本音クラブ2/5

2017/07/09

〝美樹ちゃんと姦りたい〟という願望を実現するべく、計画を立てる。30代後半から50代前半という年齢のクラブのメンバー、間違っても、16歳の美樹ちゃんと恋仲になれる器量を持った人物はいない。とすれば、方法は〝レイプ〟か〝脅迫〟か〝催眠術〟しか手は無い。
あいにく催眠術師はメンバーにいなかったし、レイプというのは最終手段として、脅迫という線で話はまとまった。
さて脅迫のネタはどうするか。探すのも面倒だし、時間がかかるので、ネタを作って、美樹を罠に嵌める事となる。
谷村さんが、店の天井、カウンターに向けて監視カメラをつける。そしてカウンターにお金を置いておき、美樹ちゃんに盗ませるという脅迫ネタ。
林さんが、ガラクタ同然の壷を店内に持って来て、(中国の高価な物だよ)と言って、不安定な所に飾っておき、美樹ちゃんに破壊させて弁償を迫るネタ。
ほか数案考えたが、まずはそれを実行してみた。
カウンターの見えやすいところに、2万円を放置。「あっ、オーナー、2万円がこんなところに置いてありますよ。はい」美樹ちゃんは笑顔で私に2万円を渡してくれた。清く正しい美樹ちゃんに、お金を盗ませるのはかなり無理があった。
「この壷、約200年前の、大変貴重な物!お金にしたら、100万円はするヨ」 林さんが高価な物と充分にアピールして、不安定な所に置いておいた壷も、いつの間にやら、安定した所に置き直されている。
優しい美樹ちゃんの心配り。
どうしたものかと考えながら、あいも変わらず盗撮だけは日課のように行い、美樹ちゃんの盗撮されたパンティを鑑賞しては、妄想がどんどん膨らんでいく毎日だった。
ある日、私も知らない事なのだが、テーブルの上に折りたたまれた5千円が無造作に置いてあったらしい。
閉店後にやって来た仁科さんにそれを聞いて始めてその事を知った。5千円は仁科さんが置いたお金だった。
「オーナー、美樹ちゃんから、5千円の忘れ物があったって、聞いてない?」 私は美樹ちゃんから何の報告も聞いていなかった。(美樹ちゃんが盗ったのか!)そう思ったが、証拠は何も無い。ただ、状況を考えれば、美樹ちゃんが一番怪しくなる。
次の日、『本音クラブ』のメンバーが揃って美樹ちゃんの出勤を待った。そして、いつもと変わらぬ美樹ちゃんが出勤して来て、ユニフォームに着替えている間に、店の扉の表に〝準備中〟の札を出して鍵をかけておいた。
着替え終わった美樹ちゃんが更衣室から出てきて、いつもと違う暗い雰囲気の店内に、(どうしたんですか?)と、笑顔でたずねて来る。
「ねぇ、美樹ちゃん。昨日、お金を拾わなかったかい?」唐突に尋ねる私に、美樹ちゃんは、明らかに〝はっ〟とした表情を見せた。「常連の皆に聞いても、知らないって言うから・・・ひょっとしたら美樹ちゃんが知ってるのかなって、思って・・・」 大きな目で私を見つめる美樹ちゃんが、明らかに不安げな表情になった。「・・・ごめんなさい。あたしが拾いました。・・・」美樹ちゃんは、思ったよりも素直に白状してくれた。
その後、美樹ちゃんはこう続けた。「テーブルの上にお金があるのを見つけて、オーナーに言おうと思ったけれど、オーナーが忙しそうだったので、とりあえず、ポケットに入れておいた。仕事が終わって着替える時、オーナーに報告するのを忘れていた事に気が付いたが、欲しいCDがあったのでついそのまま持って帰ってしまった」 美樹ちゃんは深々と頭を下げて、謝罪をしてきた。「5千円は、お返しします」と言う美樹ちゃんに、徳永さんが噛み付いた。「金を返しゃあ、いいってもんでもないだろう、こりゃ、窃盗だぜっ!」鬼の表情を見せる徳永さん。
窃盗と言う言葉と、いつもと違う徳永さんの態度に、美樹ちゃんはビックリしているようだった。「ドロボーは、警察行きダヨ」林さんが呟いた。
