京都の同級生とその彼氏達、およびその友達と俺6

2021/08/14

付き合い始めた喜びよりも、これからの不安の方が大きいのは普通なのだろうか?俺はなにしろ女性ときちんと付き合ったことがないので良くわからず、(まあきちんとじゃなくても付き合ったことなどない訳だが)色々考えてると明け方まで中々眠れなかった。
2時間ほどで目が覚めてしまい、のどが渇いたので水を飲もうと身体を起こした。
ナルミさんは珍しくぐっすり寝ている。
彼女は彼女で今まで不安だったのだろうか。
そりゃそうだな。
ここ半年で2回も彼氏と別れたのに、俺はぐずぐずはっきりしないままだったのだから。
俺がそろそろとベッドを出ようとすると、ナルミさんは目を覚ましてしまった。
「ん・・・もう9時なんだ。おなかすいた?何かつくるね」ナルミさんはベッドの下に脱ぎっぱなしになっている、機能着ていた俺のTシャツを取り上げて着ようとした。
俺はそれをとめ、ナルミさんの腕を掴んでキスをして、たまにはゆっくりゴロゴロしよう、後で何か一緒に買いに行こうよ、といい後ろから抱きついて、彼女を布団の中に戻した。
「昨日のはなし・・・冗談とか言わないよね」俺が付けたテレビの画面を眺めながら、ナルミさんは言った。
「冗談のほうがいい?」
「ううん・・」
「信用ないのかなあ。もう1回言おうか?俺の彼女のナルミさん?」彼女は横になったままこちらを向き、ううん、大丈夫、といい、口元まで布団にもぐりこみ、今日は敬語じゃないんだね、と目だけで笑った。
「何でも形から入るタイプなもんで。敬語のままがよろしかったですか?」と俺が笑うと、ナルミさんも笑って首を横に振った。
ナルミさんを後ろから抱きながら、ベッドに入ったままぼんやりテレビを見ていた。
ハリさんが、アメリカのアイスホッケーの珍プレーに喝を喰らわせていた。
親分のフォローを聞いたあと、もそもそザッピングをしていると、ベテランの夫婦芸人が台湾だか香港だかで大騒ぎをしている番組が映った。
お世辞にも綺麗とはいいかねる女芸人が、チャイナドレスを試着して、ポーズを取りはしゃいでいた。
「いいなあ・・」ナルミさんがつぶやいた。
「中国行きたいの?」
「え?ううん、チャイナドレスかわいいなあ、と思って」高校の修学旅行で長崎に行った時、ナルミさんのグループは男子と一緒に行動していたので、チャイナドレスで記念撮影をする写真館に寄れず、後で他の班の写真を見てとても羨ましかったらしい。
俺はふうん、と言ったが、ふと不思議に思って聞いてみた。
「あれ?女子高じゃなかったっけ?」
「そうだよ」
「なんで男子が?」
「えっとね・・お昼ご飯を食べてる時にね、たまたま一緒になった東京の航行の人達と仲良くなって、午後は一緒にまわった、、ような気がする。」へえ・・。
俺は信州のスキー合宿で、男同士ドロンパの雪だるまをつくって喜んでいた自分の修学旅行を思いだした。
「着てみる?チャイナドレス」え?今から?神戸とかに行くの?とナルミさんは少し驚いて、いいよいいよ、昔の話だし、あの頃より太ってるから恥ずかしいし、と言った。
「いや、俺が見たい。今すぐ見たい。受付の格好のナルミさんと同じくらい、チャイナドレスのナルミさんは見てみたい」
「受付の制服好きなの・」えっと、それはまた別の話だね、と俺は言い、携帯の電話帳を調べた。
俺は目的の番号を探し出し、電話をかけた。
ナルミさんは不思議そうな顔で見ている。
何回もコール音が続いた後、眠そうだが懐かしい声が聞こえた。
「ハダか?森や」
「・・・お前アホか・・今何時や思っとんねん」
「もう九時過ぎじゃ」
「まだっていうんやアホ。俺はお前みたいな企業戦士ガ○ダムちゃうぞ」
「20世紀のボケはやめてくれ」
「まだ20世紀じゃ、お前は辻○成か?冷静と情熱のあいだには、黒くて大きな川があるんか?」そんなわかりにくいツッコミはええから、と俺は院時代から何のギャップもなく会話に入れる自分を不思議に思いながら、お前今どこや?家か?研究室か?外か?、と聞いた。
家や、おとんもおかんもおらへんから留守番や、とまだ眠そうな声で言った。
「そりゃちょうどよかった。今からお前の家まで行くからまっとけ。一時間ほどでつく」は?とハダは言ったが、俺は無視して電話を切った。
状況のつかめないままのナルミさんと家を出て、近くのコインパーキングにとめてある彼女の車に乗り込み、京都の街を東西に横切りハダの家に向かった。
「友達?服屋さんなの?」
「いや、服屋というわけじゃ、、ここ右だったよな、あ、あそこあそこ」ちょうどハダがだるそうにシャッターを開けているところだった。
荷台に「温故知新」と大きく書かれた、ハダの家のトラックの横に車を止め、俺とナルミさんはハダに近づいた。
就職してから始めて会うハダは、秋なのに短パン、野茂のTシャツにダイエーホークスのスタジャンを着ていた。
「おう、、なんやねん急に・・」とハダは言いかけて、ナルミさんに気付き、こちらのかたは?とひっくり返り気味の声で聞いた。
「俺の彼女や。I本ナルミさん」はじめまして、とナルミさんは頭を下げた。
「お前の何やって?」
「彼女や」
「誰の?」
「俺の」
「お前の何?」お・れ・の・か・の・じょ、と俺はゆっくり言うと、店に入った。
何十・いや何百もの色とりどりのチャイナドレスが並んでいる中を、ナルミさんは嬉しそうに一着一着手に取りながら真剣に選んでいた。
ハダは丸椅子にすわり、タバコを咥えたまま虚空を漂う煙を見つめている。
「すまんなハダ。助かったわ」ええよべつに・・とつぶやき、宇宙の真理を追求している俺の生き方は間違ってたんか・・と独り言を言った。
薄い黄色をベースに、色々な花が刺繍してある半袖のチャイナドレスを選んだ彼女が、これ凄く可愛いんですけど、着てみても良いですか?とハダに聞いた。
え?え?あ、もちろん・・。
この奥の部屋で、、と言いかけたハダを制して、じゃあ持って帰ってうちで着よう、邪魔したなハダといい、俺は勝手に、近くにあった伊勢丹の紙袋にドレスを入れた。
「え?でも、それシルクだよ。お花も金糸とかだし全部手縫いだい、すごく高いよ」ナルミさんは戸惑ったが、いいよいいよ、俺だけが見る、といい、チャイアンドレス部屋を出て、ごちゃごちゃしたわけのわからないものが転がっている店を抜け、車に乗り込んだ。
