真夏の夜の夢1

2021/06/25

時計の針が夜中の一時を差す頃、私たちはマサルの部屋の前に立っていた。辺りは静ま
りかえり私たちの息遣いだけが廊下に微かに響く。二つ年下のミサキは私のパジャマの袖
つかんで離さない。シーっと人差し指を一本口の前に立てるミサキの顔が窓から差し込む
月明かりに照らされる。ミサキの興奮がそのイタズラに目を輝かす子供の表情から見て取
れた。そう言う私も心底興奮していたのだ。
「いくよ」、そう言うと私はマサルの部屋のドアノブに手を掛けた。ドアからカチャっと
いう小さな音が鳴る。私はミサキと眼を合わせる。ミサキの満面の笑みに私も思わずにや
けてしまう。二人でわずかに開いた隙間から部屋を覗くと、オレンジの豆電球が薄らと部
屋を照らしていた。ベッドの上で緑の掛け布団を抱くように寝ているマサルの背中が見え
る。机には夏休みの宿題か何かが山のように積まれ、その横に学生鞄がくたびれたように
口を開けたまま置かれている。音が鳴らないように慎重にドアを押し開け、人が通れるだ
けの隙間をつくった。なんだかスパイにでもなった気分だ。
「おねえちゃん、マサル、パンツ一枚で寝てるよ」、ミサキは小声で言った。
「好都合ね」、私はミサキにと言うよりも自分に言い聞かせた。

私とミサキが今回の計画を立てたのは昨日の夜、私たちがお風呂に入っている時だった。
私が鏡の前でシャンプーを流していると、湯船につかるミサキは手をだらんと浴槽から出し、タオルを退屈そうに絞りながら話し始めた。
「ねえ、お姉ちゃんってマサルのちんちん見たことあるの?」この質問が唐突すぎて、開いた右目にシャンプーが入った。
「なによ突然。まあ、あるにはあるけど。それよりも、あーもう、痛い」
「え、ほんと!いついつ?どんなだった?」ミサキが湯船でバシャバシャと水を立てる音が聞こえる。
「かなり昔のことよ。たぶんマサルが小学二年生くらいの頃じゃないかしら。ほら、あんたも一緒にお風呂とか入っていたでしょ」
「えー、全然覚えてないよ。どんなだった?」
「どんなって」、私は思わず振り向き、親指と人差し指をわずかに離して見せ、「こんなだった。マメよマメ」、と言った。
「えー、見たい見たい!」、ミサキはまたお湯をバシャバシャさせ言った。
「あんた、学校の男の子のちんちんとか見れるんじゃないの?」
「えー、そんなの見れないよ」
「まあ、そうか。中二にもなればそうプラプラ出すわけにもいかないものね」、そう言いながらしばらく笑っていたが、私にふとある考えが浮かんだ。
そういえばマサルはいつからちんちんを隠すようになったんだろう?――確か小二くらいまでは……。
ある時期突然、風呂に「一人で入る」と言いだし、私がタオルを取りに脱衣室に入るのも嫌がっていた。
あいつはそういうことに恥ずかしさを覚えるのが人より早かったのかもしれないし、そうじゃないかもしれないけど、今となってはもう分からない。
もう大人のちんちんになったのかな、そう考えると私の頭には彼氏のそれが浮かんだ。
いや、そこまではさすがにね。
まだ中学一年生だもの。
でもちょっとは大きくなっていると思う。
毛とかも少し生やしたりしてね。

「ねえ、マサルのちんちん見れないかな」、ミサキは言った。
私もちょうどそのことを考えていたので、しばらくリンスを髪に付けるのに専念した。
「うーん、そうねえ。むりやり見ちゃうってのもできるけど。あいつチビだし。でもそれも少しかわいそうよねえ。うーん、それじゃあ寝ている間にってのはどう?」
「えー、起きちゃうよ。マサル神経質だもん」
「神経質」、私は意味もなく繰り返した。
シャワーの蛇口を回し、後ろ髪からリンスを流し始める。
その間ミサキも昔マサルが遊んでいた玩具の舟をいじりながら何やら考えている様子だった。
寝ているマサルを起こさずに脱がすには睡眠薬を飲ませるくらいしかないだろう。
睡眠薬――そんなものが……。
「あっ!睡眠薬!」、私は思わず声を張り上げた。
「そんなものないよ」
「あるって!睡眠薬ってほどじゃもちろんないけど、ほら、伯母さんが不眠症で使ってるあれ。睡眠安定剤とか呼んでいるやつ。あれなら大人が使う量飲めばぐっすりじゃない?」また流したリンスが右目に入ったが今度は気にならなかった。
それより、本当にマサルを脱がせられそうな気がして気持ちが高揚していたのだ。
「いいね!それ、いけるよ!」、ミサキは湯船の中で祈りをするように膝で立ちながら言った。
ミサキの胸は少し膨らみを帯びてきていた。

