バイト先で知り合った高校生と

2017/09/28

俺が大学に入りたての頃、バイト先で知り合った子がいた。
その頃俺はバイト先を探していて、面接回った挙句、駅前のレンタル屋に決まったんだ。
CDとかDVDのレンタルね。
シフトは曜日によって変わるんだけど、大体夕方から深夜にかけて。
店は深夜一時までだったから、そこまでいる時もあるし、次の日授業が早い時には午後11時くらいで帰らせてもらう時もあった。
仕事には大体、4~5人入っていて人員的には余裕があったからだと思う。
その日の都合で、昼に連絡して遅くに行ったり、早上がりさせてもらえるのは正直助かった。
理解ある店長のおかげだろう。
店長は四十代半ばの日焼けした短髪の人で、爽やかな体育教師みたいな印象だった。
休む時も「テストが・・・」とか「単位がやばくて・・・」とか言うと「しっかり勉強しろ!」なんて言って休ませてくれた。
店長がそんな感じだったから働く環境はわりと良くて、バイト仲間でも長く続ける人間が比較的多くいたと思う。
で、そこのバイトのシフトは夕方五時くらいからは高校生が多くて(って言うかほとんど高校生)、午後10時以降は高校生が働けないから大学生かフリーターが入っていた。
時給的に言えば深夜をメインに入った方が良かったんだけど、俺が採用された時には、深夜は埋まり気味で、誰かの代打じゃないと入れない状態だった。
金も欲しかったけど、環境が良かったので続けたし、午後10時以降の人が休みたい時には積極的に代わるようにしたのと、自分があまり休まなければ給料に不満はなかったので問題はなかった。
夕方シフトに入ると高校生と話を合わせるのが大変だったが、気さくな奴が多くて楽しく出来た。
俺の方が歳上というのもあって彼等も一応気を遣っていたんだろう。
そんな感じだったんで、俺は夕方シフトの高校生と深夜シフトの大学生の両方と仲良くなった。
俺のルックスは基本的にイケメンでもないがブサメンでもない感じ。
中身はかなりのオタク要素があったけど表に出さないようにしていた。
「この映画見ました?」って洋画の話題を振られて、(最近アニメ以外見てねー)って思いながら「見てないけど面白そうだねー、今度見るよ。あと◯◯の新作ってどうなの?」なんて言って適当に話を合わせていた。
あと、基本的に明るく振舞って、感情の起伏が激しくないような人って感じにしていた。
そんな感じで無難に仕事をこなす日々が続いた。
深夜は九割が男なんだけど、夕方は六割以上(七割近くかも)が女で、最初仕事がやりづらいかなって思っていたんだけど、上記のような俺の態度で次第に打ち解けて、年齢差とか性別差を感じさせないくらい仲が良くなっていった。
その中に一人ミホ(仮名)って子がいた。
当時高二でショートカット、スレンダーでもなくポチャでもない普通体型。
自分からは話しかけないけど、話せば明るく返してくれる、そんな子だった。
バイトに入った頃も外見の良さで気になっていたけど、話をする内に、ますます気になっていったんだよね。
自分より歳下の女なんて自分勝手に振舞っていたり、はしゃいでいて楽しけりゃいいノリ重視・・・、要するに子供なんだな、ってその時の俺は思っていた。
でも彼女は、そんな風じゃなくて。
わりと控え目で献身的、でも主張する時には主張するっていう態度が俺には好ましく映っていたんだ。
挨拶もするし礼儀正しいんだよね、根が。
真面目って言ってもいい。
で、二ヶ月過ぎた頃から仕事終わりの時間が重なる時に、店の外で少し話したりするようになった。
って言っても短い時間だし、他にも同じ時間に上がりの高校生がいる時もあったから二人きりっていうのは少なかった。
内容は仕事の話とか世間話で、数分もしたら解散って感じだったね。
彼女のシフトもあるし、俺のシフトもあるから、そんな風に仕事以外の時間で話ができるのなんて週一か二回程度だったと思う。
向こうは特に意識なんてしていないだろうけど、俺の方は段々惹かれていった。
仕事終わりに話すのが当たり前になるようになった頃は、ちょうど梅雨の時期で、彼女は夏服になっていたから制服姿に萌えていたり、短いスカートから覗く太腿にムラムラしていたりした。
彼女は学校帰りにバイト先に向かって来るから制服なわけですよ。
薄手のシャツからブラが透けて見えたりすると、もう・・・ね。
店で会うたびに、色んな意味でドキドキしてた気がする。
最初は、相手にされないだろう、なんて気持ちでいるからなんとも思ってなかったけど、話ができて仲良くなってくると、望みが深くなってくるわけです。
もっと仲良くなりたい、もっと長い時間一緒にいたい・・・って。
で、どうしようもなくなって散々迷って告白する事に決めたんだ。
そこにいくまでも色々考えて結構悩んだよ。
駄目だったら仕事場でお互い気まずくなる。

