それでも妻と別れたくない 1
2023/08/28
41歳の自営業です。結婚17年目で一つ年下40歳の妻がいます。
若い時は抜群のプロポーションで外を歩けば振り返る男が多数いる事が鼻高々でした。
笑顔が柔らかくいつもニコニコしているのがとても愛らしい妻です。
今では出産も経験し、少しぽっちゃりとなりましたが、それでも私の中では最高の女だと自負しています。
見た目は小島聖さんに雰囲気が似ていると思っています。
私達夫婦は私が以前務めていた職場で知り合い、仕事仲間として仲を深めて行きました。
そこから徐々にプライベートでも仲良くなり自然と男女の関係に至りました。
付き合ってからプロポーズまで時間は掛かりませんでした。
その頃、独立しようと考えており、それも含めて自分について来てくれると返事を貰えた時には人生最高に幸せだと思える瞬間でした。
脱サラして自営業で食べれるようになるまで妻には迷惑と心配を掛けっぱなしでたくさん苦労を掛けてきました。
それでも愛想を尽かさずにいつもニコニコして私について来てくれた妻には本当に感謝してもしきれません。
これまで子宝にも恵まれ、四苦八苦しながら仕事に家庭に奮起して仲良く乗り切ってきました。
やがて子どもも大きくなり手がかからなくなる頃には2人の時間も増えて昔を取り戻すかのように愛し合う頻度も増し、今までよりさらに生活にハリが出て来ていました。
まさに充実した日々を過ごしておりました。
そんな折に妻が長らく遠のいていた社会にもう一度復帰したいと言いだしました。
なんでもアジアの雑貨を扱う友人から一緒に仕事してもらえないかと誘われているとの事でした。
自営の方は軌道に乗っているとはいえ、経理の方は全て妻に任せていました。
そこがネックだったのですが、経理の事も完璧にこなす自信があるとの妻の説得に根負けし、外に働きに出るのを許可しました。
始めは毎日が新鮮だったようで妻はいつにも増してキラキラ輝いてニコニコと毎日を送っていました。
しかし、やはりというか物事には波が当然存在する訳で、次第に疲れた様子を見せ始めるようになりました。
笑顔を絶やさないようにしているのは分かるのですが、疲れて晩御飯を手抜きするようになり、家事も疎かになっていきました。
最初は心配で協力してあげていましたが、徐々に私自身も余裕が無くなっていき夜の営みを拒まれる頃にはイライラが募る一方になっていました。
このままではいけないと判断し少し休んだらどうだと妻に提案したのですが仕事が面白いからどうしても続けたいと、家事もしっかりと勤めるから続けさせてくれと言うばかりでした。
そこから暫くはまた以前の様にニコニコと充実した顔つきの妻を眺めていたのですが、今度は徐々に帰宅が遅くなって行くのでした。
仕入れのプランニングや棚卸しだの店舗の模様替えだの理由をつけては深夜に帰宅する様になっていきました。
それでも家事はしっかりとこなすものですから、私も口出ししない様に努めました。ただ、2人の時間が減り営みの機会が激減したことに関して悶々とする毎日でした。
ある時、妻が本当に久しぶりに早く帰宅する事があり、妻が入浴していたのを焦って待っていた私は一緒に入ろうとお風呂場に乱入しました。
その時妻は物凄く驚いた表情を見せたと同時に身体を隠し、私に対して金切り声で出て行って!と叫びました。
私は動揺して謝りながらすぐにお風呂場を出たのですが、妻の身体の変化に咄嗟の事でも気付きました。
胸が以前にも増してハリと膨らみが異様に感じられ、それだけでなくなんと陰毛が綺麗さっぱり剃り落とされていました。
どういうことだ、なんだあれはと冷静さを失いそうになりましたが正直な所、自分が見て見ぬ振りをしていただけで、妻に何が起きているのかすぐに察しがつきました。
妻がまだお風呂場にいるのを確認してから急いで妻の携帯電話を探りました。
まずメールを開いた段階で同じ相手とのメールがズラリと並んでいるのが一目で分かりました。
何通か目を通しただけでも相手が男だと分かりました。妻がお風呂から上がる前にメール全てを急いでコピーしました。
なんとか妻がお風呂から上がるまでにメールと画像フォルダのコピーを終える事が出来ました。
風呂場から上がった妻は何か言いたそうにしていましたが、私が先に風呂場に乱入した事を謝った事で妻は少し安心したのか逆に私の乱入に対してプンプンしていました。
私はこの時、妻の体の変化について、そして男とのメールのやりとりについて問いただしたい気持ちでいっぱいでしたが、何とか胸にしまい込んで晩御飯を楽しく過ごしているように見せる努力をしました。
ちなみにその夜も次の日が早いという理由で営みを拒まれました。
翌日、私はいつもより早めに家を出て車の中でコピーしたメールや画像を確認しました。
ちょうど働き始めた頃から徐々に色々な人たちとのメールが増えていき、次第に特定の男性とのやりとりで占められていました。