それから私たちは風呂を上がり、伯母の部屋に忍び込んだ。
目的のものは思ったよりも早く見つけることができた。
三本脚のちゃぶ台のような小さなテーブルの上に腰痛のシップなどを入れたプラスチックケースがあり、その中に絆創膏の箱と並んでそれは置かれていた。
箱の裏に「一五歳以下の服用は禁止」と書かれていたが、それくらいじゃないと睡眠薬の代わりにはならないだろう。
私たちはそこから一錠だけ取り出し、再び箱をもとに戻した。
これさえ飲めばマサルはちょっとの事じゃ目覚めることはない。
翌日、私たちは夜の計画の事である種の興奮状態にあった。
家族と朝食を囲んでいる時も事あるごとに私とミサキは目配せをし、二人だけの秘密に心を満たすのである。
母は私たちの様子に気がついたのか、「あんたたち、いつまでも夏休み気分でいるんじゃないの。休みなんてあっという間に終わるんだから」なんて小事を挟むけど、マサルはいつものように朝からサッカーの練習に行き、私たちがこんな企みを持っているなど露ほども知らないのだ。
私はソーセージを摘まみながら、マサルくんのちんちんは大人かな、それともまだ子供かな?なんて変態みたいな事を考えていた。
いや、もうそれは誰が何を言おうとも変態の思考そのものだろう。
私は急に恥ずかしくなってそれを一口で食べた。

「ミサキはオナニーって知ってる?」ミサキは私の部屋のパイプベットに横になりファッション誌を開いていた。
「まー、何となくね。男子の連中がたまに教室で話してるもん」、ミサキは黄色い枕を抱くようにして言った。
「ふーん。じゃあさ、マサルもやってると思う?」、私は高校の世界史の教科書の文化史の欄をただ興味もなく眺めながら言った。
二人ともこんな変態的な計画を立てながらも、どこかまだ明け透けと下の話題をするほど恥じらいを捨ててはいないのだ。
それもそうだ、私は学校じゃ普通の高校生だし、初体験だって二カ月ほど前にしたばかりなのだから。
ミサキはと言えば、男子のちんちんすらまともに見たこともない、純粋無垢な中学生なのである。
それゆえに一層好奇心が強いのではあるが。
「いやー、それはないでしょ」
「ないって、やってないってこと?」
「うん。だってマサルだよ?あんなにチビで子供みたいなやつがオナ……、ねぇ?それはないよ」、ミサキは枕を抱いたまま壁を向き言った。
頭に雑誌が当たり、床に落ちる。
「それもそうか。まあ確かに小さいしね。じゃあ毛くらいは生えてると思う?」
「うーん、たぶん。あんまり想像できないけど。あの顔で毛って……。でも気になるね」、そう言うとミサキはごろりと転がりまた私の方を見た。
顔が少し赤くなっている気がする。
「賭けようか?」
「お姉ちゃんは生えてると思うの?」
「うーん、なんとなく。マサルの男らしさに賭けるつもりで」
「いいよ。じゃあさ、負けた方がマサルのちんちん触るのね!」ミサキはたまに予想もしないことを言いだすのだ。
でもそれも少し面白そうである。
「いいわ。すべての真実は今晩ってわけね」、私は姉としての落ち着きをできるだけ見せながら言った。
ミサキは「そうね」と言いニコっと笑うと床に落ちたファッション誌を拾い上げまた枕の上に開いた。
私も教科書に目を落とす。
『嵐が丘』……ブロンテ。

「違うよ。吉伸のパスが高すぎたの」晩御飯はカツカレーだった。
いつもと同じように食卓ではマサルの甲高い声が響き渡る。
ミサキは器用にもその会話に交ざることができるのだが、私は計画のことで気が気でない。
ひたすらスプーンを皿と口の間を往復させる。
「なんだ、ユー姉しゃべんないな。彼氏にでもふられたか?」、マサルはこれでもかというくらいにカツを口に含み、もごもごと言った。
ちなみに私は「ユー姉」と呼ばれている。
「うるさいわね、テレビ見てるのよ、テレビ」、私は咄嗟の事に点いてもいないテレビを見ているなどという馬鹿げたことを言ってしまった。
「テレビ点いてないわよ」、母が言った。
「やっぱユー姉はふられたんだよ。かわいそー」、マサルはきゃっきゃと笑いながら言った。
このやろう、覚えていろよ……。
私は何か吹っ切れた気がした。
「あんまり調子に乗ってると、あんたの風呂覗くよ」、私は言った。
言ってやった。
一瞬のことであるがミサキが私をちらりと見たのに気がついた。
マサルは米を喉に詰まらせたのかゴホッ、ゴホッとむせた。
「ほら、そんなにふざけているからよ。三人とも早くご飯たべてさっさとお風呂にはいってしまいなさい」、母はそういうと立ち上がり、自分の皿を持って台所の方へ歩いて行った。
マサルは居間を出る前に「覗くなよ!」と私に言った。
私は「はいはい」と今度は本当にテレビを見ながら無関心を装った。
「おねえちゃん、さっきのはやばかったよ。感づかれちゃうじゃん」、ミサキは声をひそめ言った。
「ごめん、ごめん。まあ、とにかくあとはあれを飲ませるだけね。ホントにミサキ大丈夫?」
「まかせなさい。オレンジジュースに混ぜてマサルに飲ませるだけでしょ。楽勝よ」、ミサキは腰に両手を当て言った。
ミサキの顔はこれからの期待に満ちた満面の笑みを浮かべていた。
それにしても、マサルのあの動揺ぶりはやっぱり気になるわね。

