堕ちていくのは運命だったのか(続)

2019/03/22

違うホテルのコースだったので、予約時にリクエストしていたツーサムでのゴルフは不可能になり、組み合わせでのゴルフプレーになる。
まさかそんな事があるのか、スタートの時間がきて私は目を疑った・・昨日プールで広子と話をしていた夫婦らしき二人の男女との組み合わせだったのである。
そして偶然にも夫人と思われた女性のスカートは広子と同じグリーン色で、少し短めの丈の長さまでもほぼ同じ。そうか・・昨日のプールサイドで広子が二人と結構会話をしていたのを思い出した。
ホテルに隣接しているゴルフコースだったらゲスト料金でプレーできるのに、わざわざポイプのこのコースまでビジター料金でプレーしに来て我々と同じ組でプレーする事は計画的でしか考えられない。いやそんな事考えすぎだよ・・とか、頭の中は何故だ?と混乱しはじめる。
何より私を興奮させたのが、プールサイドで少し話しをしただけなのに、広子の気を引いたに違いない男の風貌。背も私より高いが、何よりその自信に満ち溢れた眼差しで、上から見られると蛇に睨まれた蛙状態になりかねない色気を感じる。
たいがいの女性だったら危険なことを承知でも、この男に誘惑されたら、まず断れずに最後は体を開かされてしまうだろう。そう運がいいのか悪いのか、その後も気に入られたら、飽きるまで抱かれ続け、性欲処理にされる。
男の色気に敗北感を感じていて、それを顔に出さないだけで精一杯。その時もうちょっとしっかりしていればと・・今は後悔するが。
4人でプレーするといっても、二人乗りのカートなので、基本的にグリーン上とティーグランドくらいしか会話をする事は無かった。
それでもホールごとに会話は進み、先方の二人は結局夫婦ではなく旅行関係の仕事仲間で別々の部屋で滞在している事や、各ホテルには知り合いが多く、何か困った事があったら滞在中連絡してねと、優しい態度で接してきてくれた。
広子はプールサイドで抜群の水着姿を見られており、また広子のほうも松木氏を意識していることは明白なため、早くこのゴルフが終わって欲しいと願うばかり。
ましてや相手女性の明子とは夫婦ではないことがわかったため私の心配に火をつけてしまっていた。
松木氏と広子を近づけないために、ティーグランドでは同性同士に分かれ会話するよう心がける。最初のうちは女性二人も仲良くしているようだったが、プレーが後半に入っていくと「脚を綺麗にするには〜が必要で〜をしなきゃダメ」とか、上から目線で広子に説教じみた言葉で話すようになっていく。
今思えば不自然な事は明らかなのに当時はそんな心の余裕がなかったのか、夫人の挑発に乗せられていく広子を止める事はできなかったのである。
流石にプライドが傷つけられたのか「私外見では別に困っている事は無いのでご自身だけでやってください」とかなり辛抱していたせいかキツイ言葉で明子に言い返していた。「親切で言ってあげているのに何よ、少しスタイルがいいからって生意気ね」明子がたちまち言い返し喧嘩の火がついた。
私は当然止めに入ったのだが、松木氏は素振りをして知らん振りで落ち着き払っていた。しばらく言い合いになる大喧嘩に発展したのだが、私には目の前の言い争いを止めさせる手立てが無く途方にくれていたとの時「パチーン」と響き渡る。
先に手を出したのは広子のほうだった。辛抱しきれずに広子が明子の顔を叩いてしまう、一瞬後ずさりするも婦人がはり返す、広子は興奮し明子のかみの毛をつかむ、すると今度は明子の蹴りが広子の腹部に命中、広子は蹲り苦痛の表情に変わる、「あなたが先に手を出したんだからね」状況のわりには婦人はどこか落ち着いていた。
今となっては罠だと思えば、辻褄が合うのが悲しさと怒りとなって甦る。
「このホテルは日本人のコンシェルジェがいるはずだから連絡するわ」と広子を無視するように私に言い寄ってくる明子。
「初めに手を出した事は申し訳ないし、広子も弾みで出したと後悔していると思います」すると明子は「夫婦じゃないんだし、貴方には責任ないわね、しかも彼女が後悔しているかどうかは知らないけど、反省はしてないみたいよ、だって顔を見ればわかるもん」「私の気が収まらない、これって傷害だよ」
私は広子の手を引き少し離れて冷静に彼女を説得した。その間にも後ろからくるプレーヤー達が我々を何事が起こったのか関心を持ちながらスルーして行く。
しばらく経って明子が「本当に私許す気ないけど、もしゴルフで勝ったら考えてもいいよ」「次のショートコース一発勝負、男女が交互にボールを打つルールで私達に勝ったら今回問題にしないことにするよ」「でもあなた達が負けたら変わりに罰ゲームでもしてもらうけどどう?」私はたちまち質問してしまう「罰ゲームってたとえば何ですか?」
しばらく沈黙の後、今度は松木氏が明子の耳に囁く、すると明子が驚きもせず「負けたら彼女が今履いている下着を脱いでもらう。旦那が罰ゲームとしては屈辱的でいいじゃないかって」
その言葉を聞き、私達二人はその挑発に茫然とし、何故かお互いの顔を見られないでいた。

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