エリカ様お仕置き(4)

2018/01/10

「ククク……ははははっ」彼女とのやり取りを終え、笑いが込み上げてくる。
(くくっこんなに、上手くいくとは。本当に馬鹿な女だ!)これほど簡単に事が運ぶとは思ってもいなかった。
心配していた自分が馬鹿らしい。
窓の外では夜の喧騒が聞こえ、空には月が輝いていた。
――一週間前。
沢尻エリカお仕置き計画に見事成功した佐藤は、証拠の写真を例の飲み会参加者たちに披露していた。
参加者たちから佐藤に向けて、賛辞が述べられる。
「いやぁ、よくやったなぁ」
「ほんと、お前、こっちの仕事の方が向いてんじゃねぇの?」実際、雑用係にしておくのは勿体ないほどの裏の仕事っぷりではあった。
しかし、佐藤としては、これ以上危ない事をしたくはなかった。
沢尻エリカもあれだけの事をされたのだ。
少しは大人しくなるだろう。
皆の鬱憤を晴らすのは、撮ってきた写真で充分なはずだ。
だが、満足して去って行くはずの先輩たちの口から次に出た言葉は……。
「次は動いてる沢尻エリカを頼むよ」
「お前ならやれるよ」
「じゃあ、頼んだよ」無責任な言葉とともに去っていく先輩たち。
独り取り残された佐藤。
「マジかよ……」だが、こうなってはやるしかないだろう。
それも、沢尻エリカを完全に堕とすくらいの映像を撮らなくては……。
こうして、佐藤の次なる戦いが始まったのだった。
「ふぅ……」ホテルの室内に、佐藤が吐いた煙草の煙が広がっていく。
この場所についてから、既に30分以上が経とうとしていた。
(しかしまぁ……よく準備してくれたものだ……)部屋の中には、テーブルとソファーが準備されている。
一見、本当にオーディションが行われるような雰囲気が演出されている。
また、ここからはわからないが、撮影用の大掛かりな機材が準備されている。
「お前らにも迷惑をかけるな……」
「いえ、佐藤先輩の頼みですんで。それに、俺らもあの女には嫌な思いをさせられましたから」佐藤の横には、今回の計画のために呼んだ撮影班の岡野と協力班の内山が立っている。
今回はさすがに1人では厳しいため、後輩にわけを話して頼んだのだ。
「さて、ターゲットが来るまで、後もう少しあるな。計画の確認をしておくか……」佐藤は目の前に立っている男たちに声をかける。
仕事の協力をしてもらうからには、計画に沿って動いてもらわないといけない。
失敗する事が無いよう、彼らに話を続ける。
「とりあえず、オーディションを偽る。顔の割れている俺がここにいるのはまずいから……まず、お前たちがターゲットの相手をしてくれ。俺は、隣の部屋で待機しておく……何かあったらすぐに連絡してくれ」内山に面接官をさせ、佐藤は機会を伺う寸法である。
こうする事により、不意に彼女を襲う事ができる。
「ビデオ撮影の方は、俺が現れてからにしよう。くれぐれも、最初から撮影はするな」オーディションが始まる前からビデオを撮影すると、彼女に疑われる可能性がある。
不安分子は最初から潰しておくに越した事はない。
(よし……後はアイツを待つだけだ……)計画の確認が終わり、佐藤は隣の部屋に身を隠す。
(さて、後少しだな……)目の前に、一台のモニターが設置されてある。
その電源を入れると、隣の部屋が映し出される。
(これで、隣の様子もわかる……)撮影が失敗した時の事を考えて、自前で準備したビデオカメラが、このような形で役に立つとは、思いもしなかった。
隣の部屋の物陰にビデオカメラを隠し、それに映った映像が佐藤の目の前のモニターに、リアルタイムで送信されている。
(思った以上に綺麗なもんだ。これで撮ってもよかったな……)失敗した時は、これを見せれば問題はないだろう。
別の策も練っておいて、正解といったところであろうか。
時計を見ると、もうすぐ指定の10時になろうかという時間である。
少しずつではあるが、心が高揚してきている。
エリカが現れないという不安もある。
だが、佐藤はエリカが現れると確信している。