出ようとすると、ハダが車に近づき、俺に錠剤の入った小さい小瓶を渡すと、今度ゆっくり説明してもらうからな、とりあえずお祝いや、といった。
「なんやこれ?毒殺でもする気か?うらやましいのはよくわかるが、こんなもんいらん」アホ、とハダは言うと、これはわがハダ家に伝わる4000年の歴史を持つ秘薬や。
始皇帝はこれを飲んで一万人の後宮の女どもを桃源郷へと導き、道鏡はこの薬の力で平安京を制したんや、俺の手に握らせた。
成美さんが、本当にありがとうございます、と頭を下げると、慌てて深々と頭を下げ、また遊びに来てください、ぜひぜひといった。
「森君・・。ハダさんの家は何屋さんなの?」
「なんだろ。質屋というか貿易商というか金貸しというか、俺もよく判らないんだ。大学の時にもチャイナドレスを借りたことがあってさ」ナルミさんはちらりと俺を見て、彼女に着せたの?と言った。
「いないもんに着せれないよ」
「じゃあなんで?」
「俺が着たんだ」え?なんで?とナルミさんは、知り合ってから一番驚いたような顔をした。
「院にいたとき、性欲とは何ぞやって議論になって、各自が一番好きな服装を着て鍋をしたら、俺たちは欲情するのか、ってことになったんだ。酔っ払ってたんだ。」ナルミさんは、わけがわからないという顔をしている。
そりゃそうだろう。
「それで誰かがチャイナドレスって言ったんだ。それだけの話し」
「・・・ふうん・・・。」車はマンションに着き、俺とナルミさんは部屋に入った。
「それで、、森君の一番好きな服は?」
「・・・・OLの制服・・・」ナルミさんは、よく判らないけど楽しそうだね、と笑った。
もういいよ、の声で俺はユニットバスを出た。
チャイナドレスの彼女は抜群に可愛かった、いや色っぽかった。
スリットから見える白い脚、ぴったり身体に密着した腰から胸までのライン。
半袖から覗く柔らかそうな腕。
「ちょっときつかった。ダイエットしようかな」と彼女は笑って、おしりの辺りを触った。
俺は我慢できずに抱きつき、体中をさわりまくったあとベッドに座らせ、横から胸を揉みながらキスをして、スリットから覗く脚を触った。
「しわになるよ・・・」俺は無視して触り続け、ジーパンをおろし、トランクスの上から俺のものを握らせた。
ユニットバスで飲んだハダの薬のせいか、いつもより熱くて硬いような気がした。
俺が頼むと、彼女は上半身をまげて、そのまま俺のモノを咥えてくれた。
俺は手を伸ばし、スリットの中に手を突っ込み脚を触り、そのまま指を下着の仲間でのばし、彼女の中に入れたりもした。
「森君・・・ん・・・」
「え・・?あ・・・なに?」彼女は口を離し、どうしたら森君一番きもちいいの?と聞いた。
「え、、あ、、っと、、今充分気持ちいい・・」彼女は俺のモノをもう一度咥え、ゆっくり頭を上下に動かした後、あのね、せっかく彼女になったんだから、恥ずかしいけど教えて欲しいんだ、よく判らないことばっかりだし、、と俺の目を見て言った。
そうですかねえ、、色々判ってるんじゃないでしょうか、、と俺は思ったが、ありがとう、じゃあ、と言い、足を大きく開いて、その間に入ってもらうようにナルミさんに伝えた。
この部分が気持ちいいかも、と俺は括れの部分を自分で触った。
彼女は舌をのばし、そこを丁寧に舐め始めた。
俺はうう、、とうめき、それでさ、そのままそっから先だけ口に入れたり、そこのひっかかりに唇が当たるようにうごかしてくれたら、、あ、、そう、、時々根本の方までいれ、、て、、ひょ、、そう、、もしよかったら手で持ってうごか、、うん、、そう、、ん、、、で、俺の顔も見、、うう、、俺の好き勝手な注文に、ナルミさんは忠実に、そしてそれ以上に上手に答えてくれた。
俺のモノを深々と咥え、そのまま下を伸ばして玉の部分を舐めてくれたときにはおもわず腰を浮かした。
そんなのは頼んでないよ、、、誰から教わったんだよ。
と俺は襲ってくる心地よさに呼吸を荒くしながらそう思った。
いつもよりかなり多いように思える量を、俺はナルミさんの口の中に出した。
まったく収まらない俺は、そのままベッドに横になり、上から乗ってくれるように頼んだ。
「これ着たまま?汚しちゃうよ・・」彼女はためらったが、もともとチャイナドレスは馬に乗りやすいようにスリットがあるんだから、とよく判らないことを俺はいい、下から彼女の柔らかい体を突き上げた。
最近酷使したせいだろうか、ベッドがギシギシと音を立てていた。
もう一人新人が入ってくる、という噂は前からあったのだが、こんな時期になんで?と俺は不思議に思っていた。
金曜日の朝、彼女はなぜか本社の人事部長と一緒に京都にやってきた。
クルスミユキです。
よろしくお願いします、とリスのような顔をした、かなり小柄の彼女は皆に挨拶した。
「クルスって、あいつバテレンか?」と先輩が言った。
その横にいるもう一人の先輩が、お前らあのこの母方の名字知らないのか?○○っていうんだよ、と言った。
創業者と同じ名字だった。
その日の午後、その新人は、また指導係に任命された先輩と、なぜか俺と一緒に取引先へ挨拶に回った。
俺の時と違うのは、人事部長も一緒についてきたことだ。
先輩は不機嫌そうな顔をしていた。
行く先々の会社で、社長や会長クラスの人が出てきて彼女に挨拶をした。
おじいさまはお元気ですか?あなたがまだ小学生の時お会いしましたよ、なんていう会話を聞くたび、先輩はどんどん不機嫌になっていくようだった。
その晩、さっそく歓迎会が開かれた。
俺は酒や料理の注文、会計、席の案内、などでくるくると忙しかった。
形どおりに支社長の言葉があり、彼女の自己紹介になった。
名前と経歴をいい、よろしくおねがいします、と無難に挨拶を終わらせ、座ろうとした彼女に、おい、それだけかよ、と誰かが言った。
先輩だった。
「森はそのまま裸で踊ったぞ。全然つまらなかったけど。歌のひとつでも歌えへんのか?」先輩は早くも目が据わっていた。
あいさつ回りの時から溜まっていた、特別扱いへの不満が爆発したらしかった。
皆一瞬静まったが、彼女は落ち着いた声で、さすがに裸踊りは出来ませんが、何か歌えば喜んでいただけますか?と先輩をしっかり見て言った。
