アスファルトの匂い
2020/09/13
8月が過ぎ、残暑を感じると、決まって思い出すことがある。
アスファルトの匂いと共に。
時は、今から30年前ほど遡る。
私は人口5万人ぐらいの地方都市に住む小学6年生だった。
小学校まで片道30分ぐらいかかっていた。
草むらを抜け、田んぼを抜け、区庁舎を抜けると小学校に辿り着いた。
どちらかというと、人がまばらな新興住宅地であり、近所には子供があまりいなかったように覚えている。
多くの小学校の同級生は、私とは違う方向に住んでいたため、
自宅へは一人で帰ることが多かった。
また放課後、遊ぶと言っても、小学校まで徒歩30分。相当な距離である。
そのため、放課後、滅多に友達と遊ぶことはなかった。
引込み思案な性格も手伝い、これといった友達と呼べる人もいなく、
少し寂しい小学校生活を送っていた。
小学校最後の夏休みが終わり、9月の始業式から少し経ったある日のことだった。
授業が終わり、帰宅している時だった。その日は、残暑が厳しかった。
むっとむせかえすような暑さがアスファルトから感じた。
なんでこんなに学校から家が遠いのか、この時ほど呪ったことはなかった。
のどが渇き、途中の公園に寄り道して、水を飲んだりして、トボトボと帰路についた。
大人の背丈ほどある草むら地帯に差し掛かった時である。
前方100mぐらい前に、奈緒の歩いている姿が見えた。
奈緒は近所に住む同級生であり、3,4年生のとき、同じクラスになったことがある。
奈緒とは、少しだけしゃべる程度の間柄であった。
当時の小学校は、男の子は男の子で遊ぶ、女の子は女の子で遊ぶ関係あり、必要以上には、男女は関わらない関係であった。
私の娘と息子の話によると、この関係は、今でも同じかも知れない。
奈緒が突然右に曲がり、その空き地の草むらの中に入って行った。
奈緒が曲がった場所に着くと、草が踏みけられた小道があり、奥へと続いていた。
どうしようかと迷った。
家まで10分ぐらい。まっすぐ帰るか、寄り道するか。
喉を潤すため、既に公園に寄り道している。これ以上寄り道するのはいけないこと思ったが、
意を決して、草むらの中へ入って行った。
奈緒の跡をつけると言うよりも、この小道の正体を調りたいという興味よりも、
単にむせかえすようなアスファルトから逃れたいという気持ちが強かったと思う。
草むらの中は、意外に涼しく感じられた。
両隣の草は、大人の背丈ほどあるため、小学生の私からすると、少し不安であった。
そのため、ゆっくりゆっくりと、奥へ進んだ。
小道は、草が踏みつけられていて、カタツムリのように、ぐるぐるとした形になっており、外から見えないようになっていた。
誰が作ったのだろう、いつ作ったのだろう、今までこんなの気付かなかったのか、など思いを巡らせながら、
ゆっくりと、音をたてないように、歩いた。
小道を左に曲がったときである。
5メートルほど先の草の上に赤いランドセルが見えた。
奈緒の存在を意識しながら、さらに、ゆっくり進んだ。
その場所は、3畳ほどの少し広い空間であった。
広場の入り口で止まった。
奈緒が、向こうを向きながら、一人で、座って本を読んでいた。
あたりを見渡すと、エロ本やビニール本が散らばっていた。
同時に、この小道を作った人や作られた理由も、なんとなく分かった。
奈緒に、声をかけようか、迷ったが、意を決して近くに寄ることにした。
奈緒は、エロ本を読んでいた。
今までの私だったら、単に冷やかしていたと思う。
「奈緒は変態」と言い、鬼の首でも取ったように、友達に言いふらしていただろう。
だが、この時、私が取った対応は違った。
理由は分からない。アスファルトの暑さで頭がおかしくなっていたのかも知れない。
「奈緒、どうしたの」とやさしい口調で声をかけた。
奈緒は体をびっくとさせ、急いで本を閉じた。
振り返り、私だと気付き、口をあんぐり開けていた。
固まっていた。
小学6年生の女子と言えば、第2次性徴期が始まっていても不思議ではなく、6年生女子の大半は体が大きい子が多かった。
しかし、奈緒は、眼が大きく可愛かったが、小柄で貧乳であった。
