女の子の笑顔が魅力で
2018/04/04
俺が高校出て就職して2年目、新卒の女の子が入ってきた。
俺より上は男しかいないようなむさ苦しい職場だったが、俺以外の同期も後輩数名もみんな女の子で、一気に会社が華やかになった。
研修期間が終わって、秋。
1人の女の子がうちの部署に配属となった。
横顔がタヌキみたいに見えた。
何かいつもピョンピョコフワフワしてた。
滑り具合に定評のある俺のギャグにも、顔をクシャクシャにして笑ってた。
めちゃくちゃ幸せそうに笑うもんだから、一発でその笑顔の虜になった。
その年の暮れの忘年会、偶然席が隣になったので、ここぞとばかりに沢山話した。
もうすぐ来るクリスマスがちょうど誕生日だと言うので、翌日プレゼントを買いに走った。
似合いそうな可愛いヘアピンを買った。
クリスマスの日も仕事だったが、渡すタイミングを伺ってたら、一日が終わってしまった。
結局渡せたのは年が明けてからだった。
苦笑いと嬉しさが混ざったように「ありがとうございます」と言ってくれた。
翌日からずっとそのヘアピンをしてた。
知ってる限り、毎日ずっと。
次の春、連休に食事に誘った。
「男性と2人で食事に行った事なんかなくて、緊張します」と断られた。
絶望したね、1ヶ月くらいハイパーブルーだった。
その年の夏、女の子は泣きそうになりながら、と言うか泣いてた。
そして俺に話しかけてきた。
「もらったヘアピンを壊してしまいました」物凄く落ち込んでた。
何を言おうか混乱して、思わず告白してしまった。
恥ずかしいから内容は伏せるが、女の子は驚いた顔を見せて走って逃げた。
パワハラ兼セクハラをかましてしまったと思い、またハイパーブルーになった。
翌日の仕事終わり、女の子から「食事に行きましょう」と誘われた。
そして告白の返事をくれた。
「こんな私でいいんですか」とほざくので、自分の魅力を事細かに説明してやった。
ドン引きされるかと思いきや、また幸せそうに笑った。
「今凄く幸せです」って。
こっちのセリフだボケ。
強いて言えば、初めての食事くらい俺から誘わせろ。
それから何度もデートを重ねた。
意味もなく散歩したり、海辺をドライブしたり。
会社ではひたすら隠した。
「いつバレますかね?」と彼女は笑った。
が、その年のクリスマス、ペアウオッチをあげた。
特に意識しないで会社に付けていったら彼女もつけていたので、そこでバレた。
照れ笑いも可愛かった。
冷やかされた。
それから4年、これといった騒ぎもなく時間が流れた。
というかキスすらもしなかった。
そういう欲が無いわけではなかったが、手を繋いで2人で歩くだけで幸せだった。
またクリスマス前にプレゼントを買った。
初めてあげたヘアピンと同じ物と、指輪を。
プロポーズしようと思った。
当日会ってみれば、彼女はそのヘアピンをしていた。
「直してみました」と笑った。
夕食の時、買ってきたヘアピンと指輪を渡すと、彼女は泣き出した。
「やっぱり私は幸せです」と。
こっちのセリフだアホ。
ついでに言えば、その日初めてキスをして、体を重ねた。
恥ずかしいからカット。
お互いの両親や上司にも快諾を得て、式の準備、本番、ハネムーン。
それからの生活は本当にあっという間だった。
俺が昇進して、子供が生まれ、嫁も昇進して、また俺が昇進して。
今日飯行ってきたんだよ。
忘年会で席が隣になって、告白の返事を貰って、俺がプロポーズした店。
俺と嫁と娘の3人で。
目の前でお揃いのヘアピンをつける嫁と子供を見ていたら、俺は凄く幸せ者だと思った。
帰りの車の中、4歳の娘が「○○は今日幸せでした!」と言うもんだから、つい笑ってしまった。
それを聞いて嫁が「お母さんの方が幸せだよ」って言った。
ちょっと涙が出てきた。
お父さんが1番幸せだっつーの、アホども。