相手の男は恐らく仕事の取引先でしょうか、始めの頃は業務的なやりとりのメールばかりでした。
そして徐々に食事の誘いのメールやお互いの近況を話し合うメールが増えていきました。
次々にメールを開いてスクロールを進めて行く内に1番見たくないメールが目に飛び込みました。
”あなたと出会えて本当に良かった。ひとつになれて本当に幸せな気持ちでいっぱいです。”
そう綴られた妻のメールを発見した時に私は目の前が真っ暗になりました。
今まで本当に大切に宝の様に大事にして来た最愛の妻がなぜ、どうしてこのような事になったのか、私の事を何と思っているのか。
なぜなぜなぜと妻に対する疑念が次々に浮かんできました。
”出会う順番が違っていたら・・・”
”あなたの事が本当に愛しいです・・・”
挙句の果てには、私の事を”つまらない人”だとも綴っていました。
こんな屈辱を受けた事は初めてです。こんな裏切りがあっていいのでしょうか。私が何を悪いことをしたというのか。
悔しさと怒りで涙が出てきてしまいました。
結局その日は仕事する気にもなれませんでしたが、客商売なので何とか気持ちを切り替える努力をしました。
まぁ、仕事になりませんでしたが・・・。
ちなみに画像フォルダには家族の写真しかありませんでした。
この頃が本当に幸せな日々だったなと写真を見てまた涙が溢れてきました。
それからというもの、私は妻の携帯電話を監視するのが日課になりました。
平静を装って妻と接するのがこれ程辛いとは思いませんでした。
後日にここ数日の売り上げが少ないと妻から心配されましたが、お前のせいだよと喉元まで出てくる思いで抑えるのがやっとでした。
監視する内に妻の帰宅が遅くなるパターンを発見しました。
私は早速、興信所に妻の事を調べてもらうように依頼しました。
妻が男と会う日が事前にわかっていた事もあり、興信所の結果が出るまでに時間は掛かりませんでした。
結果は予想通り真っ黒でした。
妻の職場付近で待ち合わせている写真、仲良さそうにホテルに入る所と出てくる所の写真を見て私は震えが止まりませんでした。
興信所の方に頂いたペットボトルの水を盛大に零して我に返りました。相手の素姓もわかりました。
やはり妻の職場の取引先だったようです。年は38歳で独身、役職にも就いているそうです。
写真を見る限り、たいして男前という感じには見えませんが、背が高く体つきがガッシリしていて爽やかな印象を感じました。
どことなくサッカー元日本代表の中澤佑二に雰囲気が似ている気がします。
写真を眺めているとこの男に対してふつふつと憎しみと嫉妬の感情が込み上げてきました。
私は決めています。
何があろうと妻とは離婚するつもりはありません。
一度愛した女です。最後まで妻の面倒を見るのが私の責任です。
今はよそ見をしているだけです。
証拠集めをしたのは、離婚する為ではありません。この憎たらしい男に対して証拠を突きつけて徹底的にやり込めるためです。
妻には何も言うつもりはありません。妻の知らない所でただこの一件を自然消滅させて最初から何も起きなかったことにするのが私の努めだと思っています。
興信所の結果と共に貰った男の情報には職場や自宅住所、電話番号まで記載されていました。
さすが探偵と言った所でしょう。
私は覚悟を決めて中澤に電話を掛けました。
名前を名乗り、妻の名を出した時点で中澤は観念したように謝罪の言葉を述べ始めました。
電話越しでいくら謝られても解決はしない。会って話をしましょうと中澤に言いました。
くれぐれも妻には私と会うことを言わないように念を押しました。
約束が守られない場合は職場に伺っても構わないと言うと、慌てた感じで分かりましたと返事をして来ました。
中澤との電話が終わって暫くしてから妻からメールが届きました。
今日は残業が無くなったから早く帰れるそうです。
恐らく中澤が妻との約束をキャンセルしたからでしょう。
私は中澤との待ち合わせ場所に急ぎました。
私が到着して暫く待っているとキョロキョロしながら近づいてくる中澤を見つけました。
中澤は終始申し訳なさそうな態度で何度も謝ってきました。そして私に札束の入った封筒を手渡してきました。
私はきっぱりと言いました。
お金はいらない。受け取るつもりはない。今後一切妻に関わるなと。
妻はこの事を何も知らない。私が知ってしまった事に妻が気づいてしまってはうまくいく物もそうではなくなってしまう。
今回の一件は妻にとっても一種の火遊びみたいなものだ。妻の知らない内に鎮火させる必要があるんだと。
お金なんていらないから、今後妻に絶対に近づくなと言ってやりました。
中澤は頭を深く下げて申し訳ありませんでしたと答えました。
これでいいんです。私自身にモヤモヤは残りますが、今回の事がフェードアウトしてくれればまた以前のようなニコニコ笑顔の妻に戻ってくるとそう信じています。
<続く>