まあまあ、、ととりなす副支社長に軽く手をあげ制すると、彼女は転がっているチャッカマンを両手に持ち、それでは、僭越ながら一曲、といい、野太い声で歌いだした。
「それで?」ベッドにもたれて横に座り、腰にまわした俺の右手を上からさすりながらナルミさんは聞いた。
珍しく昨日の酒がまだ残っていて、少し頭がいたい。
オフタートルのニットのワンピースの上から彼女の柔らかい体の感触を楽しみながら「歌ったんだよ。○○音頭を」と俺は答えた。
「○○音頭?」
「うん。桜花の舳先は五大洲・・ってやつ」オウカ?ゴタイシュウ?ナルミさんは聞き返した。
「うん。うちのグループの歌らしいよ。俺も始めて聞いた。こう、チャッカマンを両手に持って、あれ、なんていうのかな、、剣舞っていうのかな」
「ケンブ?」うん、まあいいや、と俺はチャンネルを変え、麦茶を飲んだ。
「5番まであるんだ。とにかく続けて歌っていると妙に盛り上がる唄でさ。クルス・・えっとその娘の名前だけどね、は机の上に上がって、踊ってるし。副支社長があれだけ興奮して喜ぶのも始めて見た。」へえ、、私のところにも挨拶に来たけど、普通の子に見えたけどなあ、とナルミさんはオレンジジュースを飲みながら言った。
「そのあとさ、皆酔っ払ってどんどんクルスに酒をつぐんだけど、あいつグビグビ全部飲むんだよ。先輩達はどんどん倒れるし、タクシー呼んだりトイレにつれてったりしてた俺だけ生き残った感じだった」すごいねえ、とナルミさんは感心した。
うん、と俺が答えると、森君その、クルスさんってタイプなの?とナルミさんが予想外の言葉を出した。
「え?なんで?」
「だって、さっきからクルスさんの話ばっかりなんだもん。」俺は少し慌てて、面白いこというね、といい、肩に手を回してナルミさんにキスをして、そのまま床に押し倒して身体をまさぐった。
「この服、何かいいね。」潤んだ目で俺を見つめながら、こっちの方が好き?一応持ってきたんだけど・・と部屋の隅においてある少し大きめのバッグを見た。
「いや、あっちがいい。」だんだんタガが外れてきた俺は、できるだけ遠まわしに受付の制服を着たまま、なんていうスレスレのお願いをナルミさんにしていたのだ。
最近管理が厳しくなって、今の服は持ち出せないの、森君が入ってくる前に着ていたのならうちに置いてるけど、と彼女が言うので、俺は土下座して頼んで持ってきて貰ったのだ。
だんだんナルミさんの昔の彼氏と同じことをしているような気がする。
やっぱり少しきついな、といいながら彼女は恥ずかしそうに立っていた。
白のジャケットの下にはブルーのキャミソール、なんと同じ青色のスカーフまで巻いている。
下はもちろん白のタイトスカートに、黒のストッキング。
「めちゃくちゃ色っぽい。今のもいいけど、こっちの方が俺は大好きだな」
「私もこの服好きだったんだよ。でも、白は汚れが目立つからって人がいて、一年くらいで変わったんじゃなかったかな」
「すごくいい。ものすごく好み」ハダの秘薬の効果か、すでに俺のモノは大変なことになっていた。
ベッドの横に立つ俺の足元にナルミさんは膝まついて、時々俺の顔を見上げながら深々と咥えている。
唇や舌や手、顔の動きは、もう何も伝えることはないほど気持ちがいい。
スカーフが時々俺のももにあたり、そのさらさらとした感触もたまらない。
チャイナドレスの時よりかなり早く、俺はギブアップして彼女の口にぶちまけた。
ごくり、と俺の出したものを飲み込んだ彼女を立たせ、机に手をつかせ、タイトスカートをまくりストッキングをおろし、後ろから突っ込んだ。
時折甘い声を上げる彼女の腰を掴みながら、俺は腰を激しく動かした。
ジャケットのボタンを外し、キャミソールの上から胸も揉んだ。
これはたまらん、、俺は二度目とは思えない速さでゴムの中に発射した。
最後にはベッドに入り、ナルミさんを裸にしてのしかかった。
ちゃんと付き合いはじめてから、ナルミさんの上げる声は少し高く、大きくなったような気がする。
俺は日が変わっても彼女の体を喰い散らかし続けた。
疲れて寝てしまったナルミさんの顔を見ながら、昨日の夜の飲み会のあとのことを思い出した。
「森先輩、このあと少しいいですか?」珍しくヘロヘロになった副支社長をタクシーにのせ、俺とクルスだけになると、彼女は言った。
全員無事に家に送り返してホッとしていた俺は、できれば家に帰りたかったのだが、彼女が真剣な顔をしているので、うん、とうなずいてしまった。
河原町から北にあがり、錦市場のほうへと彼女はずんずん歩いていく。
もしかして、と俺は思った。
困ったけどちょっと嬉しい。
人生最大のモテ期なのか、と勝手な妄想を膨らましながら付いていく俺を振り向いて、ここでいいですか、と彼女は古ぼけた喫茶店の前で立ち止まった。
席に着くと、彼女は分厚い大学ノートをカバンから取り出し、長方形と丸を描き始めた。
こうだったかな、、などとつぶやきながら、これが私の席です、と俺に言った。
「何これ?」
「今日の歓迎会の席です。みなさん酔っ払っていたので、名前をおっしゃらない方ばかりで、憶えることが出来ませんでした。教えていただけませんか森先輩」
「え?ああ、、全部わかるかな」俺は予想と違った展開に恥ずかしくなりながら、場を思い出しながら彼女に伝えた。
ここに座っていた髭の方がマツシタさん、、彼女はいちいち、あまり綺麗ではない字で書き込んでいた。
一通り作業が終わると、彼女はぺこりと頭を下げ、遅くまですいませんでした森先輩、と言った。
「俺は市内だからいいけど、帰れるの?」
「私も市内です。大丈夫です」
「どこらへん?」
「野村美術館の近くです森先輩」ああ、あのお屋敷ばっかりのところか、、と納得して、あのさ、少しずれてるけど一応同期だし、先輩はつけなくていいよ、俺も恥ずかしいし、というと、少し考えた後「じゃあ、森、でいい?」と表情を変えずに言った。
呼び捨てかよ、、と思ったが、いいよ別に、と俺はコーヒーを飲んで、留学してたんだって?イギリス?語学留学?と聞いた。
「造船」
「ぞうせん?」
「そう。そのままこっちの大学に編入しろって言われたんだけど、嫌になって」彼女はアイリッシュコーヒーを飲みながら答えた。
こいつまだ酒のめるのかよ。
「見るのとつくるのは違うんだなってよく判ったから。急に働きたくなってっていったここに入れてもらえて」へえ、、。