マサルがお風呂に入っている間に私たちはあの錠剤をグラスに入れ、お湯を1センチ程度加えた。
私はいくらかナーバスになっていて、スプーンで混ぜる手が汗ばんでいる。
完全に錠剤がお湯に溶けると、それからオレンジジュースを目いっぱい加え、そのままそれを冷蔵庫へ戻した。
お湯で温くなっているとあやしまれるかもしれないので、冷やしておくためである。
それをマサルが来たら、今入れましたって顔でミサキが渡すという寸法である。
そんなことをやっていると、松本清張とか西村京太郎とかの推理小説に出てくる犯人になった気分だ。
「あんたたち、まだここにいたの。いい加減お風呂に入りなさい」、そう言ったのは母だった。
「えー、だってマサルがまだ入ってるじゃん」、私は言った。
まさか、もう寝てしまったのではという不安がよぎった。
「今あがったところよ」、母がそう言うと、後ろからタオルを肩に掛けプーマの黄色に青のラインが入ったハーフパンツ一枚の姿でマサルが現れた。
気だるそうに居間に入ると椅子に座りテレビを点けた。
「マサル、ちゃんと頭を乾かしなさい」、母が言った。
マサルは「はいはい」とタオルを頭に乗せるも、それっきりだ。
長い髪からは時たま水滴が落ちる。
「ほんとに、マサルは」母は呆れて言った。
「ほらあんたたちも早く入りなさい」、そう言うとそのまま居間には入らず階段を上っていった。
「マサル、ほらオレンジジュース」、そう言うとミサキはマサルの前のテーブルにそれを置いた。
マサルはスポーツ番組を見て、振り向きもせず、「ありがと」と言った。
そのあとミサキは私にもグラスと紙パックを持ってきて、「お姉ちゃんも」と言った。
自然だ。
極めて自然な一連の動作だった。
私はミサキの演技に感心して、「ありがと」と答えるまで少しかかってしまった。
「それじゃ私、お風呂入るね」、そう言うとミサキは居間から出ていった。
私の役目はマサルがちゃんとそれを飲み干すかを見届けることである。

「あれ、ユー姉はミサキと一緒にお風呂入らないの?」しばらく二人でサッカーのハイライトシーンを見ていたが、ふざけたコマーシャルが映るとマサルは話し始めた。
確かにいつもミサキと入る私が今ここにいるのは少し不自然だったのかもしれない。
「今日はサッカーを見たかったの」、私は懲りずにまた下手な嘘をついてしまった。
マサルも不思議がってこちらを振り向く。
「ユー姉、サッカーに興味あったっけ?」、マサルは疑っていると言うよりも、むしろ私をからかうようにニヤっとして言った。
本当に小学生の低学年を思わせる笑みだった。
口の両脇からはいたずらっぽい八重歯が見え、眼をクリクリさせている。
こいつはしゃべらなければかわいい弟だ、なんて思う。
タオルが床に落ちたがそれを気にする様子はない。
私は咄嗟にオレンジジュースを飲みほしたせいで喉にオレンジ特有の苦みを感じる。
私が飲み干してどうするんだか。
しかし、マサルもそれにつられたのかテーブルのジュースに気が付きそれに手を伸ばす。
「あれ、これ飲んでいいの?」
「さっきミサキが入れってったでしょ?ほらさっさと飲んで寝ちゃいなさい」マサルはそのグラスを手に取り、再びテレビの方を向いた。
私からはマサルの小さな後ろ姿しか見えない。
肩まで少し日焼けしていたが、背中は真っ白だった。
髪から垂れる水滴が背中をつたい、そのきめの細かい肌で弾くように流れ落ちる。
テレビからは番組のエンディングが聞こえていた。
その音は私の鼓動にかき消されそうなほど微かに、私たちの沈黙の間を埋めている。
マサルの右肘が持ち上がり、頭が上がる。
そしてうなずくようにまた元に戻る。
飲んだ……、ついに飲んだ。

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