ったら、ヒロミのパンツが目的だったらしい。
よく見るとソファだって空いている。
俺はもう冷や冷やで、(ヒロミ!パンツ見られているよ!)なんて必死に彼女に念じたけど、まったくの無駄。
結局バイトの男全員と言っていいほどにヒロミは楽しまれて、ムチャクチャに盛り上がったまま、2次会はお開き。
もう全員ベロベロ。
床にはつぶれて何人も倒れているし、おんぶされている女の子もいる。
俺も酒に強くなかったために、立っているのがやっとの状態。
朦朧とした意識の中、ヒロミを捜す・・・いた。
彼女は平気みたい。
「オイ、ユウジ!大丈夫かよ、お前」と、バイト内で一番仲のよかったイトウが、俺に声をかける。
「オイ!ユウジ!ッたく仕方ねえな。ここから帰れンのか?」
「ウイ・・・多分、平気だと・・・」
「ダメだな、コイツ。お前ンち、どこだっけ?」
「チャリで20分・・・」
「チャリ?面倒臭ェな!おーい、ここから一番近いヤツ、だれ?」
ひとまず俺を、だれかの家で介抱するつもりらしい。
すると、「あ、私ンち、一番じゃないかもしれないけど近いよ」と、ヒロミが名乗りをあげた。
「ヒロミちゃん、近い?でも女の子の家だしなァ」
バイト先では俺らが付き合っていることは内緒のため、仲のいいイトウもその事実を知らない。
するとヒロミは、
「でもユウジ君、絶対帰れないよね。とりあえず落ち着くまで家にくれば」
「え。あ、いいの?じゃあユウジ、ヒロミちゃんのところ、いいってよ!」
「ウ、ウーン・・・」
「ユウジ君、大丈夫?」
「コイツ、多分ここから動けんな。ったく面倒なヤツだ」
「イトウ君、ユウジ君と一緒に来てくれる?」
「つーかそうするしかねェだろ、この状況だと」
というわけで、俺はイトウの背中に載せられてヒロミの家へ向かった。
歩くこと数分、ヒロミの家に着いた。
ひとり暮らしのヒロミは、駅から近い、住宅街のアパートの一室を借りていた。
俺も何度か彼女を送ったことはあったけど、付き合って間もないために、部屋には未だ入ったことがなかった。
「着いたー。ここだよ。ささ、どうぞ」
「おお、もう着いたのか。助かった。コイツ重いよ」
「イトウ君、お疲れさま。どうもありがとうね」
「いえいえどういたしまして。じゃあ俺帰るわ」
「え、そんな、悪いよ。お茶でも飲んでいけば?」
「いいの?つーか俺が帰るとヒロミちゃん、ユウジとふたりきりか」
「ウフフ。でもユウジ君、つぶれちゃっているから平気だよ」
「でもさすがに疲れたな。じゃあお言葉に甘えて」
そんな会話が耳に入ってきた。
というわけで、3人でヒロミの部屋。
目の前がいきなりパッと明るくなる。
いい香り。
女の子の部屋って感じ。
でも俺はベロベロ。
立っていられない、目を開けていられない。
そのままどさりと倒れこんでしまう。
そのあと、足だかを持ってずるずると引きずられたところまで記憶があるんだけど、泥酔の辛さには耐えられず、そのまま眠りについてしまった。
でも酔っ払って寝ちゃうと、時折目が覚めるでしょ。
俺も何度か目を覚ましたんだ、心配で。
でもイトウとヒロミはどうやら飲み直しに入ったらしく、部屋の中にウイスキーのいぶした香りが漂っていた。
俺も参加しようと試みるんだけど、どうやら酔いは相当深く、結局また眠りについちゃうってのが何度か続いた。
また、いきなり目が覚めた。
ずいぶん寝たらしい。
これまでの目覚めのときとは違って、ずいぶん頭もすっきりしている。
体も重くない。
トイレに行きたいな。
電気はまだついている。
ユ「ウーン、寝たー」
イ「おお、ユウジ。起きたか。悪ィな、まだお邪魔しているよ」
ヒ「おはよー、ユウジ君。大丈夫?」
ユ「うん、だいぶすっきりした。俺、どれくらい寝てた?」
イ「2時間くらい?ヒロミちゃん」
ヒ「そうね、それくらいかな」
ユ「ヒロミちゃん、スンマセントイレ借ります」
ヒ「吐くの?大丈夫?」
ユ「いや、違います。放尿」
ヒ「やだー、ユウジ君ったら(笑)そこの先ね」
おぼつかない足取りで、指で示されたユニットバスへ向かう。
トイレを済ませて手を洗っていると、見るともなしにそこに並べられたいろいろなものが目に入ってくる。
さすが女の子、いろいろ並んでいる。
いや、そんなにジロジロ見たらイカンと思いながら、サッサと出ようと急いで手を拭いたときに、パッと目に入った。
大小の歯ブラシ2本。
そういえば付き合ってすぐの頃、ヒロミの家に行きたいって頼んだことがあった。
そのとき、なぜかヒロミはいい顔をしなかった。
まあ俺も、付き合ってすぐだからさすがに失礼かと思ってそれ以上は無理強いしなかった。
訊けば、前の彼が置いていったものがまだいっぱい部屋にあって、そんな中に俺を通すのはイヤだということらしい。
そんなことも言っていたっけと、その歯ブラシ2本を見て思い出していた。
今は、ヒロミは俺と付き合っている。
大丈夫だ。
でも前の彼氏は30オーバーだって言っていたな、10近く上だよ。
歯ブラシが部屋にあるってことは、泊まっていたってことだよな。
あの細くて華奢な体が・・・イカンイカン!今は俺の女だ!