と俺はおかわりを頼んだ。
恵まれてるよなあ、と思った。
「森も知ってると思うけど、コネなの。でも今日の歓迎会でこの会社凄く気に入った」お前はすごいやつだ、うんすごいやつだ、さいたから森と一緒に叩き込んでやる、と酔っ払ってクルスの肩を叩く先輩の顔を思い出した。
まあ、コネでもなんでも、いい奴っぽいし別にいいや、と思い、船が好きなん?と聞いた。
「特に軍艦」
「グンカン?グンカンって大和とか?」彼女は顔見知りらしいマスターに声をかけ、ウイスキーのミニボトルを注文して首を振り、彼女は美しくないからあまり好きじゃない、と言った。
俺は中学生のような顔と、グンカンという音の響きのギャップに戸惑いながら、じゃあ、何がいいのよ、と聞いた。
クルスは、茶色のどこにでも売っているような地味な財布を取り出し、二枚の写真を取り出した。
「これが理想の男性。で、彼女が理想の船」
「ネルソン提督かよ・・・。こっちは、、ビクトリー?ポーツマツ行ったんだ。いいなあ・・・。」クルスは、知ってるとは思わなかった、と驚いた。
実は俺も、軍艦が大好きだった。
中学生までにタミヤのウォーターラインシリーズを完成させ、受験の時には部屋にZ旗をあげたほどだ。
「おまえの方がめずらしいよ、っていうか普通おらんやろ」
「よく言われる。でも気にしない。」
「なるほど・・。でも19世紀はあまり知らんなあ。」ミニボトルのウイスキーをぼとぼととコーヒーに落としながら、別に帆船にこだわってるわけじゃないよ、レパルスは大好き、日本だったら最上かな、と恐ろしくマニアックなことを言い出した。
俺は嬉しくなって、しゃべり続けた。
彼女もうれしそうに話し続けた。
気付くと外は明るくなりかけていた。
ナルミさんの寝顔を見ながら、ああいう話をナルミさんと出来たらなあ、と無茶なことを思った。
考えてみると、ナルミさんと何か熱くなって会話を交わしたことは余りないような気がする。
趣味もまったくちがうし、というか、ナルミさんってどういう話が好きなんだろう、思った。
ようはやりすぎなんだな、と反省して俺は寝た。
それから数週間後、俺は気がむかないまま、阪急に乗って中学の時に住んでいた町へと向かっていた。
ナルミさんが中学の時の友達と近所で会った時に、俺と付き合っているという話をすると、久しぶりに集まろうよ、森君も連れてきてね、ということになったらしい。
集まるメンバーを聞くと、俺がまったく交流のなかった連中ばっかりだ。
森君も仲良かった人に声かけてみたら、とうれしそうに言う彼女に何も言えず、おれはうん、とうなずいた。
携帯に残っている、数少ない中学の時の友人の番号を探し、俺はかけてみた。
「もしもしサカキ?、久しぶりやな。森やけど。モリユウタやけど」
「おう!ひさしぶりやなー。まだこっちおるの?」サカキはサッカー部で、俺の連れの中でも比較的クラスでメジャーな方だった。
俺は連れて行く友人を選んでいる自分自身がたまらなく嫌だった。
何様のつもりなんだろう。
俺は今までのナルミさんとのことを説明し、この週末の集まりのことも話し、一緒にいかないか、と誘ってみた。
「そうか、お前がI本さんとなあ。何か不思議な感じやな」やろ?俺も不思議や、といい、何しろあんまり知らん奴ばっかりやから、一緒に来てくれると助かるんや、サカキ結構あのグループとしゃべってたやろ、と頼んだ。
「まあ、部の奴もおったしな。でもなあ、、正直仲良くなかったで、卒業してから全然会ってないし。確かにI本さんとかは見てみたい気もするけど、、」頼むわ、と俺は情けない声を出したが、うーん、、やめとくわ、それより今度仲良かった奴で飲もうや、もちろんI本さんも連れて、といい、サカキは電話を切った。
俺は途方にくれたが仕方がなかった。
サカキでダメなら誰も来ないな、とあきらめた。
ナルミさんと一緒に店に入ると、他の連中は既に集まっていて、既に赤い顔をしているのもいた。
ひさしぶりーー、あいかわらずかわいいやんけー、と、連中は俺の存在を無視してナルミさんを迎えた。
「この店まだあったんや。でも焼肉なんてやってなかったやんな」とナルミさんがコートをビニール袋に入れながら言った。
俺に説明するように、中学の時よく来たんだよ、と言い、店の中を見回して、机とかの場所はかわってないやん、と嬉しそうに座った。
ナルミの席もあけといたで、と茶髪にピアスをした男が言った。
えっと、こいつは、、アカイだ。
ナルミさん、昔ちょっと付き合ってたって俺に言ったこと忘れたのだろうか。
俺と話すときとは違う関西弁で、楽しそうに話している。
そうそう、いつもここに座ってたわー、三学期なんか殆ど毎晩きとたんちゃうか?俺たち、森君はおらんかったやろ、勉強できたもんな、と連中はどんどん盛り上がった。
そこにいる全員が俺のことを、森君、と呼んでいた。
ナルミさんは時々俺に気を遣って話しかけるが、すぐ「懐かしい話」に戻され、でも楽しそうにはしゃいでいた。
たまらなく苦痛な時間が過ぎていった。
俺はまずい焼肉を喰いながら、時間が過ぎるのをひたすら耐えた。
連中は車の話やショッピングモールの話や先生の話に夢中になっていた。
「ほら、合唱コンクールの時や、誰やったかな、いきったやつがアホみたいに怒って練習しろやーとかいったことあったやん」俺は体が固まって、自分でもわかるくらいに顔が熱くなった。
それしらん、とナルミさんがいい、ナルミ練習全さぼりやったやん、と突っ込まれていった。
俺はひたすら祈った。
お願いだから思い出すな、これ以上俺の過去に触れるな、と必死で願った。
誰やったけなー、普段からむかつく奴やってん、顔思い出されへん、私も覚えてるー、などと連中はその話題で盛り上がり始めた。
こいつらわざとやってるのか、と思い始めた頃、当時授業をまったく聞かずにヘッドホンをしていたサカモトという奴が、思い出した!エノモトや!あのへんな走り方してた奴や!と叫んだ。
そうやそうや、と間違った名前で連中は盛り上がり始めた。
エノモトはこよなくベートーベンを愛していた、俺の親友の一人だった。
「そうやったっけ、、森君覚えてる?」と、トレーナーを着た女が俺に聞いてきた。
「うん。エノモトやったんちゃうかな。あいつへんに真面目やったし・・」俺はウソをついた。
