家庭教師の女子大生が恋をした生徒は鬼畜青年だった3
2018/08/02
16話
千佳 「ふぅ……さっぱりした。」
お風呂から上がった千佳は、濡れた髪の毛をタオルで拭きながらベッドの上に腰を下ろした。
ここは千佳が大学に入って一人暮らしを始めてから3年以上住んでいるアパート。
部屋の中は決して広くはないものの、女の子らしく綺麗に整頓されている。
1Kの平凡なアパートだが、千佳はこの部屋を気に入っていた。
部屋に友達を呼んで飲み会をしたり、時にはお悩み相談なんかもしながらいっしょに泣いたり笑ったり。
ここには千佳の大学生活の思い出が詰まっているのだ。
ここに住んでいられるのもあと数ヶ月。そう考えると少し寂しいような気がする。
しかし、千佳にとっての青春の大学生活は続いているのであって、まだ終わってはいない。
それどころか今日千佳は、その大学生活の中でも一番心を掻き乱されるような出来事に直面したのだから。
千佳 「……。」
髪にドライヤーを掛け終えた千佳はベッドの上に寝転がり、天井を見つめながら自分の胸の膨らみにそっと手を当てた。
まだ残ってる。
康介の手に触られたあの感覚が、まだ残ってる。
大きな手だった。
女性の手とは違う、少し日焼けしたような色の男らしい手。
それが自分の乳房をイヤらしく揉んできた。
ただの?揉む?ではない。あれは女を感じさせようとする揉み方だった。
激しくしたり優しくしたり、乳首を摘んできたり。
次々に康介の手から自分の体内に熱が送られてくるような感覚が続いて、すぐに身体が火照り、力が入らなくなってしまった。
それはつまり、正直に言えば、気持ち良かったという事だ。
千佳は高校生の康介相手に性的快感を感じていたのだ。
それも今まで感じた事がない程の快感を。
自分が胸を触られただけであんな声を漏らしてしまうなんて思わなかった。
前の恋人が相手の時はそんな風にならなかったのに。
康介の手つきは、まるで女性の身体を知り尽くしているかのような動きをしていた。
きっと女性の身体を触るのは初めてではないのだろう。
いや、それどころか随分と慣れているような印象だった。
ずっと切羽詰った状態だった千佳に対して、康介の態度は落ち着いていたというか、余裕が感じられた。
それは自分よりもずっと年上の男性に相手をされているかのような錯覚を覚える程。
あの時間だけ、康介は大人の男性だった。
そしてその大人の男性の腕の中は、とても心地が良かった。
もちろん緊張や恥ずかしさもあったが、それ以上に何か心のどこかで?安心?というものを感じている自分がいたのだ。
康介の体温、匂い。今でもすぐに思い出せる。
千佳 「ハァ……」
寝ていた身体をゴロンと横に向け、枕を抱き締める千佳。
千佳 「……私……」
高校生相手に何をしているんだろうと自問自答する。
康介君はまだ高校生なのに。
しかも恋人でもないのに、あんな事……。
ううん、高校生と大学生が恋愛をしてはいけないなんて事はないかもしれないけど。
でもこれって恋なのかな……。
分からないよ。
私は来年から社会人。康介君は来年もまだ高校生。
無理だよ……絶対無理無理。
そんな考えがグルグルと頭を駆け巡る。
千佳 「……康介君……」
もう一度自分の胸に手を当てる千佳。
胸が高鳴っているのを手で感じながら、自分で自分の胸を揉んでみる。
康介にされたのを思い出しながら。
そして片方の手を下半身に持っていき、スッと下着の中にいれる。
……濡れてる……
康介に対する気持ちが混乱する一方で、千佳の頭の中はすっかりピンク色に染まっていたのだ。
ずっと触りたかった。
いつものように駅まで送ってもらって、改札口で康介と別れてからずっと。
康介の事を思いながら、ここを刺激したいとずっと思っていた。
胸を触られて、火照ってしまった身体を早く慰めたかった。
着ている物を全て脱いで裸になり、本格的に自慰行為を始める千佳。
千佳 「ああ……康介君……ハァ……」
この夜、千佳は何度康介の名前を呼んだだろうか。
名前を呼ぶ度に、解れた女の割れ目から溢れた愛液は、ベッドのシーツに染みを作っていた。
17話
最近千佳がよく1人で行くカフェがある。
康介の家庭教師をやるようになってから見つけた、小さなカフェ。
人気店という訳ではなく、席は空いている事が多く、時には客が千佳1人だけなんて事もある。
しかし人混みが苦手な千佳にとってそれは好条件であった。
メニューは豊富とは言えないけれど、どれも丁寧に作られていてコーヒーや紅茶も美味しい。
心地良いBGMが静かに流れるそんな店内で、1人ゆっくりと過ごす。それが最近お気に入りの千佳の至福の時間。
