嗅ぐだけで濡れてしまう新人君の甘い体臭[前編]
2018/01/26
今から3年程前の出来事です。
私は当時30歳、小さめのIT企業に営業職として勤めていました。
結婚して2年目になり、そろそろ子供を作りたいなと考えていたので、妊娠したら今の会社は退職し、家庭に入ろうと思っていました。
旦那は29歳と年下でしたが、そこそこ稼ぎも良く生活には不自由していませんでしたし、出世コースを進んでいた事もあり、将来の結婚生活は安泰な状態でした。
そんな折、中途入社で1人の男の子が入社して来ました。
名前はS君といい、長身でスラッとした今時のイケメンといった感じで、年は3つ年下の27歳という事でしたが、どこか大人びた雰囲気もある不思議な子でした。
「◯◯さん、よろしくお願いします」
「あ、はい・・・こちらこそよろしくお願いします」
まっすぐこちらを見て爽やかな挨拶をされ、一瞬戸惑ってしまった私はあまり目を合わせられませんでした。
その数日後、課長が私の席まで来てこう告げました。
「S君の教育係はあなたにやってもらうから、しばらく仕事に慣れるまではサポートしてやってくれ」
「えー!仕事、結構溜まってるんですけど・・・」
私は自分の事で精一杯だったので必死に断ろうとしましたが・・・。
「◯◯さんもこの会社にいて長いんだから、それくらいの事はできるようになってもらわないとね」
「・・・はぁい・・分かりました」
そろそろ退職しようと思っているとは言えず、結局面倒な役割を引き受ける事になってしまいました。
その夜、旦那にS君の教育係になってしまった事を愚痴っていたのですが、旦那もあまり興味が無いのか、冗談を言ってマジメには聞いてくれません。
「でもイケメンなんだろ?変なオッサンよりはマシで良かったじゃない」
「イケメンって言うのは一般的にって意味だよ。私は別に全然タイプじゃないし・・」
「あっそ・・・。まあ辞める前の一仕事だと思えば気が楽になるんじゃないか?」
完全に他人事です。
愛しい嫁が困っているのに・・・。
「・・・そんな事より、今日はエッチしたいな」
「え?今日?疲れてるんだけどなー」
「でも子供欲しいんでしょ?面倒臭がってたらいつまでも出来ないよ?」
「んー・・・まあそうなんだけど・・・」
私は特にセックスが好きという訳ではなかったので、仕事のある日にするのはちょっと億劫だなぁといつも思っていました。
「ちょっとだけだよ・・・」
私はそう言って寝室に向かいました。
ベッドで横になっていると旦那がキスしてきます。
しばらくキスを続けていましたが、疲れていた私は早く済ませたいなと思い・・・。
「ねえ、もう入れて・・・」
「濡れてないんじゃない?」
「何とか入るくらいには濡れていると思うんだけど・・・」
「じゃ、入れるね」
最初はあんまり濡れておらず、ちょっとキツい感じでしたが、少しずつ濡れてきて何とかする事が出来ました。
「あっ・・・んっ・・・」
「うぅ・・・もうすぐイキそう」
「んん・・・イッて!」
そう言っているうちに旦那がイッて精液が私の中に入って来ました。
「うう・・・いっぱい出てるよ・・・」
最近はこうやって何度か生でセックスしているのですが、今のところ妊娠の兆しはありません。
「子供・・・出来ないよね」
「そんなに簡単には妊娠しないものだと思うよ」
「そうなのかなぁ・・・あんまりセックスにも積極的になれないし、私妊娠できるのかなぁ?」
「まあ、まだ焦る必要はないんじゃないかな」
「私もう30歳だよ!このまま妊娠しなかったらどうしよう・・・焦るよ!」
「・・・ごめん」
旦那の心無い一言に私は少しヒートアップしてしまいました。
結局、その夜はちょっとぎくしゃくしてしまい、お互いそのまま寝てしまいました。
その後しばらく経ち、教育係となった私はS君を連れて営業に出る事が多くなってきました。
S君は物覚えが早く、すぐに会社の事業の事も覚え、営業にもそれほどサポートが必要なくなってきていました。
「S君って物覚え早いよね。私なんかよりずっと優秀だと思うなぁ」
「そんな事ないですよ。先輩の教え方が上手だからですよ」
しっかり相手を持ち上げる事も忘れない、どこか八方美人でしたたかなS君。
話していると自然といい気分にさせてくれる事が多く、退屈な営業もいつの間にか楽しい時間に変わって行きました。
なぜかとても心地が良く、安らぎを感じてしまうのです。
しばらくこの心地良さが何なのか私自身も気付いていなかったのですが、S君が近くにいると甘い香りが微かに感じられるのです。
「ねえねえ、S君ってなんか香りがする洗剤とか香水とか使ってるの?」
「え?何も使ってませんよ。どうしてですか?俺、匂いますか?」
