悪夢の休暇(1)

2017/06/04

妻の綾子は43歳。父親の経営する地方のスーパーで経理の仕事をしている。子供は高校二年の息子と中学三年の娘がいる。私は地元の銀行に勤める銀行マン。綾子は私の自慢の妻だった。有名女子大を卒業し、私と同じ銀行に入社した綾子は優秀だった。支店勤務は最初の一年程度で、あとはいきなり役員の秘書に抜擢されたのだ。しかも美人だった。どちらかと言うと和服が似合う日本美人だが、洋服を着ても遜色はなかった。何より、綾子は品があった。父親が会社を経営していたせいもあるが、生活に余裕があったらしく、中学・高校と東京の一流どころに通っていたのだ。才色兼備に加えて品があった。そんな綾子とたかが一銀行員の私がどうして結婚出来たのか?友人や同僚から、よく不思議がられていた。 それは私にとって幸運だった。 互いに独身だった頃、私は満員電車に揺られながら、ふと同じ車両に綾子が乗っているのを発見した。 それもすぐ近くに。 綾子は銀行内でも評判の美人職員だったから、私も顔位は知っていた。 その品のある美しさに胸をトキめかせながら彼女の横顔に見惚れていたが、 急に彼女の顔が曇り出したのを見逃さなかった。 しばらくして、私は彼女が痴漢に遭っている事を知った。 彼女が嫌がり、困惑し、今にも泣き出しそうな表情になっているのを見ている内に耐えられなくなった。 乗客を押し退け、何とかして彼女に近付いた。 「高橋さん!」 そしてわざと大きな声で綾子に声をかけたのだ。 名前を呼ばれて、えっ…?と、こちらを見た綾子。 「おはよう」 私は出来る限り、親しみを込めて挨拶をした。 一瞬、キョトンとした綾子だったが、すぐに笑顔で挨拶を返して来たのだった。 その顔にホッとした安堵の表情が浮かんだのを私は見ていた。 勿論、痴漢が綾子を諦めたのは言うまでもない。 そんな偶然の出会いだった。 自分の窮地を救ってくれた私を信用してくれたようだった。 それから私達の交際が始まったのだ。 そして一年足らずで私達は結婚した。 周囲に大きな波紋を与えて…… 私は銀行から勤続25年の表彰を受け、一週間の休暇と旅行を贈られた。 行き先は幾つかの候補地の中から選んでいいというシステムだった。 私は行き先を妻と相談した。伊豆や軽井沢、行きたい先はあったが、結局、山奥のひなびた温泉を選んだ。 これが悲劇の始まりだとは知らずに…… 1ヵ月後。旅行は夫婦に贈られたものだったから、私達は子供らを妻の実家に預けて出発した。 新幹線と電車とバスを乗り継いでの半日コースだった。 目的地に着くと本当にそこは山奥だった。 でも空気が新鮮で心が洗われる思いだった。 旅館も古い木造だったが、それこそ私達が望んだ純日本風の旅館なのだ。 私達は露天風呂に入り、美味しい料理に舌鼓を打ち、心から二人の旅行を楽しんだ。 倦怠期を迎えていた私達も新婚気分に戻ったようだった。 二日目の夜。私は酔った勢いもあって、妻の布団に潜り込んだ。 久しぶりに綾子を抱きたいと思っていた。 綾子は元々、セックスに関しては淡泊だった。 疲れている時は拒否もされるし、いざ始まっても気分が乗らずに私の行為にほとんど反応しない事もあった。 だから、最近では私も自分で慰める事が多かった。 だが、今日は久しぶりの解放感と酒の酔いが私をその気にさせていた。 綾子も拒みはしなかった。 寝巻の帯を解き、久しぶりに綾子の形の良い乳房を目にした私は思わずむしゃぶり付いた。 「あっ…?」 綾子が甘い声を上げる。 私は久しぶりに綾子の体を堪能した。 だが、その日も綾子をイカせる事が出来なかった。 綾子は不感症ではなかったが、私に言わせると感度が鈍いのかも知れなかった。 私は綾子の白い肌の上に射精し、綾子にキスをして横になった。 綾子は嫌がりはしなかったが、やはり淡泊だった。 山奥のひなびた温泉を楽しみながら忽ち時は過ぎ、五日目の日。 私達は近くの山を散策に出かけた。 綾子が言い出したのだった。 これといった名所もなく、ただ空気が新鮮で森林浴には最適な環境だった。 私と綾子は散策コースの簡単な地図を手に一時間ほど歩いた。 すると目の前に結構大きな池が現れ、私と綾子は思わず立ち止まって見惚れていた。 しばらくして池のほとりに山小屋らしき建物を見付け、私は綾子の手を引いて行ってみる事にした。 なだらかな道程とはいえ、一時間も歩けば汗ばむ程だった。 私は少し休憩しようと思ったのだ。 誰かの住居にしては小さく、少し大きなバンガローといった感じだった。 入り口の扉を開けて中に入った私達はそこに人がいたのを知って驚いた。 そこにいたのは背の高いがっちりした男だった。 不精髭を生やし、いかにもくたびれた衣服を身に着けていた。 「おっと、失礼!人がいるとは知らなかったので…」 私は詫びた。 「別に構わないさ別に俺の小屋じゃないから…」 風貌からは若いのか年寄りなのか、わかり辛かった。 