連中はエノモトや、クラスの「ヘンコ」な奴の話で盛り上がっていた。
あがった名前には俺の親しかった奴も何人か入っていた。
ナルミさんも笑って、そうそう、と言っていた。
俺も笑った。
もう無理だ・・。
俺は携帯が掛かってきたふりをして外に出ると、しばらく時間を潰し、店に戻り、ごめん、取引先から急にクレームが来て、今すぐ京都に戻らなきゃいけないんだ、と言い席を立った。
ナルミさんも一緒に帰ろうとしたが、いいよいいよ、ひさしぶるでしょ、と笑って逃げるように店を出た。
ナルミさんは心配そうな顔をしたが、うなずくと席に座りなおした。
自分は変わった気でいるけど、実は全然変わってなかった。
あんなふうに楽しそうにナルミさんと話す自分は想像できなかった。
俺は友達まで裏切った自分を責め、誰か話が合う奴に合いたくなった。
クルスみたいな奴に。
そんな風に落ち込んでいられることも出来なくなることが起こった。
同じビルに入っている、グループ内の会社の、それも京都支社が、死者がでてしまうような不祥事を起こした。
別会社とはいえクロスオーバーしている取り引きもあり、その日から先輩も俺も、まだまったく勝手がわかっていないクルスもほとんど家に帰れなくなった。
ビルには毎日大勢のマスコミが押しかけ、得体の知れない連中も次々とやってきて、街宣車がビルの前に止まり、がなりたてた。
ナルミさんも応対に追われ、夜中に会社から電話をしても、酷く疲れた声で2,3分はなすだけ、といった日々が続いた。
会社の前にずらっと並んだ脚立に座る人達が、この会社の受付死ぬほど色っぽいな、となにげなく話す声を聞いて、俺は無性に腹が立ったりもした。
生まれてはじめてといってもいい、きつい日が続いた。
先輩や俺、もちろん他の先輩達やクルスも、腰が悪くなるまで頭を下げ続けた。
ナルミさんと一言もしゃべれない日も何日かあった。
年が明けても忙しい日は続いた。
本当に久しぶりに休みが取れ、俺はマンションでナルミさんと会った。
「大阪に行けっていわれたの」ナルミさんが言った。
「大阪?なんで?」グループ全体の業績がかつてないほど下がり、ナルミさんが所属している会社が大阪にある、系列の人材派遣会社に吸収されることになったらしい。
京都の受付も削減するが、もし希望すれば大阪の本社の方に勤務して欲しいといわれた、とナルミさんは俺に相談した。
「大阪支社で働くの?受付?」ううん、とナルミさんは首を振り、秘書をやってほしいって、とナルミさんは言った。
秘書?「うん。○○食品ってあるでしょ?」うちのグループの会社だよね、あそこは大阪が本社だったよね、と俺が答えると、私のとこと一緒になる会社がそこに人を出していて、秘書が出来る人をって言ってきたらしいの、と困った顔で話した。
「そんな難しいことできないよ。受付しかやったことないし。それも再来週からなんて・・」彼女は言った。
俺はナルミさんと離れることに少し不安になったが、でも、やめちゃうのもどうかと思う、と言った。
「頑張ってみて、どうしても嫌だったら」と俺はナルミさんの顔を見て伝えた。
「嫌だったら?」俺は少し黙って、またそのとき考えようよ、と言ってしまった。
彼女は黙って俺の顔を見つめていたが、うん、、と淋しそうにうなずいた。
「森君、私のおかあさんのこと気にしてる?」彼女は久しぶりに俺のモノを受け入れながら、下から言った。
「お母さんのこと?」
「うん、、お母さんが入ってるところのこと」俺は腰の動きをとめ、いや別に、と答えた。
「森君が嫌だったら、おかあさんと話してみるけど、そうしてもだめだったら、、」
「どうしたの?」
「おうちでる」俺は笑ったふりをして、別に気にしてないよ。
新聞はとらないけど、といって、腰を動かし始めた。
その日のナルミさんは、いつもより声を上げなかった。
ナルミさんは大阪の会社に勤め始めた。
検定試験を受けるために専門学校にも通い始めた。
態度を決めかねている俺を見て、しばらく働く気になったのだろうか。
始めのうちはグチが多かった電話の声も、だんだん仕事に慣れてきたらしく、勤めている会社のことを楽しげに話すようになった。
何か淋しいな、と自分勝手なことを考えながら、今までべったり過ぎたんだ、とも思った。
ただ離れてみると不安になる。
俺は今更ながらふらふらした自分を情けなく思った。
2月も終わりかけ、一連の騒動もようやく治まりかけ、取り引きも激減したこともあり、定時で帰らされる日が増えてきた。
溜まっていた代休を消化する為に、平日に休みを取らされたりもした。
俺は比較的時間ができたが、ナルミさんは忙しくなり会えない日が続いた。
H歩とさんから電話があったのはその頃だった。
何かと思えばコンパの誘いだった。
ナルミちゃんには絶対言わへん、もちろんヨシコにも絶対内緒や、と妙に強く誘ってきた。
「何で僕なんですか?」
「・・・ヨシコがな・・森君はナルミ一筋なのにあんたはフラフラしてる、ちょっとは見習え見習えってうるさいんや。俺的に、男は皆一緒やって得たいわけや。」
「それって、、、ヨシコさんにばらすんじゃないですか」H本さんは、ちゃうちゃう、俺の信念だけの話や、とよくわからないことをいい、森君ナルミちゃんと結婚するんやろ、長い付き合いになる男が、コンパにもいかないような奴やったら考えてまうわ、と脅すようにいった。
わかりました、それにナルミさんに話してもいいですよ、コンパくらい、と答えた。
「じゃ10時半にマンションに迎えにいくわ。朝の十時半やで」朝の十時半?秘密作戦や、とH本さんは嬉しそうに話しながら名神を東に向かった。
「ここまできたら誰にもばれへん。なあオオムラよ」ほんまですね。
と俺と同じくらいの年の男が助手席で答えた。
実は6月に結婚するんや、とH本さんは俺に話した。
悔いのない独身時代を送っとかんと、結婚してからフラフラ遊ぶようになる、今日のコンパはヨシコとナルミちゃんのためでもある、と、以外に安全運転のH本さんは一人でしゃべっていた。
京都と彦根の真ん中あたりにある古い町で高速を降り、国道沿いのカラオケボックスのようなところに入った。
個室に次々とお酒が運び込まれ、3対3のコンパは平日の午前中からいきなり盛り上がった。
最近車を買ったという若い人妻の腰に手を回し、H本さんは彼女の唄を聴いていた。
