バイト先に「コイツ」が来やがった
2017/01/17
暇な奴だけ、俺の妄想話を聞いてくれないか?エロはないけど。高校を卒業してから、俺は地元を離れて大学に進んだ。
アパートを借り、授業が終わるとアルバイトをしていた。
アルバイト先はホームセンターだった。時給はそれほどよくなかったが、時間の融通が利いた。
大学での勉強は楽しかったが、友達は少なかった。でもそれほど気にもしなかった。
そんな淡々とした生活を2年ほど過ごした頃、バイト先に「コイツ」が来やがった。バイトに出勤して作業を始めようとしていると、部門長から声を掛けられた。
部門長の後ろに「コイツ」も一緒に居た。部:「○○君(俺)、新しいバイトが入ったから色々教えてやってくれ」
俺:「はい?俺に預けられるという事は、いつも通りでいいですか?」部:「そんな感じでw」2年も同じバイト先だと、結構古株の部類に入る。俺は新入バイトの面倒を見させられていた。
で、さっきから部門長の後ろに居た「コイツ」に話しかける。俺:「○○です。よろしく」
コ:「・・・・・」
部:「後はよろしくw」部門長はとっとと事務所に戻ってしまった。
で、俺は「コイツ」の観察を始めたわけだが、いろいろと微妙だった。
「コイツ」は女の子だった。顔はまずくないが、背が低い。150cm台?中学生かと思ったよ。
ニコニコ笑ってはいるが、すごくトロそうだ。頭が悪いんじゃないかと疑ったくらいに。
さっきの俺の挨拶も無視されたし・・・。もう一度挨拶から始めるか・・・。俺:「○ ○ で す 。 よ ろ し く」
コ:「・・・よろしくお願いします」
俺:「じゃあ説明をするので、あとに付いて来てください」
コ:「・・・・・」
俺:「あ と に 付 い て 来 て く だ さ い ね ?」
コ:「わかりました」女の子のバイトが入った場合は、レジに回されるのが普通だ。
でも俺に預けられたということから察してしまった。(「コイツ」にレジは任せられねーよ、っていうことだよな)俺は身長は175cmくらいだが、いわゆる老け顔なので強面に見られる。
しかも短気なので、女の子の面倒見を任されるのが初めてだった。
しかしこれも業務の一環なので、仕方なく説明を始める。お客様を見たら、目を見て挨拶。
商品の前出し、補充の手順。
当面はお客様から質問を受けたら、社員か俺に引き継ぐこと。
などを教えてやる。
「コイツ」は理解したのか、理解できないのか、顔をコクコク縦に振っていた。
しばらくは2人で商品の前出しや補充をしていた。しかし「コイツ」、トロい。トロ過ぎるよ。
俺が3ゴンドラ分補充している間に、1ゴンドラも終わっていない。
俺は気が短いので相当イライラしていたが、言葉には出さなかった。顔には出ていたろうが。
たいした会話もなく、その日はあがり。俺:「お疲れ様」
コ:「・・・・・」
俺:「お 疲 れ 様」
コ:「お疲れ様でした」疲れた。普段の倍は疲れた。
俺はアパートに帰る途中でこう考えていた。
(「コイツ」、明日からバイトに出てこねーかもな)次の日も「コイツ」は出勤してきた。
俺は水曜日と土曜日にバイト休みを入れていたが、「コイツ」も水・土休みだった。
だから俺がバイトに出勤すると、ほぼ「コイツ」が一緒に居た。
俺は特別興味があったわけではないので、就業中の無駄話は一切しなかった。
「コイツ」の方からも、作業に対する質問以外は会話がなかった。
それでも10日ほど一緒に作業をしていると、空き時間に「コイツ」が話しかけてきた。コ:「○○さんはすごいですね?」
俺:「何が?」
コ:「何でも知っているし、作業も早いし、社員の人にも信頼されているようですし」
「接客もすごく丁寧ですね」
俺:「古株だから」
コ:「どのくらい続けているのですか?」
俺:「2年」
コ:「○○さんは大学生なんですか?」
俺:「大学生」
コ:「どちらに住んでいるのですか?」
俺:「ここから徒歩10分くらいのアパート」
コ:「こちらの出身ではないのですか?」
俺:「無駄話終了。作業に戻る」俺は話をぶった切る。何故なら、じきに俺の家族に対する質問が出てきそうだったから。
こんな奴に、俺の身の上話をしてやらなければならない理由がない。
で、その日のバイトもあがったので帰ろうとすると、「コイツ」に捕まってしまう。コ:「少しお話しをしてもらってもよろしいですか?」
俺:(腕時計を見てから)「10分だけ、それと不公平だから俺にも質問させろ」
コ:「はい」「コイツ」は自転車に乗ってきていたが、徒歩で移動。
バイト先から少し離れた公園でお話しとやらを始める。俺:「フリーターか?」
コ:「いえ、高校生です。△△高校の2年生です」
(名前くらいは聞いたことがあるな。たしか女子高だろ?)