素っ気なく答えた男に私は何と話し掛けたらいいのかわからずに言葉に詰まってしまった。 「俺に気を使う必要はないよ。休んでけばいい」 男がそんな私に話し掛けて来た。 よく見るとまだ二十代位の青年だった。 私は綾子を促して近くに置かれているベンチに腰を下ろした。 「君はこんな所で何をしてるんだい?」 私は息子のような青年に声をかけた。 「住んでるんだよ」 またも男は素っ気なく答えた。 「え?こんな所に?」 綾子が驚きの声を上げた。 「悪いか?」 男が綾子を睨んだ。 「いえいえ、そう言う意味では…」 私が綾子に代って謝った。 住む家もない天涯孤独の身なのか、それともこの村のホームレスなのか…。 それより、中に入った瞬間から、部屋には悪臭というか異様な臭いがしていて、私も綾子も顔を歪めていた。 「臭いのかい?風呂なんかしばらく入ってないからな…」 男はそう言って笑った。 綾子が辛そうに顔をしかめた。 綾子は何より清潔好きだった。 家でも汚い場所があれば、とことん綺麗にしてしまうし、不潔な物や人は嫌いなのだ。 私は頃合いを見て立ち去ろうと思っていた。綾子の為にも…。 「あなた、そろそろ行きましょう…」 綾子が、この小屋から一刻も早く出たくて仕方がないように言った。 「そうだな。じゃ、私達はこの辺で…」 私はベンチから立ち上がって浮浪者風の青年に声をかけた。 するとその男が床から立ち上がり、ドアの前に立ったのだ。 私達が出て行くのを遮るように…。 驚いた私はその男の顔を見た。 「風呂には1ヵ月以上入ってないけど、女とはもう3ヶ月はやってないんだ! 奥さんとやらせてくれないかい?気持ち良くさせてやるから…」 男の口から信じられないセリフが出た。 「えっ?」 私と綾子が同時に驚きの声を上げる。 「いいだろ?奥さん、綺麗だし、やりたいよ!」 男が近寄って来る。 私は綾子を庇うようにしながら後退りした。 「君、冗談なんだろう?でも、冗談にも程があるよ」 私は身の危険を感じながら、言葉で諭そうとした。 目の前の男は、中肉中背の私と比べると背は10㎝以上高く、 体付きも浮浪者らしくないがっしりした体型だった。 「あんたは、おとなしく見てなよ」 男がいきなり私に掴みかかって来た。 「キャーッ!」 綾子が悲鳴を上げる。 私は男と取っ組み合いになり、しばらくは対抗出来ていたが、体力、腕力で押されていった。 壁に押しつけられ、腹にパンチを食らった。 息が出来なくなり、私は意識を失った。 それからどの位時間が経っただろう…。 私はハッと意識を取り戻した。 最初の数秒間はここがどこで自分が今まで何をしていたのか思い出せなかった。 近くで女の悲鳴が聞こえて驚いた私は声のする方を見た。 聞き覚えのある声の主は見間違う筈もなく、妻の綾子だった。 その綾子が先程の男に床に押し倒された格好で形で襲われていた。 その日着ていた薄手のピンクのセーターを捲り上げられて、 ずり上げられたブラジャーの下の乳白の乳房をごつい手が揉み上げている。 「ああっ、嫌…やめて!」 綾子が男の腕を掴んだり、叩いたりして抵抗していたが、男に対してそれは何の効果もなかった。 私は慌てて立ち上がろうとした。 だが、私はその時になって初めて気が付いたのだった。 自分がロープで縛られていて、小屋の柱に固定されている事に…。 「こらっ、おまえ…何をしてるんだ!」 私は怒りに顔を赤らめて男を怒鳴り付けた。 「もう起きたの?もっと寝てればいいのに…」 男は私の方をチラと振り返り、そう言うと再び綾子を襲い始める。 「あなたっ、助けて!」 綾子が必死に救いを求めて来た。 私は柱に縛り付けられた体を振りほどこうと思い切り体を動かしたが、ロープはビクともしなかった。 「こんな馬鹿な真似をして…警察に訴えるぞ!」 私は精一杯の脅しをかけたつもりだった。 「警察なんて恐くないよ」 だが男はどこ吹く風だった。 片手で綾子の肩を床に押さえ付け、もう片方の手で豊満に実った乳房を揉みしだいている。 その状況からすると私が気を失っていた時間は男が私を縛り付けていた5分か10分程度だったようだ。 目の前で愛する自慢の妻が襲われている?? 決して許される事ではなかった。 私は男を怒鳴り付け、罵り、必死に体を悶えさせた。 怒りが沸き上がり、錯乱しそうだった。 「ああっ?嫌ーっ!」 綾子がけたたましい悲鳴を上げた。 男が綾子のジーパンを脱がせようとしている。 それも有無を言わさぬ凄い力で…! 抵抗する綾子の邪魔な手を払い除けながら、男は無理矢理、綾子からジーパンを脱がせてしまった。 妻が浮浪者に 「嫌っ、嫌っ…やめてっ!お願い…」 綾子が恐怖に顔を引きつらせて絶叫す…

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