美樹ちゃんの表情は益々不安そうになってくるが、今ひとつ現状が把握できていない様子だった。「オーナー、仕方ないだろ、警察呼べよ」徳永さんのこの言葉で、美樹ちゃんは(えっ!!)と、驚きの声を出した。「何で警察に言うんですか?お金はちゃんとお返ししますから・・・」訴えるように私に言う美樹ちゃん。「駄目だな。・・・金を忘れた奴にも責任はあるが、そいつはワシの知り合いで、ヤクザに片足を突っ込んでるような奴だから・・・。金を盗んだ奴を連れて来いって息巻いてる。・・・警察に捕まった方がいいと思うぞ」 徳永さんが勝手な設定で美樹ちゃんに脅しをかけ始めた。
素直な美樹ちゃんは、その話を聞いた途端に青ざめていった。「しかし・・・警察に捕まるとしたら〝窃盗罪〟だぞ・・、親や学校にもばれるし、下手すりゃ・・・退学?」仁科さんがさりげなく美樹ちゃんに事の重大さを伝えていく。「それだけですめばいいけど・・・・親父さんの仕事にも影響が出るんじゃないか?」谷村さんが美樹ちゃんを更に追い詰める。「駄目です!やめて下さい・・・警察に捕まるなんて絶対に嫌です・・・」美樹ちゃんが怯えた表情で首を振りながら誰と無く言った。
美樹ちゃん曰く、美樹ちゃんの高校は私立で校則が厳しい学校。本来であれば、アルバイトも禁止。それがバレただけでも停学処分になるほど。その上、警察に捕まろうものなら退学は逃れられない。がんばって受験して、入学したばっかりの高校、退学になるのは絶対に避けたい。
『本音クラブ』のメンバーにとって都合のいい展開になっていった。「・・・私立だったら、入学金も高かっただろうに・・・親御さんも可愛そうだな・・」仁科さんが美樹ちゃんを哀れむ。「お願いします、警察に言わないで下さいっ・・・もし、警察に捕まったら・・・」美樹ちゃんは捕まった後の事を考え、一層、不安な表情になり、皆に頭を下げてお願いした。「・・・駄目だな・・・軽い気持ちでやったのかもしれないが、金の持ち主が悪かった・・。そいつに酷い目に合わされる位なら、警察に捕まった方がまだましだろう・・」徳永さんが〝美樹ちゃんの為に〟という大義名分で、〝逮捕〟を進める。
美樹ちゃんは、怖くなったのか、大粒の涙をこぼしながら、子供のように泣き始めた。
私は流石に可愛そうに感じたが、美樹ちゃんの涙に興奮するように、メンバーの皆が更に追い討ちをかけていく。
逮捕、窃盗犯、近所の人の白い目、親兄弟の仕打ち、家族に対する非難、友達や彼氏からの中傷、退学、犯罪者としての人生。そんな辛い事を美樹ちゃんに聞かせた。
美樹ちゃんは、立っていられないほどのショックを受け、その場に座り込んで泣きじゃくった。
しばらくそんな美樹ちゃんを皆で眺めていた。おそらく皆の心の中は(もう一押しだ!)と思っていたに違いない。「・・・オーナー、警察に電話して・・」徳永さんが呟くように言う。
泣きじゃくっていた美樹ちゃんが、顔を上げ私を見た。涙に濡れる大きな目、泣き顔も可愛い。「徳永さん、何とか、お金の落とし主の機嫌を元に戻す方法は無いんですか?」 それまで一連のやり取りを静観していた私が、美樹ちゃんに救いの手を差し伸べる。
美樹ちゃんが、私の言葉に期待を込めて、徳永さんを見る。「・・・方法があるとすりゃ、ワシが代わりに盗った事にして、そいつにボコボコにされるっていう方法がある!」 美樹ちゃんが助かる唯一の道を、徳永さんが提案した。「ちょっと待ってよ、それって徳さんに何のメリットがあるっていうの?」仁科さんが美樹ちゃんの救いの道を閉ざすような事を言う。
仁科さんの問いに、皆が口を閉ざす中、林さんが口を開いた。「・・・こういう場合、中国ではお金が物言うヨ」「5万や10万のはした金じゃ、そんな役目、受けねぇぞ!」林さんの提案に、徳永さんが拒否。

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