妹、千夏との思い出

2017/07/27

一昨年の夏休みの事。
俺はバイト先の慶子ちゃんをリゾートホテルのプールへ誘おうと、必死で稼いだバイト代を注ぎ込んで某旅行会社のネット販売の格安チケットを購入した。
格安とは言え、リゾートホテルの宿泊チケットは二人合わせて5万円程・・・。
慶子ちゃんとは友達以上、恋人未満な関係で、2人だけでデートはするものの、キスすらしたことなく、せいぜい手を繋いで歩くくらい。
それ以上の関係にはなってなく、それは俺がはっきり慶子ちゃんに告白していないのが原因であるのが分かっていた。
だからこそ、勇気を振り絞って告白して、リゾートホテルのプールへ誘うつもりだった。
・・・が、彼女の予定も聞かず、『期間限定特別料金、早い者勝ち!』の文字に気持ちが先走り、ホテルのチケットを購入してしまったのが運の尽き・・・。
告白は成功したものの、ホテルでの宿泊は断られてしまった・・・。
だが、単に嫌だったからではなく、どうしてもその日だけは空けられない大事な家族との約束があったからだ。
だから、慶子ちゃんは本当に申し訳なさそうに何度も謝っていた。
そして、この埋め合わせは必ずすると約束までしてくれた程だ。
まぁ、晴れて恋人同士になれただけでもOK!だったかな・・・それにキスもしたし♪
でもなぁ・・・。
この宿泊チケットを無駄にしてしまうのは余りにも勿体無さ過ぎる!!
友人に半額でもいいからと売り込んでみたものの、全て断られてしまった・・・。
それにもう日が無い・・・。
翌日からの二泊三日しか使用できないのだった・・・。
そんな事を考えながら自室のベッドで、「はぁ~」とため息をついていると、突然、部屋の扉が開く。
「じゃーん!見て!見て!可愛いーでしょー♪この水着~」と、高校2年の妹が騒がしく入ってきた。
黄色を基調としたワンポイントの柄の入ったビキニの水着を着て、目の前でくるっと一回りして見せる。
上下共に紐で結ぶタイプのビキニの水着で、確かに可愛いと言う表現があっているようだった。
「なんだぁ、買ったんか?」
そう聞くと「うんっ!お小遣い溜めて買ったのだぁ♪」と嬉しそうに妹は答えた。
が、次の瞬間・・・
「なのに、なのに・・・皆ってば私一人ほったらかしで彼氏と海だ!プールだ!って、『千夏も一緒に行く?』なんて、嫌味にしか聞こえない気遣いして、うん、行く!なんて言える訳ないじゃん!キィー!」と、地団駄を踏み悔しがっていた。
「そっか~、千夏も泳ぎに行けないんかぁ~」
「千夏も~・・・って、お兄ちゃんも行く予定があったの?」
「ん~・・・予定と言うか、つもりと言うか、希望と言うか・・・」
「はぁ~?」
訳分からない顔をしている妹に説明した。
「バイト先の慶子ちゃんとリゾートホテルのプールへ行きたいなって、いままで有耶無耶な関係だったのをハッキリさせようと勇気を出して告白したわけさっ!」
「うん!うん♪」
興味津々に聞いてくるので・・・
「それでな、告白は成功!」
「マジッ!やったぁー♪おめでとう♪」
パチパチと乾いた音をさせて拍手をする。
「お、おう、サンキューな・・・。そんでな、その勢いで、一緒にプールへ行こう泊りで・・・って言ったら、『えー!ホントにぃ~!嬉しい♪行きたい!で、いつ?』って聞くから、◯日から・・・つまり、明日からの、二泊三日でって答えたら、その日はどうしても外せない大事な家族との約束があるって言うのさ・・・」
最後は暗い表情たっぷりで説明を終らせた。
「ふぅ~ん、そっかぁ~。それで、お兄ちゃんも行きそびれた・・・と」
ちょっと同情しますみたいな口調で言ってきた。
「まぁな・・・」と、素っ気無い返答をした。
「ねぇねぇ、そのホテルのチケットって幾らしたの?」
急に慰めの言葉でも掛けてくるのかと思ったら、いきなりチケット代を聞いてきたので、「ん~?5万くらい・・・」正確には税込みで52,500円なんだけど、細かい事は言わなかった。
「えーっ!5万もしたの!?それで、どうしたのチケット?誰かにあげちゃったとか?」
「いや、あげはしないけど売るつもりで話したら、全て却下!いまも俺の手元にあるっちゅーわけぇ~」
答えながら、ヒラヒラとチケットを千夏に見せてやると、スッと奪い取る様に俺の手から取る。
そのチケットに書かれているホテル名を見て、「えっ!◯◯リゾートホテルなの!?マジっ!」と、本気で驚いていた。
「ここって超~人気のリゾートホテルじゃん!よくチケット買えたじゃん!?しかも格安でっ!凄い!」
「そんなに凄いのか?」と、そのホテルがどれだけのものか知らない俺は千夏の驚き様を見て逆に驚いた。
