僕がハプニングバーに丸一年間通うことになった理由
2017/10/22
週2回のペースで丸一年、ハプニングバーに通ってみて、たくさんのことを体験した。幸せな日もあったし、そうでない日もあった。それでも通い続けたのは、初めの日が刺激的すぎたからだと思う。
まずはその日のことを体験談として書いておきたい。でも、ただのエロい話にはしたくない。これは実践的に学んだ、コミュニケーションのメソッドだ。
確か店に着いたのは夜の10時頃だった。人はまばらだったけれど、せっかくこういう場所に来たんだからコミュニケーションをとらなきゃと思って、積極的に話し掛けたのを覚えている。店のスタッフはみんないい人で、揃ってイケメンなんだけど、気さくに話し掛けてくれたので緊張もほぐれた。
スタッフに導かれるままに、あるカップルと一緒の席になった。男性の方は気の強い感じの、でも少し無理をして気の強さを演じているような人で、短髪で、彼女に対して何かと強気に発言していた。一方で女性の方は、「あなたなんかがこんな所に来てもいいんですか?」と聞きたくなるくらいに美しかった。肩まで伸びた髪が美しく、比較的細身で、おっぱいが小さいのがコンプレックスだと言っていた。むしろ手に収まりやすい素敵なサイズだと思った。それを伝えると、彼女はとても喜んでくれた。
「この人はそんなこと、絶対に言ってくれないよー!」
そう言って隣に座っていた彼氏の肩を叩いた。それを見て、なんだか二人でじゃれあいに来てるみたいだなと思った。
少し話がズレるけれど、その後も何度か通う中で、こういったカップルをたくさん見た。特に女性の方が、男性にいちゃつくような素振りをしきりに見せるのだ。こういった場合、照れ隠しなのか、こっちを避けたいと思っているのか、どちらなのかを見極める必要がある。そのためには男性の方と会話をしてみるのが一番だ。照れ隠しだった場合、女性は話に入ってくるし、避けたいと思われていたら無視される。女性に避けられていると感じたら、すっと身を引くのが一番だ。お互いに無駄な時間を使う必要はないのだから。
男の側に寝取られ趣味があるということがわかったのは、30分ほど話した後のことだった。
「わかりますよ、その気持ち!」と話が盛り上がった。
どんな場所でもコミュニケーションの基本は共感なのだ。僕は、普段はなかなか発揮できないそのメソッドを、なぜだろう十分に生かせていた。ここが現実と離れた地下だからだろうか。目の前にいる相手が、もう二度と会うことのない相手だったからだろうか。今になって思い返すと、旅の恥はかき捨てという言葉が、そのときの心境に一番フィットするように思う。何か失敗したとして、恥をかいたとして、失うものは限りなくゼロに近い、という事実が自分を大胆にさせていた。本当はこういう場所じゃなくてもそういうもんだけど、なかなか割り切れるものではない。
男性と話しながら僕は『寝取られっていうのは相手を愛しているからこそ生まれてくる感情なんだ』ということを、特に強く強調する話運びをした。
「こんなに可愛い彼女だと、寝取られたら堪らない気持ちになるでしょうね」
そう言って男性に話し掛けながら女性を持ち上げると「えー、可愛いだなんてお世辞言わなくてもいいよー」と女性の方も乗ってきた。笑顔がとても素敵だった。その口元を見ながらフェラチオされるところを想像して、僕は少し勃起していた。
「嘘じゃないですよ」
そう言って真っ直ぐに目を見ながら、彼氏に見えないように手に触れる。彼女は拒否しなかった。だから僕は彼女の手を取って、ズボン越しに自分のペニスの上に持ってきた。
「ほら、嘘じゃない。立ってるでしょ?」
そう言うと「ほんとだ」と、彼女は呟くように言うのだった。男はトイレに行くと言い残し、席を立った。きっと彼女を抱いてもらいたいと思っていて、そのために気を利かせたのだと思う。もしそうでないとしても、そう思い込もうと思った。
彼の了解は取れたのだから、あとは彼女を連れ込めればいい。彼がいない間、僕たちは見つめ合った。唇に触れ、少しだけ近づけ、そして離れた。キスをしたのは男が帰ってきてからのことだ。キス直前までの雰囲気を男がいない間に作っておき、男に見せつけるようにキスをした。正確に言うのなら、男が「やめろよ」と止めないことを女に見せつけるようにキスをしたのだ。
彼女と男の間には、明らかな主従関係が見て取れた。だからこそ自分は、女性が抱いているであろう、次のふたつの懸念を晴らさなければならないと思っていた。その懸念とは、『男のプライドが保てるか?』『男の許可が得られるか?』このふたつである。
ひとつ目は会話の中で解消できた。三人の会話における自分の立ち位置、順列を常に意識し続けるだけでよかった。男、自分、女の順になるよう、発言をコントロールするのだ。たとえば男に対して敬語を使い、女に対してフレンドリーに話す。
