フライドチキンと返品輸入水着1

2022/06/16

もうかなり昔の事で、例の六本木のタレント違法薬物事件を聞いて思い出した。
僕は小さな婦人服飾の通販の会社に勤めていた。当然ながら社員は女子が圧倒的に多くて、僕は外回りと力仕事で営業車を使ってほとんど毎日仕入れ先・得意先を回っていた。

ある日、得意先の会社の前の坂道に営業車を停めて商談をしていて、話が終わって外に出てきた丁度その時に、別の駐車していた車が無人で動き出して、僕の車にぶつかって、さらに隣のフライドチキンの店で買い物してタクシーを停めようと、歩道から車道に乗り出していた母親と幼女にその無人車が突進していった。

僕はとっさに無人車の突進に気付いていない母娘を歩道に引き戻して、危うく轢かれずに済んだ。前後して無人車の暴走に気付いた運転手は追いついて、何とか飛び乗って停めた。

歩道の通行人、フライドチキンの店先で気付いた客、それに当事者の母娘はあっけにとられていた。僕も一瞬放心状態で立ち尽くした。無人車の暴走は駐車ブレーキが甘かったのだろう、全面的に責任はあちらにある。実は、僕の営業車はすこし前に駐車場でぶつけられて、修理に出す予定になっていた。相手はそうとは知らずに、損保の会社を呼んで事故対応をしようと話が始まった。両方から賠償を取るわけにはいかないので、正直にそのことを告げた、衝突被害も大したことはなかったし。

前置きが長くなったが、轢かれそうになった親子の母親が、お礼にとフライドチキンのパーティー・バレルを2?3個買って下さると言う。「車で会社に持って帰って、同僚の皆さんと召し上がると良いのでは?」、確か12月でそんなシーズンだった。

そして僕の車にぶつけた車は、婦人物水着の輸入販売の会社だった。それの売れ残り回収品を箱でいくつか、良かったら持って行って呉れとの申し出だった。回収品と言っても、包装の封も切っていないと言う。それならば、日本は冬のさなかだけど、年末年始には海外旅行でビーチを目指す女子がわが社には沢山いる。そんな展開で、別段の実害も無しに丸く収まった事件は一件落着と思われた。

丁度昼前に会社の駐車場に帰り着いて、フライドチキンと水着があるからと、女子を呼びに部屋に入って、パーティー・バレルと水着の入った段ボール箱がいくつか昼飯の場所に運び込んだ。女子は食い気だな、弁当を食べながらフライドチキンもあっという間に空っぽになった。

昼食後同業者の製品だと言う興味もあって、輸入水着と言う段ボール箱を開けて、女子が品定めを始めた。僕も隅っこで弁当を突っつきながらぼんやりそれを眺めていた。そしたら女子から歓声・嬌声が上がるではないか。「こんなの着れな?い」「エロすぎ?」「あんたの彼氏変態だから??」とか言いたい放題。「×子、正月海外で着れるよ?」「○子、倦怠期の彼氏にいいじゃない?」「あんたの彼氏、こんなん着て写真撮るの好きだったと違う?」とか予想通りの声も聞こえる。確かに、海外の雑誌で見かける様な過激どころではないデザインだ。

ここいらが、僕が居心地が悪くて退社した理由だけど、人数が少ない男子は存在自体が霞んでいる。一斉に女子がその過激な水着を試着し始めたのだ。「おいおい、性欲の塊の成人男子の前で、まっぱで水着に着替えるなよ・・・」

日頃から、通販のカタログ写真撮影などで次々にモデルさんが辺り構わず平気でそこいらで裸になって着替えている。大手の様に立派な専用スタジオなんて無かった頃の話だ。モデルさんを雇う経費も馬鹿にならないので、時には女子が代役を務めることも珍しくなかった。みんなして会社を大きくしようと熱気には溢れていて、自分たちのカタログ写真で売り上げに貢献すればと確かに燃えていた。