「凄いなんてものじゃないよ~!恋人と一度は行って見たいランキングでは常に上位に位置するリゾートホテルだよ~いいなぁ~私も行きたいなぁ~♪」と、チケットを握り締め、ウットリとした目で遠くを見つめる様に呟いた。
「相手が俺でよければ一緒に行くか?」
どうせ後は捨てるだけのチケットだから、千夏さえ良ければ連れて行っても良いと思い尋ねた。
「えっ!マジっ!?いいの?」
「ああ、千夏さえ良ければ連れて行ってやるぞ」と、ごろ寝していたのをやめ、ベッドの端に座り直して妹に答えたら、「ヤッタァー♪お兄ちゃん、ありがとー♪大好きぃ~♪」と、突然飛びついてきたものだから、そのままベッドに押し倒される格好になった。
それから直ぐに出掛ける支度をして、その日の夜に母親に事情を説明して2人で出掛ける事を申し出ると、あっさり許可が出た。
が、その後は「羨ましいわ~。いいわね~。お母さんも行きたいわ~。でも、仕事あるし・・・」と、嫌味をたっぷり聞かされたが・・・。
翌日、10時頃家を出て電車を乗り継ぎ、途中で昼食を済ませると、13時過ぎに現地へ到着した。
チェックインを済ませると、ホテルの係員が部屋まで荷物を持って案内してくれた。
部屋の前まで来ると、後は自分達でやるからと帰させた。
部屋は7階の西側の角部屋で、扉を開けると真っ先に妹が中へ入って行く。
すると突然「えーっ!ナニこれーっ!」と、叫び声が聞こえてきた。
何事かと思い、直ぐに妹の傍へ駆け寄ると「ベッドが一つじゃん・・・」と、ポカンと口を開けた状態で言ってきた。
それを聞いた俺は「なんだ・・・」とポツリと呟いた。
「お兄ちゃんのエッチィー!慶子さんと、あんな事や、そんな事や、こんな事するつもりだったんでしょ!?」とムキになって聞いてくるから「当たり前だろ!そのつもりで、このホテルのチケット買ったんだから!」と言い返す。
「キャー不潔~」と自分の身を守る様に両腕を前で盾の様にガードする格好で左右に身体を振ってからかってきた。
「アホかっ!」
俺はちょっとキレかけて少し強い口調で言いながら、持っていた荷物を乱暴に降ろした。
「えへっ♪冗談だってばぁ~怒っちゃヤダぁ~♪」
俺を怒らせてしまったと思ったのか、急に態度が変わり猫なで声で甘えるように俺の機嫌を窺ってきた。
まぁ、本気で怒ったわけじゃないから、「別に怒ってねーよ!」と言い、少し疲れてたので、そのベッドに横になって休んでいた。
すると水着姿の千夏が「ねっ!泳ぎ行こうよっ♪」と、横たわっていたオレの腕を掴むと起こそうとしてきた。
それにしても着替えるのが早い。
疑問に思った俺は思わず聞いてしまった。
「着替えるの随分早いなぁ?」
すると「だって家から着て来たから♪」と無邪気な笑顔をして、まるで小学生の様な屈託無い笑顔で答えたのを覚えている。
それから俺も水着に着替え、部屋に備え付けられたガウンを羽織りプールのある方へ向った。
ここのホテルの利点は部屋からプールまで、逆にプールから部屋までを水着のまま行き来出来ることだ。
プールの入り口脇には各部屋ごとのロッカーが備えられていて、部屋のカードキーで開閉出来る仕組みになっている。
しかもプール利用客専用フロントもあり、カードキーを無くさないように預けることも出来るという、流石は人気リゾートホテル!至れり尽くせりの対応だ。
さらに今回のチケットはプール利用者全員にドリンク飲み放題まで付いているので、プールサイドのイスに座って優雅にカクテルなんかを飲んだり出来てしまう。
ちょっとしたセレブ気分が味わえるのが気に入った。
プールに入ると妹は水を得た魚の様にキャッキャッとはしゃぎ回り、一人で何処かへ行ってしまった。
俺はそんな妹を横目に、流れるプールをぼんやりと眺めていた。
大体の客はカップルか家族、たまに女の子同士の数人のグループが楽しんでいた。
流石に男同士のナンパ野郎は居ないようだった。
そんな中で3人グループの年の頃は20~23歳のかなりイケテル女の子達を発見!
早速俺は女の子達に近づいて行った。
女の子達も俺の存在に気が付いていた様子で、直ぐに打ち溶け合って話をするようになった。
聞けば彼女たちは女子大の仲間で、夏休みを利用して遊びに来ているとの事だった。
俺は心の中で慶子ちゃんに謝りながら、彼女たちとの時間を楽しんでいた。
と、ここで一つ問題なのが妹だ・・・。
もし仮にここで上手く彼女達の誰か一人でもゲット出来たとしても、同じ部屋に妹が居ては何も出来ない・・・。
う~ん困ったなと、一人ブツブツ悩んでいたところに、突然、耳を引張られ「コラッ!可愛い妹をほったらかしにして何ナンパなんかしてるのよっ!」と叱られた。
それに対し俺は「何が可愛い妹をほったらかしにだよっ!千夏が勝手に…

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