良く見ると、傍らに白いパンティーが置いてあった、
「エロ本は性の教科書だから、勉強していたんだね」と言うと、気持ちが和らいだのか、にこやかに『うん』と言った。
奈緒は、しゃべった。
セックスに興味があるけど、奈緒は発育が遅れているから、同級生に少しからかわれているらしい。
そのような時、夏休みの終わりに、ここを見つけたと言う。
エロ本が置いてあり、色々知りたいし、面白かったから、今日、ここに来たという。
今日は、エロ本に書いてあるとおり、オナニーをしてみたという。
奈緒と私は、しばらくしゃべった。
高校生か誰かここにエロ本を見るために、ここを作ったのだろうと奈緒と私は結論に達した。
高校は、まだ授業中。後1時間ぐらいは来ないであろう。
奈緒と私は、いっしょにエロ本を見た。
SEXの場面では、正常位やバック、騎乗位など、いろいろな体位があることを知った。
体位によって、こんなに女性の表情が変わるかとか、少し誤った知識を得た。
69をしている場面には驚いた。
保健体育の授業でSEXは知っていたが、舌で性器を舐めることは知らなかった。
奈緒も、眼を皿のようにしながら、エロ本を見た。
ページを捲ると、ドアップの性器の描写であった。
女の子の性器は、こうなっているのかと思いながら、エロ本を見た。
奈緒がこちらを向く。
奈緒はまだパンティーを履いていない。
奈緒と眼が合う。
意を決した。
「先生にも、友達にも、親にも言わない。誰にも言わないから、おまんこ見せて。」と言った。
奈緒は、『本当に誰にも言わないなら』と確認しながら、草むらに腰を落とし、手を後ろに着き、足をM字のように、開いた。
無毛のきれいな縦筋おまんこであった。
土手も盛り上がっていない。
女の子のおまんこを見るのは初めてであった。
もっと詳しく知りたいため、奈緒を仰向けに寝かした。
ゆっくり、縦筋を調べた。
雑に土手を横に広げると痛いと言った。
ゆっくり、ゆっくり広げた。
みずみずしい、潤いがそこにあった。
奈緒を見ると、手で眼を覆っている。
喉が渇いていた。
さっきのエロ本でおまんこを舐めている描写を思い出した。
おまんこを舐めた。
縦筋の溝に沿って、舌を入れた。
おしっこの味がしたが、そのまま続けた。
横目で奈緒を見ると、頭をあげて、こちらを見ている。
「舐めていること分かった」と聞くと、奈緒はうなづいた。
触るのと舐めるのでは、感覚が違うのか、と思ったりもした。
おまんこの構造に興味津々であり、触ったり舐めたりした。
しばらくして舌が疲れたので、舐めるを止めた。
奈緒におまんこの解説をしてもらった。
土手を左右に横に広げると、一番手前に、小さく盛り上がった箇所がある。
これがクリトリスだという。まだ皮が剥けていないから、自分で剥こうとすると、少し痛いらしい。
おしっこが出る穴も教えてもらった。
そして、その下のおまんこ自身を教えてもらった。
『「ここにおちんちんが入る筈だけど、本当に入るの?」』と言うのが二人の感想であった。
私はお返しにおちんちんを見せた。
奈緒は、父親のおちんちんしか見たことはないと言っていた。
おちんちんは普段小さくなっていて、勃起すると大きくなる。
皮もむけることを説明すると、おちんおちんを触り、しごきだした。
暫くするうちに、お返しとばかり、口に含んだ。
精通はまだだったので、射精はしなかった。
顎が疲れたと言い、奈緒はフェラチオを止めた。
奈緒と私は、見つめ合った。
自然に、私は、奈緒に覆いかぶさった。
奈緒を草むらに押し倒した。
これから何をするか奈緒は悟り、眼をつぶり、私を受け入れた。
セックスのやりかたは、保健体育の事業で習った。
「おちんちん」を『おまんこ』にいれるだけだ。
でもうまくいかない。
縦筋の中に、おちんちんをいれようとしても、入らない
おちんちんが強く大きく発達していないし、奈緒のおまんこも硬い。
だいたい穴がどこにあるか、手さぐりしても、分からない。
挿入角度という概念は、この時は知る由もない。
そんなこともあり、『おまんこ』に「おちんちん」を擦り付けるだけであった。