俺:「バイトの経験は?」
コ:「ここで働くのが初めてです」
(やっぱりな、トロ過ぎる)
俺:「小遣い稼ぎか?」
コ:「それもありますが、社会勉強だと思って頑張っています」
(社会勉強・・・ねぇ)
コ:「あの、私も質問していいでしょうか?」
俺:「何?」
コ:「○○さんて、お幾つなのですか?」
俺:「19歳」
コ:「え?そうなのですか?」
俺:「老け顔、って言いたいのか?」
コ:「いえ、そういう訳ではなくて、その、しっかりしているのでもっと・・・」
俺:「老けて見えたと?」
コ:「いえ、しっかりしている方だなと・・・」
俺:「いや、フォローしなくていいから」
コ:「・・・すみません」
俺:「10分経ったからおしまい。お疲れ様」
コ:「・・・お疲れ様でした」で、俺はアパートに帰った。
別に怒ってはいない。まぁ、最近「コイツ」が馴れ馴れしいから疎ましく思ってはいたが。
そんな会話があった3日後に、ちょっとしたトラブルがあった。バイト中に、「コイツ」が不手際をした。たいしたことじゃなかったが。
お客に頼まれて「コイツ」が収納ボックスを取ろうとしたんだが、
高所に置いてあったボックスを落としてしまい、お客の足に当ててしまった。
お客に怪我はなかったが、大激怒。店長を呼べ!、みたいな話になった。
その時たまたま店長不在だったので、副店長と部門長と俺がお客に謝った。
その間「コイツ」はオロオロしながらも、お客に謝っていた。
怪我がなかったのと、その場にいる者全員の謝罪があったのでお客は納得。
一応、大事には至らなかった。
その騒動からしばらくして店長が戻ってきたので、部門長から事後報告。
事務所に俺と「コイツ」が呼ばれて、どうやらお説教タイムらしい。
いつもはニコニコしている「コイツ」も、どうやら落ち込んでいる様子。
事務所にて、店:「事情は聞いた。今回は大変だったね?」
「でも相手のお客様も怪我はなかったようだし、話しが複雑にならなくてよかった」
俺:「申し訳ありませんでした」
店:「○○君はよく面倒を見ているよ」
「それからK香ちゃん、あんまり落ち込まないで」(えぇ!?K香ちゃんって誰だよ?)コ:「すいません。ご迷惑をお掛けしました・・・」(店長がバイトを下の名前で呼ぶって、今まで聞いたことねーよ・・・)
(っていうか、K香ちゃんって「コイツ」のことかよ!?)
(えっ!?店長の娘?でも苗字違うし・・・)
(もしかして「コイツ」、店長の愛人とか!?)俺、軽くパニック。そのくらい珍しい光景を見させてもらった。店:「今日はそれほど忙しくないようだし、」
「部門長には私から話しておくから、今日は二人ともあがっていいよ」
俺:「え、でも」
店:「いいから、いいから。明日はちょうど二人とも休みだし」
「それにまた明後日から頑張ってもらえばいいから」
俺:「はぁ、わかりました。今日はお言葉に甘えさせていただきます」
店:「そうしなさい。K香ちゃんもわかったね?」
コ:「はい・・・」
俺:「それでは失礼します」タイムカード押して退勤。「コイツ」も一緒に退勤。
なんでそうなったのかわからないが、二人して先日の公園に来ていた。
まだ「コイツ」は落ち込んでいた。
しばらく二人してベンチに座っていたのだが、「コイツ」の方から話しかけてきた。コ:「すみませんでした。私のせいで○○さんにもご迷惑を掛けてしまって・・・」
俺:「問題ないよ。店長もああ言っていたんだから」
コ:「でも○○さんにも謝らせてしまって、それに早退までさせてしまって・・・」
俺:「全然気にならないけどね」
コ:「・・・この前も怒らせてしまったみたいで・・・」
(3日前の公園での会話のことを言っているらしい)
俺:「?怒ってはいないけどね」
コ:「・・・・・」「コイツ」、泣いていました。声を出さずに。まさか泣くとは思っていなかったけど、優しい言葉をかけてやることもしませんでした。
だって俺、人から「冷たい奴」って呼ばれているから。
これで「コイツ」が声をあげて泣いていたら何とかしなきゃな、とは思いましたが
そうじゃなければ別にどうこうする必要は無いって。
「コイツ」、10分くらい声を出さずに泣いていた。
泣き止んだ頃、仕方がないので俺から話しかける。俺:「泣き止んだか?先日の件でも、今日の件でも俺は怒っていない」
「でも、お前がまた泣き出したら俺は帰る」
コ:「・・・わかりました」
俺:「俺はツラも怖いし、愛想も悪い。気にするな」
コ:「・・・・・」
俺:「わ か っ た の か ?」
コ:「・・・わかりました」また「コイツ」が黙りこくったので、仕方がなくまた俺から話しかける。俺:「お前、店長の知り合いか?」
コ:「はい。というよりも、私の父と店長さんが知り合いです」
俺:「ふーん」
コ:「ここにアルバイトとして入れたのも、店長さんのおか…