彼女に二股された大学時代の思い出
2017/07/19
大学時代の思い出なんですが、ちょっと書かせてもらいます。
大学入学して間もなく入ったサークルで、加奈という女の子と出会いました。
そのサークルは大層な名前のわりに、実は単なる飲みサークルで、俺は最初の頃ちょっと戸惑いました。
一方、加奈も友達に誘われるがまま、よく分からず入ったとの事。
おとなしい性格の彼女は、軽いノリや騒がしいのが苦手みたいで、周りの雰囲気についていけてない様子。
お互いそういうところの波長が合ったのか、また俺と加奈とはサークル内で唯一、学部が同じだったのもあり、いつしかサークルでも授業でもよく一緒にいるようになりました。
ややもするとサークルにも馴染んできました。
加奈は素朴で可愛くて、一緒にいると何か落ち着くんです。
俺はそのうち加奈の事が好きになりました。
夏休み前に俺は意を決して彼女に告白。
実は俺はそれまで女の子と付き合った事なかったし、告白なんかして、もしフラれちゃったら、もう友達でもいられなくなると恐れもした。
当時の俺にしては相当の覚悟をもって臨んだわけだが、拍子抜けするほどアッサリとOKをもらい付き合う事になった。
加奈も俺の事が前から好きだったと言ってくれ、本当に嬉しかった。
大学、特にサークルでは多くの友人が出来ました。
その中でも中井という男とは行動をよく共にした。
学部は違うが学年は同じ1年生。
でも彼は浪人しているので年齢は1つ上。
社交的な面白い奴で、サークルでもすぐに中心的存在になった。
格好も良く、女関係も派手な遊び人でもあったが、彼だったらモテるのも許せるなって思わせるほどイイ奴だった。
すべてが俺とは全く対照的ながら、ウマが合った。
毎日が楽しかった。
そんな中ただ俺の悩みの種というか、ちょっと気にかかっていたのが、加奈と中井の仲が悪かった事です。
と言うか、単に加奈が一方的に中井を嫌っていたのだが。
ちゃらちゃらした性格が嫌いな彼女。
決して中井は軽いだけの奴ではなかったのだが、加奈の目にはそうとしか見えなかったみたい。
またサークル内でも平気で抱いた女の話をする中井が、彼女は生理的に受け付けなかったようだ。
中井もそういった加奈の態度を感じとり、加奈を苦手としていたようだ。
二人の間で板ばさみってほどでもないが、中井が来れば加奈はいなくなるし、加奈が来ると中井は遠慮がちになる。
俺としては自分の彼女と一番親しい友達と、やっぱり仲良くしてもらいたい。
俺は俺なりに二人に気を遣い、仲を取り持つような事をいろいろした。
それが徐々に功を奏したのか、次第に二人は打ち解けてきた。
加奈が中井について抱いていた感情は、偏見と誤解からきたものがほとんどだし、中井は彼女が思っているような悪い奴じゃない。
その辺りが加奈にも段々と分かってきたんだろう。
中井はもともと加奈に悪意なんか抱いてなかったんだし。
2年になる頃にはかつての険悪なムードが嘘のように仲良くなり、3人で遊びに行くこともたびたび。
中井は大学の近くで一人暮らししていたのだが、俺と加奈の二人で泊まりに行ったりもした。
ただ中井の女癖については、加奈は許せなかったようで、たまに本気で激論を交わしたりしていた。
まあ、それは仕方ないわな。
俺のそこまでの大学生活は、良い人間関係に囲まれていた。
あれは2年の夏休みが終わりに差し掛かった頃、俺が家でまったりとしていると、中井から電話がかかってきた。
中井、「大学の近くの飲み屋にいるから来てくれ」と。
うちから大学まで一時間くらいかかるし、しかももうかなり遅い時間。
面倒なので俺は断った。
中井のこういう突然の誘いはよくある事で、断ればいつもは無理強いしてこない。
しかし、この日は珍しくしつこかった。
話したい事があるみたいだし、ついに俺も根負けして嫌々ながら行く事に。
飲み屋に着いた時にはすでに夜の11時をまわっていた。
中井とはカウンターで飲んだのだが、話があると言ってたくせに、世間話ばかり。
でもまあ、話なんて呼び出す口実だろうと、余り深くは考えなかったけど。
そして閉店時間が近づいてきた時、ふいに中井が言った。
「あのさあ。俺と加奈ちゃん、付き合う事にしたから」
「は?」
俺はこいつは何を言い出すんだと思った。
加奈は俺の彼女じゃないか。
俺と加奈がどれだけ好き合ってるか、知らないお前じゃあるまい。
例えお前が加奈のこと好きになったとしても、加奈はお前になびいたりしないよ、と俺は口にはしなかったが、思った。
中井はこう続けた。
「実は今、加奈ちゃん、俺の部屋にいるんだ」
そして中井は間髪いれずに言う。