オオムラという人は、キャバクラ嬢のような女の人に、ボディビルで鍛えた腕を触らせてはしゃいでいる。
俺は久しぶりのコンパの雰囲気を楽しみながら、横に座った、くるくるした髪の毛の女の子と話していた。
香水の匂いが新鮮だった。
大き目のピアスが目立つ、顔の小さな子だった。
クルスに少し似てるかもな、と俺は思ったが、ピアスをしているクルスが想像できず、俺はぼーっとそのこの顔を見ていた。
「森さんってH本さんとどういう知り合い?」
「え、、うーんとね、実は彼女同士は友達」えーーっと彼女は大げさにいい、ダメじゃないですか、と笑った。
長袖の白いセーターに、膝まで届くような緑のマフラーをチェックのミニスカートの上に置いた彼女は、レモン酎ハイをおいしそうに飲みながら脚を組んだ。
暫くしてないからかなあ、、俺は脚を無意識に見てしまいそうになる衝動をがんばって押さえた。
「そっちはどういう知り合いなの?」上半身裸になったオオムラさんが熱唱している。
膝の上にはいつのまにか女の人が乗っている。
「ヨウコちゃんと私が短大の時の友達で、マイちゃんはヨウコちゃんの中学からの友達なんだけど、私も始めてあったんだ」マイちゃんというと、、と俺が言いかけると、全然名前覚えてないやん、とコロコロ笑って、ヒデオさんと出来上がってるのがヨウコ、オオムラさんの膝に乗ってるのがマイ、と教えてくれ、私の名前は?と聞いてきた。
セーターから盛り上がる胸をちらちら見ながら、サキちゃんやん、それだけ憶えてたら俺的にはOK、と学生時代の俺が聞けば殴りつけるだろう台詞を言った。
2時間ほど立つと、もう他の4人はベロベロのベタベタだった。
チキンやらポテトやら中途半端なものを昼飯代わりに食べただけの俺は腹が減っていた。
7時までには家に帰らないと、という顔を真っ赤にしたヨウコちゃんと、オオムラさんと、大村さんと何回もディープキスをしていたマイちゃんを載せ、H本さんは車に乗り込んだ。
「森君、これから俺らはホテルに行く。そっちはどうやねん。」ヨウコちゃん飲みすぎやで、と乱れた襟元を直してあげているサキちゃんを見ながらH本さんは小声で言った。
「あ、俺は帰ります。すいません力不足で。」なんや、残念やね、というとサキちゃんは?と聞いた。
「私は、、もう少し森君と歌っていこうかな、全然歌えなかったし、ね?」というと俺を見た。
う、、うん、と俺はうなずき、車を見送った。
「もう1回入るの?店の人不思議がるよね」と俺が言うと、そんなわけないやん、もう少し飲みませんか?昼間っからお酒飲むのって何かええよね、と俺を見た。
俺は下半身にタオルをまいただけの格好で、ベッドに座ってシャワーの音を聞いていた。
昼間っからのむとこなんかここらへんないで、それやったらあそこに連れてくよ、と、少し遠くに見えるホテルの看板を指差すと、ええよ、とサキちゃんはあっさり言ってついてきた。
なんなんだこれは、俺はいまいち理解出来なかった。
ほんの2時間前にあったばかりだぞ。
俺は冷蔵庫からビールを取り出し、落ち着こうと言い聞かせて飲んだ。
サキちゃんがバスタオルを巻いて出てきた。
俺の横に座って、私も飲むーておいい二ーるをついだ。
「明日は仕事?」俺は間抜けな格好で間抜けな質問をした。
そうやけど、なんで?とサキちゃんが部屋においてあるカラオケの本をぱらぱらと眺めながら答えた。
「いや、別に・・。今度なんか買いに行こっかなって思ったから」彼女にプレゼント?とサキちゃんはニヤニヤして、どうせやったら一緒にきてや、と言った。
何か歌う?と俺がおちゃらけていうと、うたわへんよ、といい部屋の電気を暗くした。
「あのやね、俺、」
「彼女に悪い?私やって彼氏いるから大丈夫」
「じゃあ余計に・・」サキちゃんは、森君みたいに真面目な人って新鮮やねん。
なんか余裕あるみたいでちょとむかつくし。
いやなん?いややったら帰るよ、といい立ちあがった。
俺は彼女の手首を掴み、ベッドに押し倒した。
大阪で仕事をしている成美さんの顔を一瞬浮かんだが、俺はそれをわすれてバスタオルを剥ぎ取った。
サキちゃんの、想像していたよりは小さな胸の先を舌で転がしながら、指を彼女の中に入れてこねくり回した。
長い髪を白いシーツに広げて、サキちゃんはあえいだ。
手のひらがぐっしょり濡れるまで指で弄繰り回した後、舌をわき腹に這わせ、おへそを舐め、脚の間に顔を埋めて、指を入れたままポイントを舌で転がした。
ええやんええやん・・サキちゃんは声をあげた。
「彼氏よりいい?」
「全然いい」彼女はまったくためらわずに言い切った。
「だから損やねん、、、。いろんな人としなと損やねん、って思ってんねん、いつも」少しは後ろめたくなってくれたほうが俺は嬉しいんだけどな、と思ったが、そのまま舌を動かして、指をサキちゃんの中で曲げて、少し強めに動かした。
サキちゃんは身体をくねらせ、めっちゃいいめっちゃいい、、つぶやいた。
俺は動きを止めずに、ひたすら舐め続け指を動かし続けた。
サキちゃんは、あ、と言うとふうーーっと息をはいて、ちょう休憩、お願い、、と俺の手を握った。
「うそやん、、いったやん・・」彼女はおなかを上下させてささやいた。
俺はそれはよかった、といい、彼女の顔の近くにモノを近づけ、やってくれる?とちょっと偉そうに言った。
サキちゃんは俺のモノを握って、うそ、めっちゃ太いやん、と笑い、躊躇なく咥えた。
俺は仰向きになってベッドに背中を持たれかけ、サキちゃんの口の中を楽しんだ。
悪いけどナルミさんの方が気持ちいいかもな、でもよだれが多い分これはこれでたまらん、と失礼なことを考えつつ、髪をかきあげながら音を出して啜るサキちゃんの口元を見ていた。
咥えたままこっちを見て笑った彼女は、今日夜なにしてるん?と聞いた。
友達と飯、と俺がうそをつくと、じゃあ、もう、ね?と俺のモノを握ってこすりあげた。
俺はホテルのゴムを無理矢理つけ、少しきついのを我慢しながらサキちゃんに挿れた。
大人やね、ゴムつけてくれるんや、と彼女は言いかけたが、俺が腰を深く突き入れると、ん、、と眉をひそめて、ゆっくり、、とかすれた声を出した。
言われたとおりゆっくり出し入れすると、サキちゃんは俺の二の腕に爪をたててうめいた。
跡になったら困るな・・俺はそんなことを考えた。
