傷つける指
2017/01/01
朝、学校に出かける私の歩調は軽快だった。
ざわめいた教室に入れば、友達の笑顔に囲まれる…。
さて、中学校は公立 それとも私立
先生は、両親達ともよく話し合って…と念を押す。
「あっ、あなたは、よくお父さんと話し合ってね…。」
先生は、家庭の事情を察する。
私の席、教室の片隅。
背の高い掃除道具があって、今にも倒れそうな程。
ここで、私は家に戻ってからの事を考えてる。
中学校の事、そして…。
机に広げられた教科書、真っ白なノート。
私は、ノートの上に左手を広げた。
ポケットに忍ばせていたカッターを取り出す…。
センチ程銀の刃をスライドさせて、薬指に当てた。
「痛っ…」
でも、声を殺す。
教室の片隅、誰にも気づかれない…。
スポイトを押したみたいに、赤い血がノートにポタポタ落ちている。
普通だったら驚くのに、もう私は何とも思わない…。
母の記憶。
実は、私が覚えているのは、顔よりも指。
母の荒れた指先。
水仕事をし過ぎたのだろうか…。
母は、よく私を膝の上に乗せてくれた。
冬の寒い頃、よく私の腿を摩ってくれた…。
「寒くない」
「うん、寒くないよ…。」
母の荒れた手が、ちょっとトゲトゲして痛かった。
でも、母の優しさが好きだった。
学校が終わる。
私の足取りは重い…。
母を亡くしてから、父は変わった。
誰もが格好良いと誉めてくれた父が、まさかと思う程に…。
夜、父が仕事から戻る。
「お帰りなさい…。」
父の返事はない。
じっと見つめるような父の眼が、私を刺すみたいに…。
「はい…。」
三つ編みの髪を揺らすようにして頷く私。
最初は信じられない事だった。いえ、信じたくない事だった…。
でも、もう私は、父と二人きりの生活の中で、慣れる事にした。
父は、暴力などふるわない…。
全裸の私。
父の寝室に入り、敷かれた布団の上をよろめく様に這い進む。
父のモノは、私に触れられる前から、すでに張り詰めていた。
私は、父のあぐらをかいた毛脛に凭れるように…。
触れた父のモノ、とても熱い…。
父のゴツゴツした私の髪を撫でる。
それは、父から私への言葉のない合図。
カッターで切った傷が、私の指先に数箇所。
私の指で握られた父のモノは硬くなり、血管を浮き上がらせて激しく脈打つ。
父のにおいが漂う。
酸っぱいような、苦味のあるような…私の大嫌いなにおい。
ダンディだった父が、浮浪者みたいになってしまった…。
愛していた母を失った父を思うと、可哀想で仕方ない。
父のモノから放たれるにおい…。
私は、息を止めるように、鼻の感覚を殺すように…。
父のモノに口付ける。
急いで、舌を這わせる。
私は、唾液で包むようにしながら、脈打つモノを隅々まで舐めてゆく。
父のにおいが薄れるし、父も快感に酔ってくれる。
一年もこうしていると、体が覚えてしまう…。
それは、本当に悲しい事で、おぞましい事。
父のモノを咥える自分が嫌いだ…。
本当は、泣きたい。
泣いて、誰かに抱きつきたい。
いやだぁ…って、泣きたいのに…。
涙が出ない。
どうしてだろう
父の人形になってしまった私。
父の太股を摩りながら、私は父のモノを、まるでキャンディーのように…。
やがて、父の手のひらが、私の頭を押し下げる。
「うっ…。」
父の湿った声。
私は、喉の奥を突かれて、死に物狂いで掠れ声を漏らす。
それは、悲しい笛の音みたいに…。
髪の毛ごと強く掴んだ私の頭を、父は激しく上下する。
三つ編みの根元からおくれ毛が何本か跳ね出す。
私の汗で濡れた頬や額にくっついて…。
「喜代子…」
父の咽び泣くような声。
それを聴くと、私は泣きそうになる…。
無感情のまま、父のモノをしゃぶる私なのに…。
だって、父は…母の名前を呼び、私の頭を掴んでいる。
私の小さな背中やお尻を見下ろして、快感に酔って、母の名を呼ぶ…。
お父さん…私、お母さんに似ているの
私、お母さんみたいに優しくなれないよ…。
父は、私を母に見立てている。
父は、私を母であると思い込もうとしている…。
だって、父は私を抱く時、私を見ない。
私と眼を合わせない。
父が絶頂に達した。
父のモノが口の中でピクンとひきつけを起こし、私の口内は父の精液で満ちる。
うっ…、息が出来ない。
ネットリした生温かい汁が鼻の中にまで逆流する。
涙が滲む。
胸の奥に痛みが走ったせい…。
父は、私のもっともっと深い所に流し込もうとするかのように、私の頭を押す。
いよいよ息が出来ない…。
咳き込む事さえかなわず、意識が薄れる。
こういう時、どうすればいいか…。
そう、父の波打つような精液を飲み干せばいい。
私は、喉を鳴らして父の射精に応える…。
最初に飲まされた時、父の苦いオシッコだと思った。
でも、やがて、それを「卵」だと知った。
数え切れない程の卵を…父の体の中から出た卵を、私は飲んだ…。
本当は、私の口ではなくて、私のアソコで飲む事も…知っている。
ああ…。
最後に父のモノを綺麗に舐めると、私はゆっくりと這って襖へ向かう…。
父は、まるで何もなかったかのように…、シミだらけの背中を向けている。
おやすみなさい…の言葉もないまま、私は自分の部屋へ…。
ペタンペタンと素足が廊下に音を立てる。
ふと口ずさんでみる…。
母の唄ってくれた子守唄。
父の精液と私の唾液で光る…私の唇から漏れる小さな音色。
この声、お母さんに似ていない…。