ぐっしょぐしょに濡れた女の子
2018/03/28
就職して2年目の11月の頭ぐらいのことなんだけど、その日夕立がすごくて走って帰ってきたらアパートでぐっしょぐしょになった女の子が雨宿りしてた。
正直、見たことが無い子だったから無視して家にはいったんだ。
で、シャワー浴びて髪乾かしてたんだけど妙に気になって表を見に行ってみた。
そしたらまだその子がいて気温も低くてやばいぐらい震えてたんだ。
しかもこの季節に上着も着ずに制服だけ。
震え方が尋常じゃなかったからタオルでも渡そうと思って近くにいってみたけど、手とか足とか血の気引いてて若干引いた。
タオル渡したはいいけどあまりの青白さにやばいんじゃないかと思って部屋に誘ったんだ。
はっきり覚えてないけど、足とかすごい色になってるけど大丈夫?雨止むまで部屋で暖まらない?みたいな。
最初はいいですって断ってたけど、死なれたら気分悪いしなぁって。
それぐらい青白かった。
だから、倒れられても困るしとか言って説得というか嫌味というか。
まぁ、部屋に入れたんだ。
玄関の明るいとこで見て気付いたんだけど持ち物がちょっと汚らしい感じだった。
靴下も紺のハイソックスだったんだけどかかとが透けてたし。
すごく申し訳なさそうに上がったその子は靴脱いで上がったとこでじーっと立ってた。
ポタポタ自分の体から落ちる水滴に気付いて慌てて玄関から出ていった。
なんだ?と思って玄関から覗いてみたら髪の毛とか、制服の水を絞ってた。
偉いなぁって感心した。
少し満足そうな顔で戻ってきた彼女にときめいたりはしたりしなかったり。
んで、とりあえずストーブの前で暖まりなと連れていったんだ。
しばらくして、まだ震えてるのみてシャワーで暖まらせたほうが良くない?って思ったけど勘違いされてもめんどくさいなぁって。
一応聞いてみるかって聞いてみたんだけど、たぶん寒過ぎる場所から微妙に暖かいとこにきたから余計寒くなったのかな、若干ためらいつつも使うと。
どうせなら乾燥機もあるから使いなと。
乾燥機の使い方教えたり、タオル出してあげた。
ストーブの前のカーペットが濡れてて、うげぇとか思って拭いたり夕飯作ったりしてた。
フライパンかき回してたら彼女が出てきて、ちゃんと使えたか?って聞きながら振り返ったらタオルで前だけ隠したのがいた。
え、何してんの?って聞いたら服乾いてません。
出そうにも止め方分からないし。
とかなんとか。
というか、隠すなら巻けと。
チラチラ見えてんだよ。
みたいな。
てか、普通出てこないだろ。
というか、制服を乾燥機にかけたらいけません。
これ常識らしいね。
知らなかったけど。
スエット上下を貸してあげた。
下着は新しいのないから我慢してもらったけど。
まぁ乾くまでだし。
さすがに風呂上がりで顔とか赤みが戻って良かったなぁと思ってた。
オムライス二人分作って彼女の前に出したら目を見開いてた。
まぁいきなり出されたらびびるか、と思ったけどふわふわオムライスに感動したらしい。
食べてまた感動してた。
よくよく考えたら、誘ったときは警戒してたみたいだけど警戒心薄いなぁ。
とか思ってた。
なんか捨て犬拾ったときのことを思い出してた。
正直に聞いてみることにした。
のこのこ知らない男の部屋まで付いてきて、風呂はいったり裸になったり、その男の服着て、ご飯まで食べて警戒しないの?って。
ニコニコしながら、最初は危ないと思ったけどあまりに寒くて、死ぬかと思ってたので暖かさには勝てなかったと。
ふわふわオムライスの実物みたの初めてで思わず食べてしまったと。
あぁ、ちょっとアホの子なんだなーって思いました。
だから聞いてみました。
下、毛はえてないんだね。
と。
分からなかったのか、は?って顔してたけど理解したのか、なんで知ってるんですか?まさか覗かれてた?やられちゃいましたねー。
って疑問困惑笑顔の順に表情を変えてた。
あぁ、完全にアホの子だなと。
いや、さっきタオルの影から見えてたし。
と指摘すると、あー…焦ってたんで…まぁお風呂貸してもらえたしご飯まで食べさせてもらったしおあいこって事でうんたらかんたら。