新しいバイト場を探さなきゃ。
なんて考えてた。
なんだかんだで一ヶ月くらい考えてたかも。
とにかく、悩んでるよりはっきりさせて楽になりたいって気持ちの方が強かったみたい。
結果なんてどうでもいいから言うだけ言おうって決心した。
そう決めてから二人きりになるチャンスを窺った。
その時には携帯番号とかも交換していたから呼び出したりするのは楽だったけど、仕事以外に会うような関係じゃないし、警戒されるだけだ。
『なるべく自然に』がテーマだった。
そうして何とか仕事終わりに二人きりになるチャンスを探っているうちに、あっという間に一週間経ってしまった。
ようやくチャンスが訪れたのが決心から十日くらい後。
もう梅雨明けして夏が来るって頃だった。
その日は、普段だと、俺、ミホ、別の女の子(可愛い)が午後10時上がりのシフトだったんだけど、女の子が急に早退していって、帰りに俺たち二人だけになった。
急な事態だったがチャンスを待っていた俺は「今日だ!」と思った。
俺の働いている店は、さっきも書いたように駅前にあって。
その近くにはマンションがあるんだけど、昼にはそこの主婦達が集う小さな公園見たいな場所があるんだよね。
で、そこに「ちょっと行ってみない?」みたいな軽い感じで誘った。
もう梅雨も終わりかけで雨も降ってなかったから午後10時くらいには適度な気候で、彼女も「涼しいし、たまにはいいかもね」なんて乗ってきた。
公園は、あまり広くなくて背の高い木が周囲に植えてあって、いい感じに薄暗い。
あちこちにベンチが置いてあって適当に外灯が並んでいるくらいで、あとは何もなかった。
行ってみると、たまーに通り掛る人がいるくらいで、ほとんど人影は見えない。
もしかしたら、いるのかもしれないけど、木陰とかベンチの背もたれ(結構高い)とかに遮られて、よくわからない。
いても2、3人だろう。
どちらかと言うと、ビルやマンションの外壁とかに囲まれていて閉鎖的な場所だと思った。
着いて5分もしないでベンチに座った。
なるべく人目につかない場所を、さり気なくチョイス。
俺の左にミホちゃんがいる。
その向こうは木の幹があって、ちょうど木陰って場所。
暗いのもあって俺の右側の方しか周りからは見えない感じ。
で、それとなく雑談をしながら機会を見計らって言った。
もともと決めていたから、ここまで来たら躊躇いはない。
もう、ズバッと直球。
あんまり覚えてないけど、「段々好きになってきて最近は、どうにもならなくなってきた。よかったら付き合ってくれない?」みたいな内容だ。
彼女はしばらく黙っていて何か考えているみたいだった。
俺も返事を待っていたけど、どうにもその沈黙が我慢できなくて「あ、俺じゃ駄目かな?」って言った。
「ん、んー・・・、そういうわけじゃないけど・・・」
「彼氏とかいるの?」
「今はいない」
「じゃあ、どう?」
しつこい。
でも、とりあえず誠意は見せようと思った。
あと、どうせ振られるにしても言えるだけの事は言っておこうと。
それからも彼女は黙っていたけど、
「やっぱり・・・、・・・ごめんなさい」
座ったまま頭を下げた。
まぁ、ある程度は予想されていた事態だったので心の準備は出来ていたが少しショックだった。
それから自分を納得させる為にもう少し突っ込んで理由を訊いてみた。
彼女はあまり話したがらなかったが、最終的には俺の質問にイエス、ノーと答えてるうちに少しずつ色々話してくれた。
それによると、一年の時(去年ね)に付き合っていた彼氏がいたらしい。
でもその彼氏とは、向こうに気になる女ができたのと、ミホの方の気持ちが冷めてきたのが同時になって別れてしまった、という事。
彼女は二年になるので、そろそろ受験勉強をしたいから来年になったらバイトも減らしていきたい。
彼氏を作って遊んでいる時間はないと思う。
今は特に好きな人はいない。
以上が彼女の話の大筋だ。
若干ニュアンスが違う所もあるかもしれないが、大体こんな感じ。
勉強の邪魔にならないようにするとか、そんなに遊べなくてもいいからとか、色々言ってみたけど結局駄目。
「そっかー」と最後に溜息混じりに呟いた。
「ごめんなさい」彼女は申し訳なさそうに謝った。
彼女の話を聞いている最中から段々俺の中で気持ちの変化が起きていて、どうせ駄目なら言うだけ言ってやろうっていう風になっていった。
「普段、そんなに熱く話すキャラじゃないから驚いた」と、後日彼女が俺に言ったくらい、その日の俺は違ったらしい。
それから恋愛話を中心に色…

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