それでも、性器を擦り付け合うことだけでも、二人は満足した。
これよりも大きい「おちんちん」が『おまんこ』の中に入るって、大人はすごいという結論に達した。
尿意を催したので、なんちゃってSEXを止めた。
奈緒に私がおしっこをするところ見せた。
男の子がおしっこをするところを見たことがないらしく、興味津々であった。
奈緒は、勢いよくおしっこが出て、遠くに飛ばしたことに驚いた。
おちんちんの先からおしっこをしたあと、ブルブルとおちんちんをふって、そのままにしたら、更に奈緒は驚いた。
ティシュで拭かないことに、男女の違いを感じたらしかった。
女の子はおしっこをした後、ティッシュで拭くという。
男の場合、おちんちんの先からおしっこが出る。これは分かりやすい。
だが、女の子場合、縦筋である。
どうやっておしっこをするのだろうか。
当時は、ウルトラセブンのアイスラッガーのように、縦筋全体からおしっこがバシャーと勢いよく出ると思っていた。
奈緒におしっこをするところを見せてもらった。
奈緒は、しゃがんで、おしっこをした。
縦筋全体からおしっこがあふれ、ちょろちょろと滴り落ちる感じだった。
おしっこをしたあと、二つの土手が濡れていた。
この湿ったところをティッシュで拭くのだという。
さっき、おまんこを舐めて、おしっこの味がしたのは、拭き切れなかった、おしっこかと思った。
キスする前に、性器を舐め合ってしまった。
おしっこの見せ合いもした。
セックスも試みたが、不器用なため、土手をおちんちんを擦りつけるだけで終わってしまった。
でも、すごいことしちゃったねと奈緒を私は話した。
ここまでしたから、初めては、私としたいといった。奈緒は私の処女を私に捧げると言ってくれた。
また今度しようということになった。
今日したこと、この場所のこと、ふたりの秘密にしようということになった。
以上が、9月初めの出来事である。
性の冒険の始まりである。
今、思い返せば、人生の転機は、この日の出来事だと言っても良いかも知れない。
他の同級生よりも、早く経験したためか、優越感を感じたためか、
この日を境に、受け身な性格から何事も積極的に取り組むことができたと思う。
その後はと言うと、奈緒とは頻繁に、草むらの秘密の場所に行った。新しいエロ本が置いてあったり
二人でいっしょに読んでは、お互いの性器を舐めあったり、おしっこの見せ合いをした。
冬になり寒くなってからは、秘密基地では、遊ばなくなった。
代わりに、奈緒の家で遊んだ。
奈緒の家は共働きだったので、6時までは両親が居なかったからだ。
奈緒をファーストキスをしたのは、中学生になって初めてのゴールデンウィークを過ぎた日曜日だった。
二人とも興味本位で性器で遊ぶことはやっても、キスは神聖なものと思い、なかなかできずにいた。
奈緒としっかりと結ばれたのは、中学2年の夏だった。
お互い14歳。気持ちが大きく揺れ動く年齢である。
SEXをしたい、経験をしたい、前に進みたい、友達より早くしたい、
どんなに気持ちいいか感じてみたい、という気持ちが強かっただけである。
男はねじ込んだ、女は無理に広げてられて受け入れてしまった、という感じであった。
私の不器用さも手伝って、奈緒は相当痛がって出血もひどかった。思い返すと、初貫通の儀式に奈緒の体は良く耐えたと思う。
奈緒が初めてイったのは、中学2年から3年に変わる春であった。
奈緒の話によると、今まで肌を重ね合わせていたけど、心の中で壁を作っていた。
このまま心まで委ねて良いのか自問自答していたらしい。
この日は、心も許したと言っていた。
奈緒に言わせると、『溶け合う』といった表現が正しいみたいだ。
触れ合った部分から何かを感じ取るのではなく、心の壁をなくし、身も心も委ねたところ、イったということだ。
奈緒との関係は高校時代も続いた。
私は県の進学校に通い、奈緒は女子高に通った。
奈緒も私も十分体が成長し、発育の良い男女であった。
奈緒も私も浮気せず、お互い、一途という感じで、たくさんセックスをした。
怖いもの知らずであった。