これといった根拠はないが、彼女のあの喜びようから判断すると、かなりの確率で現れてくれるだろう……。
コンコン。
(来たな……)隣の部屋から、ノックの音が聞こえる。
「し、失礼します」明るい声で、「沢尻エリカ」が現れる。
普段と同様の服装ではあるが、どことなく緊張しているようである。
微妙に声が裏返り、言葉を詰まらせている。
エリカはゆっくりと面接官のいる方へと歩を進め、ソファーの横で立ち止まる。
そして、偽りの面接が始まった。
面接官を装った内山は、エリカに質問を投げかけている。
エリカもまた、その質問に答えているが、どうもまだ緊張が抜けきっていない。
(よくもまぁ、こんなので、人前に立つ仕事が出来るもんだ……)彼女の受け答えを聞いていると、笑いしか出てこない。
普段、あれほど勝ち気な女が、これほど緊張癖があるとは……。
人間、見た目ではないという事であろう……。
内山も、笑いを堪えるのに必死な形相である。
(さて、お遊びはこれくらいにして、そろそろやるか……)佐藤はその場から立ち上がり、隣の部屋へと向かった。
ガチャ。
「は、はい、それは……!?」目の前では、偽りのオーディションが行われている。
面接を受けるエリカは横から聞こえてきたドアの音に気付き、こちらを振り向く。
そして、佐藤の顔を見た瞬間、彼女は硬直する。
「よくそれでオーディションを受ける気になったな」エリカを見つめほくそ笑みながら、ゆっくりと彼女に近付いていく。
「あ、アンタ……!何でここに……!アンタなんかが、来れるところじゃないっ!」
「随分酷い事を言うじゃねぇか……」
「で、出て行きなさいよ!邪魔しないで!」
「ん?何の邪魔なんだ?オーディションのことかぁ?」緊張の糸が切れたエリカは、佐藤に向かって罵倒する。
だが、そんな彼女の姿が、佐藤には笑えて仕方がない。
「くくっ……まだ、オーディションを受ける気でいるのか?馬鹿な奴だ……なぁ、お前もそう思わないか?」笑いながら、エリカを面接していた内山に話しかける。
「えぇ……もう、笑いを堪えるのに必死で……」彼女の目の前で、佐藤と協力班の内山が笑い声を上げる。
「あ、アンタ達……も、もしかして……!」
「あぁ、その通りだ……これはオーディションなんかじゃない。お前を陥れるために、芝居をしていたんだよ……」全てを悟ったエリカの表情は、凍りつき、徐々に青ざめていく。
「か、帰るわ!こんなところにいたら、何をされるか!」そう言って、彼女は入口に向かって走り出そうとする。
だが、内山が行く手を塞ぐ。
「どこに行こうというんだ?」
「どきなさいよ!アンタ達に関わっている暇はないのよ!」
「無駄だよ……逃げられると思ってるのか?ほら、出て来いよ……」エリカが内山に罵声を浴びせかけている後ろで、佐藤は撮影班の岡野を呼び寄せる。
すると、佐藤が現れた部屋とは別の部屋から、機材を持った岡野が現れる。
「今から、撮影を行う……準備はいいか?」
「えぇ、ばっちりです。良い画を撮りますよ」
「な……!?何するつもりなのよ!」佐藤のやり取りを聞いたエリカは、恐怖に顔を引きつらせる。
そんなエリカに、佐藤はゆっくりと近付く。
「見てわからないのか?お前のビデオを撮るんだよ……」
「私のって……や、やめなさいよっ!」佐藤に向かって、エリカは悲痛な叫び声を上げる。
恐怖から、彼女は瞳に大粒の涙を溜めている。
「さて、やるとするか……」協力班の内山に顎で指示すると、内山は頷いて、エリカの元に歩み寄る。
そして、エリカの身体を押さえ付ける。
「やめ、やめてぇっ!いやぁぁぁぁっ!」男に押さえ付けられたエリカは、大きな声で叫ぶ。
だが、この部屋の防音設備は完璧であり、周りに声が漏れる事はなく、ただ、室内に彼女の声が響き渡る。
「ソイツの服を脱がしてやれ……」内山はにやにやしながら佐藤の言うことを聞き、エリカの衣服に手をかけていく。
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