せっかくだから、と俺は思い、サキちゃんを四つんばいにさせ、ナルミさんやヨシコさんよりだいぶ細い腰をつかんで、ひたすら突きまくった。
サキちゃんは大きな声をあげ、シーツを掴んだ。
充分に楽しんで、彼女の中からモノをぬき、ゴムをはずして背中にぶちまけた。
俺のモノにくっきりゴムの跡がついていた。
服を着たサキちゃんは、めっちゃ遊んでるやん、と俺の人生では考えもつかない台詞を言った後、でも、正直私にはおっきすぎて少し痛いかも、彼女大変やね、と笑った。
携帯の番号を交換して、俺とサキちゃんは駅で別れた。
3月になっても俺は結構暇だった。
今年は新人はこないから、お前とクルスはまた下っ端だな、まあ、クルスの方がお前より偉そうだけど、と、出先でご飯を食べながら先輩が言った。
「今日夜開いてるか?」
「はい」
「お前、最近I本さんとはどうなんや。大阪に行って淋しいやろ?」俺はそういえば二月は三回しか会えなかった。
4月の検定試験が終わったら、色々ゆっくり話したい、と俺は思いながら、そうですねえ、と答えた。
「お前らにはうまくいってほしいんやけどな」と先輩は独り言のようにつぶやいた。
仕事が終わり、先輩と飲みに行った。
いつもとは様子が違い、俺の仕事に文句をつけるわけでもなければ、我が社のこれからについて演説するわけでもない。
俺は少し不思議に思いながら、スローペースで飲んでいた。
去年ナルミサンと先輩と三人で飲んだ店に場所を変えても、先輩の様子は変わらなかった。
あらがきっかけだったな、いつまで俺はぐずぐずしてるんだろう、と思っていると、先輩が意を決したように俺の名前を呼んだ。
「なんでしょうか?」今までとは違う話をするみたいだ。
俺は少し緊張した。
「森。俺は4月からアメリカだ。3年は向こうにいる」
「え、、、」先輩は、お前は一年でかなり成長した。
目つきも態度も変わった。
自分では分からんかもしれんが、もう一人でやれる、と俺は思う。
それは心配してない、と、ブッシュミルを息に飲み干していった。
「そんな、、まだ全然ですよ、まだ全然。そんな、、」情けないこというな、俺の指導役は副支社長だったんだぞ、教わったのはこの店くらいだ、まあ、それがあのひとのやり方だけどな、といい、お前に頼みがあるんだ、と改まった口調になった。
「なんですか?」
「クルスのことだ」でも、俺何にも教えられないですよ、っていうかあいつの方がもう出来るような気もするんですが、と俺がいうと、何だ、知らないのか、お前ら中がいいから話してると思ってた、といいミックスナッツをかじった。
「何がですか?」
「付き合ってるんだ、俺とクルス」
「はい?!」
「何回も言わすな恥ずかしい。お前もずっとこっちにいるわけじゃないだろうが、近くにいる間は気にしてやってくれ。ああみえても意外に考え込むタイプなんだ」というと、始めて見る気持ち悪い笑顔で、「ミユキちゃんは」といった。
その夜、先輩と俺は朝まで飲んだ。
俺はナルミさんとのこと、中学のこと、最低だった焼肉のこと、この前のコンパのことまで話した。
フレーズごとの俺の最後の台詞は、だからね、ナルミさんとは結局分かり合えないような気がするんですよ、というものだった。
「アホかボケ。始めから会う奴がいるか。それだけ好き勝手しといてあれか?中学の時世界が違ったから無理だ?話が盛り上がらないから無理だ?読んでる本が違う?お前はクズか。成長したと思ってた俺が間違ってた。」すっかり目が据わった先輩は、誰もいなくなった店で大声で俺を叱り飛ばした。
「わかってます。でも、、例えばクルス・・さんとかと話すときは楽しいんですよ。俺は俺のままでいられるような気がするんですよ。でもナルミさんとはそうじゃないんです」先輩は俺の頭をはたき、さんはいらんクルスでいい、といい、ナルミさんが日本人やなあいとか、お母さんがあの会員だとか、ヤンキーだったとか」
「ヤンキーじゃないとは思いますが」
「うるさいだまれ。とにかくお前の言ってることはよく分からん。いやお前が考えてることはわかる、でもな、お前一人の世界で完結してるわけじゃないんだよ、この世界は」いきなり哲学的なことを先輩は言い出した。
「アクションがあればリアクションがあるんだ。一人だろうが二人だろうが同じだ。お前のその、よくわからない拘りを捨てんと誰ともどうにもならんぞ」酔った頭には難しすぎた。
でも先輩のいっていることは何となく理解できた。
とにかく、と先輩は言った。
頑張れ、と。
俺の頭をまたはたいた。
5月の始めの日曜日、検定試験を終えたナルミさんと梅田で会った。
「一次試験でダメだと思ってたから、面接はあまり準備してなかったの。やっぱりいきなり準一級なんて無理だったのかな」と大きなエリがジャケットから覗く、青いスーツを着た彼女がスパゲティを食べながら言った。
髪伸ばしてるんだ、と俺は思い、結果はいつ出るの?と聞いた。
来月、、でも8月にまたあるから気にするなってみんな言ってくれるんだ、と笑い、少し太ったね、と俺の顔を見た。
先輩がいないからだらけてるのかも、と俺は答え、どことなく雰囲気の変わった彼女を見ていた。
俺がぐずぐずしている間に、ナルミさんは変わってるのかも知れない。
俺は急に色々なことが不安になった。
今日は私が払うね、合格したら奢ってももらおうかな、とレジで取り出した財布の中に小さなお守りのようなものが見えた。
店を出て二人で歩きながら、どこのお守り?と俺は聞いた。
彼女は俺が少し驚くほど表情を変え、え、あ、あれ?えっとね、北野天満宮、となぜかいいずらそうに答えた。
言ってくれたら買ってきたのに、俺の家の帰りに寄ったの?と聞くと、彼女は前をむいたまま、フクダ君に貰ったの、と答え、話を変えるように、ここのお店美味しいんだよ、と通りの向かいを指差した。
フクダ君、という名前は、彼女の会話にちょっと前までよく出てきた名前だった。
彼女の会社に勤めている男で、本人はいつか自分でイタリア料理専門の食材輸入会社を開きたいと思っているらしい。
年下なのに野望に燃えた奴が世間にはいるもんだ、と俺はたいそう感心したのものだ。
フクダ君は高校しか出ていないけど、色んなことを教えてくれる、とか、こんな失敗をしたけどフクダ君がフォローしてくれた、などという話をしてくれたが、最近名前を聞かないので、少し不思議に思っていた。