なんてモヤモヤとしたまま部屋に戻ると、イトウとヒロミはまだ飲んでいた。
イ「ヨウ、ユウジ。大丈夫か?」
ユ「ウン、さすがに抜けたみたい。でも眠いな」
ヒ「ユウジ君、一緒に飲まない?ウイスキー買ってきたの」
ユ「俺、酔いつぶれてここに来たんだよ?もう飲めないです」
ヒ「じゃあベッド使っていいよ。床じゃ痛いもんね」
ユ「イヤ、さすがにそれは悪いです。ここで寝ます」
イ「ユウジ、お前半目開けて寝ていたぞ。怖ェな」
ヒ「死んでいるみたいだったよ」
ユ「いいの!だってどうしようもねェだろ!」
本当はベッドに行きたかった。
ヒロミのベッド。
でもさすがに遠慮した。
というわけで、また同じ場所で横になって、寝顔を見られないように、彼らに背を向けて、壁に向かって眠りに再び眠りに入った。
ところがそれまでずっと寝ていたせいか、ちっとも寝られない。
かといって起きているときのように意識がはっきりしているわけでもなく、睡眠と覚醒の間をさまよっている感じ。
ふわふわ。
聞くともなしに、ふたりの会話が耳に入ってくる。
「でさ、俺が彼女の家でイチャイチャしていたらさ、弟が帰ってきちゃって」
「ウソ、本当?でも気がつかなかったんでしょう?」
「そうそう。だって俺らセックスしていたしね。彼女なんて家が留守だから」
「え?じゃあ声とか出しちゃっていたの?」
「ウン。聞いたことがないくらい大きな声で。そうしたらさ、彼女の弟が入ってきちゃったんだ!『おねえちゃーん』とかいってさ(笑)」
たわいもない話をしているふたり。
すると、話がだんだんきな臭くなってきた。
「さっき2次会でさ、ヒロミちゃんのパンツが見えててさ、大変だったよ俺」
「ウソ、見えちゃってた?ヤダー」
「俺さ、何度も見に行っちゃったよ。ヒロミちゃんのパンツ」
「ヤダ、イトウ君やらしいー(笑)」
「だってさ、目の前にスゲエかわいい子のパンツが見えるんだぜ?見ないのは失礼だろ。いや、そう思うね俺は」
「え・・・かわいいなんて、イトウ君上手・・・」
「マジだって。バイト連中だってみんな狙っているぜ、ヒロミちゃんのこと」
・・・ゴルァ!と言いたいのをこらえているうち、俺は振り返るタイミングを逃していた。
「だってさ、ヒロミちゃん、部屋に帰ってきてからも着替えないからさ、さっきから飲んでいる最中、パンツが何度も見えちゃって」
「え、だってもう着替えるの面倒だし、第一イトウ君たちいるから着替えられないし(笑)」
「そうだよな(笑)でもさっきから見せられちゃって、俺もう大変」
「え、何が大変?」
ヒロミがそういい終わるのを待つことなく、イトウが何かをやらかした。
がさりという音のあと、衣擦れの音が静かになった部屋に響く。
しばらくの静寂のあと、ヒロミ…

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