そしてふたつ目の懸念を晴らすのが、このキスだった。大切なのはゴールをどこに据えるかだ。人とコミュニケーションをとる時、目的をどこに置くのかはとても重要な決めになってくる。下心を出して『この女とセックスしよう』というゴールを設定する男は多い。でも本当のゴールはもっと手前にある。人によるところもあるけれど、ほとんどの場合、キスをすることができれば、その先は揺らがなくなる。キスが許されてセックスが拒否されることはほとんどない。でも、セックスを目的にするのと、キスを目的にするのでは、行動が大きく異なってくる。たとえばセックスの前には胸を触るかもしれない。でもキスの前に胸を触る必要はない。自分の好意を言葉を尽くして伝えたら、手を繋ぎ、指を絡ませ、肩を抱き寄せ、見つめ合う。その視線も、セックスを求めるそれと、キスを求めるそれは大きく異なる。女性は違いを敏感に感じとる。
この店は地下が特別なスペースになっている。そこに連れ込む=ヤレる、ということなのだが、ルールを知らなかった僕は少し戸惑った。トイレに立ったついでにスタッフにヒアリングしたりしながら、仕入れたばかりの情報を当たり前のように駆使するのは、幾分大変だった。こういったルールがいくつかの設定されているため、常連になるほど立ち回りやすくなるし、そもそもスタッフも常連にはよくしてくれる。女性も『常連だから安心』と思う傾向がある。ここもまたバーである以上、売り上げの8割を2割の顧客が稼ぎ出しているのであろう。
地下には三人で行った。マットレスが全面に敷かれた天井の低い空間だ。部屋が3つほどあり、それぞれの部屋を結ぶ通路のような場所からマジックミラーで中を覗くことができる。たぶん女性はマジックミラーの存在に気付いていなかったと思うし、気付かせないようにした。他人に見られる可能性があることに嫌悪感を覚える女性は多いし、そういった人のためにミラーの無い部屋も用意されている。
でも、今回はミラーがどうしても必要だった。天井が低いから必然的にみんな床に座ることになる。女性の服をゆっくりと脱がしていくと、「え、いきなり?」と少し驚いた様子だったが、「ダメ?」と訊くと、「ダメじゃ、ないけど」と言って顔を伏せる。ゆっくりと上から服を脱がす。はじめは恥ずかしそうにしていたが、次第に熱っぽい視線を見せるようになる。小ぶりなおっぱいが露わになると、恥ずかしそうに「ごめんね、小さくて」と言う。
「ううん、これくらいが一番好き」
真っ直ぐに目を見て言うと何かのスイッチが入ったのか、一層熱っぽい視線で唇を近づけてくる。横から男性が言う。
「おい、お前も脱がしてやれよ」
女性が僕の服に手を掛ける。その間、僕は女性の乳首を優しく愛撫する。
「舐めてやれよ」
男がそう言い、彼女はそれに従って顔を僕のペニスに近づけるのだった。シャワーは用意されていて、ここに来る前に入ってもよかったのだが・・・。
「シャワー、どうする?」
僕が尋ねた時、彼女が「気にする?」と逆に尋ねてきたので、「ううん、全然」と受け答えをして、直接ここに来てしまった。たぶんお互いに、この高ぶった雰囲気を消してしまいたくなかったのだ。
彼女はしばらく顔を近づけていた。匂いを嗅がれているのだろうか。ペロリとひと舐めした直後、ねっとりと濃厚なフェラチオが始まった。玉を舐め、裏筋を舌が這い、全体が口の中に包まれる。その間、僕はずっと女性の頭を撫でていた。何より重要なのは“優しさ”である。なぜなら相手は今日会ったばかりなのだ。女性にとって一番恐怖なのは、乱暴にされることだろう。だから、とにかく優しさをアピールする。手マンの前には「触ってもいい?」と聞き、「痛かったら言ってね」という一言も忘れない。たとえ乱暴に犯されるのが好きな子がいても、挿入までは優しくしておいた方がいい。相手のMっ気を掻き立てたいとしても、言葉だけにしておいた方がいい。行動は、あくまでジェントルに。それを僕は海外から来た友達に教えられ、ここで実践した。効果はテキメンだった。
「入れたいんだろ?」
男が言う。
「・・・うん」
彼女が言うと・・・。
「じゃあ、自分でお願いしな」
男が返す。
「えー・・・」
彼女はそう言うと、僕の方に向かって言った。
「お願い、入れて?」
「何を?」
僕が訊くと、「いじわるー」と言いながら両腕を僕の首に回し、耳元で囁く。
「ねえ、お願いだから」「お願いだから、何?」
「入れて欲しいの」「何を?」
「だからぁ・・・」
彼女は左腕を下ろし、僕のペニスを優しく握ると、耳元で言う。
「・・・これ」
堪らずキスをする。もう僕らは二人だけの世界にいて、男はたぶん疎外感を感じていただろう。そして、そのきっかけを作ったのは男である。だからこそ、…