親友の尚子にもまだ教えていない、自分だけの秘密の場所。
康介の家から最寄にある駅の近くなのだが、ここでいつも家庭教師のアルバイトに行くまで千佳は時間を潰しているという訳だ。
そして今日も康介の家庭教師があるため、千佳はこの喫茶店で1時間程ゆっくりとした時間を過ごしていた。
……今度、康介君にここ教えてあげようかな……
そんな事を思いながら、紅茶を口にする千佳。
するとそのタイミングで千佳の携帯が鳴った。
尚子 『千佳、お誕生日おめでとう。来週になっちゃうけど誕生日プレゼント持ってくねっ!あとちゃんとおみやげも買ったから楽しみにしててね。』
と、現在初めてできた彼氏との初めての旅行に出掛けている、少々浮かれ気味の尚子から誕生日祝いメール。
あっ、私今日誕生日かぁ、忘れてたぁ……なんて事はない。
千佳自身、今日が大学生活最後の自分の誕生日である事はしっかり覚えていた。
千佳 「……はぁ……」
今日はお祝いメールが友人から何通も来た、あと母親からも。でもそれだけ。
それ以外に何かいつもと変わった事はない。
当日になるまでそんなに気にしてはいなかったが、いざ日頃となんら変わらない平凡な誕生日を過ごしてみると、やはり少し寂しい気持ちになる。
いや、正直に言えば凄く寂しい。
数日前に何人かの女友達からどこかのお店で誕生会をやろうかと提案されたが、千佳はそれを家庭教師のアルバイトがあるからと断ってしまった。
でも良いんだ、と千佳。
今日も家庭教師のアルバイト。
今日もいつも通り、あの康介の部屋で、2人きりで勉強をする。
なんとなく、それで良いんだと千佳は思っていたのだ。
最初は億劫だった家庭教師の仕事。
しかし始めてからもう数ヶ月。その時が過ぎるのはあっという間だった。
楽しい時間は早く過ぎるというあれだ。
そんな時間の中に、大学生活最後の誕生日が含まれていても別に良いじゃん。
千佳 「あと30分か……紅茶おかわりしちゃおうかな。あとケーキも。いいよね、誕生日だし。」
康介の分も持ち帰りで買っていって、あの部屋で2人で食べるのも良いかもしれない。
私、実は今日誕生日なんだ。ケーキ買ってきたからいっしょに食べない?
いやいやそれは変か。自分で自分の誕生日ケーキを買って行くなんて、しかも他人の分までなんて絶対変だよ、どれだけ寂しい女なんだって言われそう……と思い直したり。
……でも、それも良いか……なんか康介君ならどんな事も笑顔に変えてくれそう……
……よし、ケーキ買っていこう!……
散々迷った挙句、そう決めた千佳は店員を呼んだ。
が、店員が千佳の所へ来るまでの間、ふと店内から窓の外を眺めていた千佳の目に、駅前を歩いているある人物の姿が映った。
千佳 「……康介……君……?」
そこには学生服姿の康介が、誰かと話しながら歩いている姿があった。
そういえば康介君の制服姿は初めて見た、やっぱり背高いなぁなどと、一瞬そんな事を思った千佳だったが、康介の隣を歩くもうひとりの人物を見た瞬間、驚きを隠せない様子で目を丸くした。
……ぇ……女の子……?
そう、康介の隣で歩いていたのは、康介と同じ学校の生徒と思われる制服姿の女の子だった。
背の高い康介と、容姿の整った綺麗な女の子。
傍から見れば、どう見てもカップルだ。しかも凄くお似合いの。
2人共ずっと笑顔で、なんだか凄く楽しそうに話してる。
千佳 「……。」
まるで千佳が康介に、いつも夜駅まで送ってもらう時みたいに楽しそう。
いや、その時よりも康介の笑顔が明るく見えるような気がする。
本当に、楽しそう……
「あの、お客様……?」
そう呼び掛けてくる店員の声に、千佳はなかなか反応する事ができなかった。
思いがけない光景を目の当たりにしてしまい、心が大きく動揺してしまっていたのだ。
18話
結局ケーキは買わなかった。
だって、とてもそんな気分にはなれなかったから。
先程までとは一転、今は康介の家に行く事を考えるだけでもなんだか憂鬱になる。
でも、もう行かないといけない時間だ。
今日は休んでしまおうかとも少し考えたけど、当日に、しかもこんな直前に休ませてくださいなんて無責任な事は千佳にはできない。
カフェを出た千佳は、重い足どりで富田家に向かった。
そういえば、自分の過去の恋愛事情は康介から何度も聞かれてきたけれど、逆に康介の恋愛事情を千佳から聞く事は今までなかった。
考えてみれば康介は、容姿は整っているし勉強もある程度できる、それに話し上手だ。
そんな男の子が、多感な時期を迎えている子が多い高校という空間の中で異性にモテない訳がない。
だから康介に彼女がいたとしてもなんら不思議ではないのだ。