それでも普段事務所で顔を合わせている女子がヒールにストリング一丁で、次に着る衣装を抱えてうろちょろするのは、男子にとっては生殺しだったね。30人くらいいた女子のほとんどがストリング・マイクロビキニに着替えて、ファッションショーごっこを始めた。ローライズボトムで手の平に入る位小さい布地で後ろも紐Tバックだから、お毛々の草叢がはみ出すかと思ったら、流石わが業界の女子しっかり処理していて、ギリギリおさまっている。ただボトムの三角布地はメッシュの奴もあって、しっかり黒く透けて見えている。それだとトップもメッシュなので、乳首・乳輪もしっかり透けて見える。メッシュを省略した枠だけの奴もある、それをオーストラリアでは見かけた。

抑えてはいても僕も含めた男子は勃起の代わりにパンツが潤うのを感じていたね。凄いので縄縛りみたいに上下が紐でつながった奴だと、紐の幅がやっと乳輪位しかない。我慢して気にもしない顔で弁当を食ってはいたが、味なんて全然分からなかった。年上の女子のお局候補生みたいな姉さんから、「ジェントルマン、ジェントルマン」ってふざけた呼び声が掛かって、僕には「審査委員長、講評と評価をして下さい。売れ筋の順位もつけてね!」とリクエストが来る。仕方なく渋々と言った風で、それでもじっと見る口実が出来たと男子全員が全身を舐めるように眺める展開に進んだ。夏の水着の日焼けもすっかり取れて、真っ白な裸が眩しいし、何となく辺りに漂うフェロモンみたいな体臭が艶めかしい記憶がある。後年には普通に飛び交った命令、「1番の男飢饉の××ちゃん、審査委員長からご褒美のご立派なポコチン頂きなさい!」も無い平和なエロだった。

そんな風な昼休みも終わりに近づくと、女社長が顔を見せて自分も試着してみると言いだした。サイズは、輸入物だけあって結構大きな奴もありそうだ。その女社長は服飾デザインにはエロが無ければ通用しないと公言してはばからない、その後「エロ可愛い」なんて言葉が出来たし。

その女社長は実家が資産家で、大抵の弾けた遊びや体験はし尽くしているようだ。多分違法薬物までは手は出していないだろう。学生時代から同棲なんて辛気臭いと男を複数キープして学生マンションで飼育してたらしい。自分の欲求解決は二の次で、カップル作りが面白くて、気ままに男女をくっつけて、彼らが恋愛模様を演じるのを楽しんでいた。結局支配欲で世界が動いている如き気ままな学生時代、女王様そのものだった。海外旅行に行くには男女数人ずつのクラスメートを引き連れて、トップレスビーチ・ヌーディストビーチなんて当たり前だった。セレブのパーティーにはオートクチュールのシースルー・ドレスで表れて憤慨をかったこともある。極め付きは、数々のエピソードが知れ渡った乱交輪姦パーティー、彼女のドSの面が見え隠れした。それでも警察沙汰にならなかったのは、ある意味彼女の仁徳なのだろうかと(札束が解決手段だったのは事実)。飛び出したメンバーは別の場所で問題を引き起こして事件が報じられた。

旦那もあるテレビ番組に夫婦で出演した時に、女社長を屋外の人気のない場所で裸にして写真を撮るのが趣味だと語っていた。話がそれたが、件の試着はボトムを股にひっかけて、紐を2本乳房の前から首にまわして結んで、後ろで十字に回す奴だ。顔を見なければ、プレイメートボディ級と言っても通用するスタイルだ。女社長が若い頃で、沢山子供を産む前の時だ。

大騒ぎは最高潮で、午後の仕事に戻るのに着替えるのかと思ったら、女社長の指示は製品テストにしばらく着ていなさいと。のちに輸入水着も通販のカタログに載って売上好調なのだから、女社長の目も狂いはない。確かに通販の新製品は着心地などを確かめる為にしばしば実際に日常で着て見て採用に評価する。午後一杯マイクロ・ストリングビキニが事務所倉庫に溢れていて、目のやり場に困る半日だった。丁度その日午後は製品在庫チェックが急かされていて、外回りに逃げ出す事が出来なかった。(続く)

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