「お前に悪いと思ったが、実は加奈とは一ヶ月ほど前から関係があるんだ」
まさか!それを聞いた時は本当にビックリした。
一ヶ月前から関係って・・・。
俺は加奈とはその間にも何度か会った。
しかしそんなの俺は全く気付かなかった。
しかも一昨日、俺は加奈とデートしたばかりだ。
もうその時には中井に抱かれた後だったのか。
そして中井と付き合う決心をした後だったとは。
全く気付かなかった。
いや、思い返しても加奈におかしなそぶりはなかった。
一ヶ月前、中井がお盆に実家の九州に帰省する前日に、加奈を誘って二人でこの飲み屋に来たらしい。
何故かその時、俺は呼ばれていない。
いつからか二人はお互い口に出さないものの、密かに惹かれ合っていたようだ。
二人には下地が出来上がっていたのだろう。
そしてその日の飲みで二人は、その気持ちを口に出してお互い確認し合い、結局その後、中井の部屋で朝まで何度も愛し合ったそうな。
中井はその朝、九州に帰省した。
加奈は空港まで見送りに行ったとさ。
中井が九州に行って数日後、何と加奈が中井を追って彼の住んでる町まで来たらしい。
中井の帰省なんてたかだか2週間程度だろうに、大袈裟な事だ。
しかし中井は嬉しかったのだろう。
中井は連日、加奈をいろいろと案内し、地元の友達に彼女を紹介してまわった。
加奈は最初は自分で予約したホテルに宿泊していたのだが、最後は中井の実家に泊めてもらったらしい。
つまり中井は親にも恋人として紹介したと言う事だろうか。
そして二人でこっちに戻ってきた。
それから何週間か過ぎ、今日に至る、と。
飲み屋でここまで詳しく中井が俺に話してくれたワケでない。
俺が後でいろんなところから聞いた話を、まとめてみた。
ちなみにその加奈の九州行きは、俺はしばらく祖父母の田舎に行くと聞かされていたんだが・・・。
何にせよ、知らぬは俺ばかり、もはや二人にとっての障害は俺だけになっていたようだ。
話を中井と俺の飲み屋に戻す。
中井と加奈はもう心は定まっていたんだろうけど、俺にしてみれば突然の事で心の準備も出来てない。混乱した。
中井は凍っている俺の横でしきりに、自分がいかに加奈が好きかとか、俺に対する罪悪感がどうとか、もっと早く言うべきだったが言い出せなかった、などなど、何かごちゃごちゃ言っていた。
俺は「うるさい」とか「ふざけるな」とか、そんな答えしか返せなかった。
「分かった。加奈も呼ぼう。三人で話し合おう」と、中井。
今までは「加奈ちゃん」って呼んでたのに、気付けば「加奈」って呼び捨てだ。
しかし一体何を話し合うと言うのだろうか。
三人で話し合いと言うより、お前らが決めた事を俺に認めさせたいってだけだろう。
中井は飲み屋から部屋で待機している加奈に電話した。
そして近くの公園で三人で会う事となった。
飲み屋から公園まで数分、俺も中井もずっと無言だった。
俺の中ではいろんな感情が渦巻いていたよ。
中井に抱かれる加奈を想像してへこんだ。
二人して俺を欺きやがって。
こんな事なら加奈が中井を嫌ったままにしておけばよかった。
公園に着いた。
加奈はすでに来ていた。
知ってしまうと不思議なもので、一昨日会った加奈とは別人に見えた。
加奈は泣いていた。
そしてずっと俺に謝っていた。
「ゴメンね・・・あなたの事、嫌いになったワケじゃないの・・・でも・・・」
中井は加奈の横で沈痛な顔をして黙っていた。
怒りやら、悲しみやら、惨めさやらで、ホント狂いそうな気分だった。
嫌われて捨てられた方がどれだけマシか。
加奈は俺も中井も好きで、それでも中井を選んだって事か。
中井より俺が劣っている事は自覚しているが、残酷な選択だ。
俺と別れて中井と付き合うなら、嫌だけど、仕方ない。
でも俺と付き合いながら中井ともセックスして、その後で俺と別れるなんてフェアじゃないだろ、そんなの。
加奈はそれ以上は何も言わず、ただただ泣いて謝るばかり。
中井無言。
10分くらいずっとそんな調子だった。
さすがに俺も業を煮やし、「分かったから、もう行けよ」結局、そう言わざるをえなかった。
「話し合い」は終わりだ。
中井は俺にもう終電ないのを気遣ってきたが、放っておいてくれと二人を追い払った。
「スマン。・・・じゃあ、行くわ」と言って加奈と一緒に行ってしまった。
俺は二人が公園を出て行く後ろ姿を見ていたら、心が冷めていくのを感じた。
しばらく公園で一人ぼんやりした後、歩いて帰りました。
家は遠いので途中で歩きは断念して、適当な駅のベンチで始発を待ちました。
夏休みが終わって久しぶりにサークルの部室に顔を出した。
ああいう事があったせいで、ホントは余り人前に出たくなかったんだけど、まあ…