ふうん・・と俺が言うと、明日会社の友達とカヌーに行くんだよ、せっかくの休みなのに一緒に入れなくてごめんね、といい、もしそういう気分なら、今からでもマンションに、とナルミさんは言った。
こんな声だったけ、、俺が腰を打ち込むと、彼女は甘い声であえいだ。
でも、昔必ずいってくれた、好き、という言葉は聞けなかった。
今日は帰らなきゃ、といいながら服を着始めた彼女に、結婚しよう、と俺は言った。
ナルミさんは俺に背中をむけたまま、何で急に、と動きを止め、こっちを向いてつくったように笑いながら、でも、まだ仕事続けないと皆に悪いし、、というとそのまま何を言っていいのかわからないように黙って立っていた。
俺は、うん、わかった、とだけいい、部屋を出て行く彼女を見送った。
ナルミさんからの電話はどんどん少なくなっていた。
6月のH本さんとヨシコさんとの結婚式に、俺は招待されなかった。
なんで森君呼ばへんのやって俺は言ったんやけどな、森君知らん人ばっかやと気つかうやろってヨシコが言うんや、H本さんはすまなそうに電話をかけてきた。
その次の週の金曜日、ナルミさんから久しぶりに電話があった。
明らかにいつもとは違う声の調子で、明日そっちにいってもいい?少し話をしたいの、とだけ言った。
土曜日、俺の部屋に来たナルミさんは、30分ほど黙り込んで、そのあと、好きな人が出来たの、とだけいうとまた黙った。
しばらくして、フクダ君が会社をやめるって。
将来は一緒に会社を手伝って欲しいって、と小さな小さな声で話し、うつむいたまま又黙り込んだ。
予想通りだったとはいえ、彼女の口からそれを聞くと身体が自然に熱くなった。
フクダ君?と聞くと彼女は、わかってたの?といい、そうだよね、と小さくつぶやきうなずいた。
それから30分間、二人で黙ったまま向かい合って座っていた。
俺はようやく口を開いて、わかりました。
でも、最後に一つだけお願いがあるんだ、と言った。
なに?と彼女が聞いた。
したい、とだけ俺は言った。
ああ、俺はかつて笑って馬鹿にしてた奴と、まったく同じことをしている。
俺は笑い出したくなり、彼女が部屋を出るのを待った。
しかし彼女は静かに立ち上がり、ゆっくり服を脱ぎ始めた。
俺は止めることも出来ず、裸になる彼女を見ていた。
ベッドに入り、俺は彼女の胸にしゃぶりついた。
彼女の中に手を入れて弄繰り回した。
顔をうずめ彼女の脚の間を舐めまわした。
ナルミさんはほとんど声をださなかった。
俺は殆ど泣きながら舌や指を動かしたが、彼女は小さく身体を振るわせたまま黙っていた。
俺はゴムをつけ、ナルミさんの両脚を開いた。
「教えてよ」俺が聞くと、ナルミさんは目に涙をうかべたまま、え?と小さな声で答えた。
「もうしたの?」
「・・・」
「フクダ君とは、もうしたの?それくいらい聞く権利はあるよね?」彼女は、ごめんなさいだけ言った、それを聞いた俺は彼女の中に乱暴に入った。
腰を激しく振っても、四つんばいにして後ろから突っ込んでも、ナルミさんは黙ったままだった。
フクダがナルミさんの中に入れている様子を思い浮かべ、彼女を何回も裏返したり、立たしたりした。
俺は最後をむかえ、ゴムを外してナルミさんのおなかに出した。
ナルミさんは服を着て、ベッドに入ったままの俺に、ごめんなさい、とだけいうと部屋を出た。
少し眠ってしまった俺は、目が覚めると先輩に電話をかけた。
「森、地球は丸くて回ってるって知ってるのか?時差って知ってるか?」おそろしく不機嫌そうな先輩の声が聞こえた。
「振られました」
「あ?」
「今から4時間前、I本さんに振られました」
「そうか・・・。お前今に家か」
「はい」
「そのまま家にいろ」
「はい」電話が切れた。
一時間ほど立つと、「玉の光」の一升瓶を両手に持ったクルスがやってきた。
「先輩から聞いた。まあ飲もうよ」とだけいうと、クルスは一升瓶を床に置き、コップを二つ並べた。
「お前、先輩って呼んでるのか?」
「森に合わせた。いいから飲もう。おつまみも家から持ってきた」といい、キャビアやらカラスミやらを机に並べた。
一晩中黙ったまま二人で飲んだ。
クルスは特に質問もせず黙って飲んでいた。
二本目がカラになったあたりで、俺は床にあおむけ倒れた。
「ありがとう・・・」
「もう寝るの?一緒に寝てやろうか?先輩はやられてもかまわんって言ってたぞ」俺は大の字になったまま笑った。
遠慮しとくわ、と俺が言うと、じゃあ帰る、月曜日は会社にきなよ、といいクルスは部屋を出た。
クルスが廊下を歩いていく音とが消えると、俺は泣いた。
一年が過ぎ、俺は本社の研究室に異動になった。
部屋を片付けていると段ボールの底からテープが出てきた。
まあ、諦めなよ。
俺とナルミさんが別れてから一週間後に、新婚旅行から帰ってきたヨシコさんからの電話を思い出した。
どうしても諦められなかったらテープでも使って脅したら?とヨシコさんは電話の向こうで笑った。
考えておきます、と俺も笑った。
まそれが出来るくらいだったら別れてなかったって話だよね、と言ってまた笑った。
俺はテープを引き出し、丁寧にハサミで切り刻み始めた。
最後にもう1回見ようかな、とも思ったが止めておいた。
それから三年、俺のモテ期はすっかり去ってしまったようで、東京での俺の生活は昔のような男らしいものになっている。
会社の近くの寮なので、ほとんど毎日男どもがやってきては、理系の集団らしい男らしい話をして酒を飲んで去っていく。
結局何も進歩してないのかな、と思いつつも、今の生活にそれほど不満はないのは恐ろしいことかも知らない。
先輩とクルスは去年結婚した。
俺はクルスから教わった「○○音頭を、創業者一族の並ぶ前で披露した。
ナルミさんとフクダ君の結婚は、ヨシコさんから聞いた。
子供の泣き声が後ろから聞こえる電話で、きれいだったよー、とあいかわらず無神経なことを言っていた。
これでよかったのかな、これでよかったんだろうな。
今度京都にいったらら、何かに使えるだろうと思って持ってきたチャイナドレスをそろそろ返しに行こう、と俺は思った。
長文すいません。
ありがとうございました。

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