「ううん、別にそんな事はないんだけど、なんだか甘い匂いがするような気がして・・・」
「・・・気のせいじゃないですか?」
「うーん・・・そうなのかなぁ」
結局、甘い匂いの正体はイマイチよく分からないままでした。
それからしばらくして、また私はS君と営業に出ていました。
その日は商談が長引いてしまい、電車での移動中、ちょうど通勤ラッシュの時間帯に重なってしまいました。
「あーもう最悪。この辺のラッシュは混むんだよね」
「まあ無理やり乗るしかないですねー」
案の定、ホームに入って来た電車は乗車率200%のすし詰め車両。
次の電車を待っても結果は同じだと私もS君も知っていたので、覚悟を決めて乗る事にしました。
乗り込むと入り口の方から押し寄せる人の波に押され、あっという間に人と人に挟まれて身動きが出来なくなってしまいました。
「ちょっ・・・待っ・・・」
「先輩、大丈夫ですか?」
ふとS君の声がした方を見上げると、目の前にS君の顔がありました。
「わ、近いよー」
「すみません・・・。でも俺ももう身動きできないんですよ」
乗車した電車は特急だったので、しばらくこのままかと思うと何だか恥ずかしい気持ちでいっぱいでした。
その時でした、強烈な甘い香りが私の鼻をくすぐったのです。
きつい体勢のはずなのに、心地良い匂いが漂ってきて、何だか不思議な感覚です。
これまでは微かに感じた程度だったので、これほど心地良い香りだとは思いませんでした。
(やっぱり・・・S君の匂いだ)
そう思った途端、何だか身体が熱くなってきて、もの凄い気持ち良さが襲って来ました。
(あれ?・・・私・・・感じてるの?)
ずっと甘い匂いを嗅がされている内に、何だか股間の辺りもムズムズしてきました。
(なんで・・!?そんな事考えてる場合じゃないのに・・・)
自分の身体に起こった出来事が理解できず、ひたすら困惑してしまいました。
「先輩、大丈夫ですか?汗びっしょりですよ?」
「あ・・・だ、大丈夫」
「降ります?」
「う・・・うん・・・本当に大丈夫だから・・・」
S君が話す度、さらに甘い匂いが強くなり、頭がクラクラしてどうにかなりそうでした。
その後しばらくしてようやく会社の最寄りの駅に着き、電車を降りる事が出来ました。
下着が濡れているのが・・・はっきりと分かりました。
「大丈夫でした?顔色悪いですよ」
「心配しないで・・・さ、戻ろっか」
その日はそのまま会社に戻り、帰宅しました。
家に着いて下着を脱いで見てみると・・・。
(やっぱり・・・すごい濡れてる)
これまで経験した事がないような濡れ方をしていて、自分でもびっくりしてしまいました。
その日の夜、旦那が寝静まった後、気になった私はインターネットで色々調べてみました。
すると1つの記事が目に留まりました。
『自分と違うHLAを持つ異性の匂いに人は惹かれてしまう』
人間の血液にはHLAというパターンがあり、そのパターンが異なる程、多様な免疫機能を持つ子孫を残せる可能性が高くなる。
その為、自分と異なるHLAを持った異性を本能的に感じ取り、身体の相性がいい相手を探す必要がある。
匂いはその相手を探す為に重要な役割を果たしている・・・のだとか。
(これって・・・本能的に私がS君を求めてるって事なの?)
その後も色々調べていると、いくつかの体験談が見つかりました。
『身体の相性が本当にいい人は、肌の触り心地も吸い付くようで、体臭も心地良い香りがするんです。そればかりでなく、唾液、口臭、愛液や精液も甘く気持ち良く感じる為、一度セックスをしてしまうと二度と離れられなくなります。最高の快感、本能には誰も逆らえないんです』
『キスが合わない人は基本ダメです。相性がいい人はキスが甘くてとろけそうになる。肌もフィットする感じで、ずっとくっついていたい、抱き合ってキスしているだけでイキそうになっちゃうんです』
俄かには信じられない内容でした。
私はそんな経験をした事が無かったからです。
(本当にそんな事があるの?)
旦那の事はもちろん愛していましたが、セックスでそんな感覚を覚えた事はありません。
(でもあのS君の甘い匂いは一体何なの?体験談とも一致するし、本当に相性はあるのかもしれない・・・)
結局、その日は悶々としながらベッドに入り、眠りにつきました。
それからというもの、私はS君の事が気になり始めていました。
近くにいると微かに感じる甘い匂い。
それはいつまで経っても変わらずでした。
仕事では相変わらずS君と出掛ける事も多く、甘い匂いも手伝って、自然と気持ちの面でも私はS君に惹かれていきました。
ひょっとしたらそれは“運命”だったのかもしれません。
誰しも本能には逆らえないのです。
<続く>