ビルの非常階段であろうが、女子高校の階段の隠れたところであろうが、河原の草むらであろうが、エレベータの中であろうが、とにかく姦った。
東京タワーへ登る階段で姦ったことがあるカップルは、そうそう居ないであろう。
奈緒の肌には、私の汗と唾液が染み込み、所々、爪の跡や歯型が刻み込まれている。
奈緒の体内には私の遺伝子が注ぎ込まれている。
安全日には膣の精子を注ぎ込み、口の中にも喉の奥にも出した。
奈緒に許可をもらって、顔射も何回かしたことがある。
私は、奈緒の口の唾液も飲んだ。
それ以上に、むっとした匂いと共に、膣からあふれ出る粘液を舌ですくい取った。
高校時代、奈緒と私はそのような融け合う関係だった。
高校を卒業し、私は東京の国立大学に通うことになった。
自宅から1時間ぐらいだし、授業料も安いし、何より文句のつけようがなく、ここが良いと思った。
奈緒は、親の転勤のため、地方に引越しすることになった。
東京から1000kmも離れたところである。
ゴールデンウィークには、奈緒に会いに行った。
1か月ほど会えなかった分、大いに燃えに燃えた。
たった一ヶ月間とはいえ、離れ離れ暮らしていたのである。
奈緒の生活をすべて壊し、奈緒も壊したかった。
狂おしいほどに、全てを奪い取りたかった。
後にも先にも、こんな気持ちになったのは、これが最初で最後である。
奈緒の体を無茶苦茶にした。
奈緒は口ではダメと言いながらも、奈緒の体自身がそれを受け入れた。
何かを感じ取ろうとする奈緒の苦悶に満ちた表情、取り憑かれたように激しく暴れだす身体、そして弛緩と収縮を繰り返す奈緒自身が忘れられない。
しかし、遠くの白鳥よりも近くのガチョウとは良く言ったものである。
夏に、お互い好きな人ができた。
奈緒とは、大学1年の晩秋に別れた。
奈緒が本当に好きだったかと言えば、分からない。
近くに居たということが、つきあっていた最大の理由であろう。
奈緒が少女から大人になる時期、12歳から19歳までの間、7年間、
体と心の変化を奈緒と共有した。
間接の硬さ、骨っぽさが残る身体、張りつめた肌から、柔らかい身体、みずみずしい肌になるまで過程を、ゼロ距離で、私の肌を通じて感じることができた。
奈緒が、少女から大人になる過程、奈緒の体の隅々まで、私の眼が、指が、舌が、性器が、爪が、歯が知っている。
二人とも、最初は性への興味しかなかった。
ただ、セックスを通じて、お互いに、男女が肌と肌を触れ合うことの大切さ、男女のゼロ距離間を知った。
中高生にとって、ゼロ距離間は新鮮だった。
相手のことを愛おしく想うこと、相手のことを考えてあげられる余裕を感じること、相手のものを全て奪う気持ちに陥ることも知った。
奈緒には、セックスを楽しむこと以上に、自分以外の他人とのつきあい方、人との関わりといった面で、ずいぶんと成長させてもらった。
高校3年生のころには、周りがずいぶん子供じみているとさえ思えたほどだ。
中高生は、得てして自分のことだけを考えがちだが、他人の気持ちを考える、他人が望んでいることをしてあげるといった他人を想う気持ちは奈緒から学んだ。
対人間関係という点で、ずいぶん成長したと思う。
私も、そして奈緒も。
奈緒とは、別れてから一度も会っていないが、今でも年賀状のやりとりはしている。
奈緒は、今、遠く東京から離れたところで、2児の母親になっている。
年賀状の写真を見る限り、幸せそうに暮らしていると思える。
私も2児の父親になっている。
毎日、忙しい日々を送っている。
世界の荒波の中で、日本をどう動かすか、考え、実行する立場にいる。
私は、日本を、自分の家庭を、奈緒と過ごしたこの大地を守るため、負けるつもりはない。
地球温暖化が進み、毎年、気温が上昇している。
残暑も毎年厳しくなる一方であり、アスファルトからのむせかえしも、感じる回数が多くなったように思う。
そして、アスファルトの強烈な匂いと共に、思い出す。
あの秘密基地の出来事を。
そして、懐かしく思う。
奈緒と過ごした甘く退廃的な青春時代を。
そして、左薬指に感じる。
あの濃厚な蜜に覆われた柔かい襞の感覚を。
完