それ違うだろと内心突っ込んだけど口には出さず。
でも、家にお風呂あるって良いですね。
とか言うので聞いてみると、銭湯に行ってるらしい。
だから見られても恥ずかしくないんだと。
理屈がよくわからなかったけど。
話を聞いてるとあまり余裕のある家庭じゃないらしくて、濡れたまま帰ると怒られるのでどうしようかと思ってたんだと。
あとで分かることだけど伯母の家に居候しているんだってさ。
まぁ、分かるとおり厄介者扱いされてるから肩身が狭いみたい。
だから、危ないかと思ったけど家に帰って怒られる方が怖かったらしい。
笑いながらで明るいしゃべり方だったからあまり悲惨に感じなかったけど、今思えば知らない男のがマシに思えるって相当だよねぇ。
話しながらご飯食べおわって時計見たら七時半ぐらいだったから大丈夫か聞いたら、門限は8時らしくて普段は今ぐらいまで時間潰してから帰るらしい。
制服も乾燥終わってたから、帰っていきました。
雨はまだ降ってたから傘を貸して見送った。
うちはふつーの中流家庭だから大変な人もいるんだなぁと思った。
翌日、仕事終わって帰ってみたら玄関に昨日の子が立ってた。
どうしたのか聞いたら傘を返しにきたらしい。
ビニール傘なのに。
そのまま、はいさようならも悪い気がしたからお茶でも飲んでくかと誘ってみた。
その日も家のこととか学校の事とか他愛無い話をしてたら七時半になって、もう帰ると。
帰りぎわにまた来ても良いかって聞かれて別に断る理由もないから、好きにすれば良い。
いるか分からないけど。
と言っておいた。
わかった。
とだけ言って。
その日は帰っていった。
それからちょくちょく来るようになった。
て言っても来ない日より来る日のが多かったと思う。
自分が遅くなった日はポストに書き置きが入ってた。
そんな感じで気付けば三四か月ぐらいそんな毎日が続いてその子が三年になってしばらくして、卒業したらどこの学校に行くのかって話になったときに、伯母とかは学校出たら働けるんだから働けと。
そんで出ていけと暗に言ってくるらしかった。
さすがの自分でもそれが相当きついことは分かったし、公立に行けば家庭の事情考えたらかなり安く進学出来ることもなんとなく理解してたから、ちょっとなぁと思った。
男なら住み込みでも大丈夫かもしれないけど女の子にはきついだろうし。
本人は進学したいらしく、学校に行ってバイトしてって考えたけれど生活は無理だと思う事もちゃんと分かっていた。
かと言って、家族でもない自分が何かをしてあげられるわけじゃないからその日はうやむやになった。
ちょっとは考えなかったわけじゃないけどね。
現実的に無理だって分かる程度の頭は持っていたから何も言えなかったけれど。
それからしばらくは進学の話とかは出ずに普通にまったりとした毎日がつづいた。
その頃になるとほぼ毎日家に来るようになっていてうちで課題なんかもするようになってた。
理数系と英語はそれなりに出来たし、まぁ簡単な因数分解とかだったから教えたりしてた。
休みの日には買い物に連れていったり、ちょっと良いもの食べに連れていったりしてあげた。
恋人というよりペット感覚?
高いプレゼントだと伯母に言われるからってあまり物を買い与えたりはしなかったけど。
夏休みに入ったら朝仕事行く頃になったら来て、洗濯やら掃除をしてくれた。
て言っても一人暮らしだから大した量じゃないけど。
なんかその頃になるとこっちもいるのが当たり前になってたから特に警戒したりしなくなってた。
帰ってきたらご飯作ってくれたりしてた。
材料費なんかは別の財布買ってきて渡してた。
ご褒美にお菓子買って良いぞって言ったら喜んでた。
味はそれなりに美味しかった、それなりに。
家では自分で作ってたらしい。
たまに伯母が早いときは一緒に作ってくれたらしいけどほとんど自分で作ってた。
の割に微妙だったのが謎だった。
朝来て夜帰るまでうちで何やってるのか特に詮索しなかったので知らなかったけど、一回RPGのレベル上げを頼んだことがあって、やり方教えて夜に帰ってきたら15ぐらい上がっててびっくりした。
1日同じ地域で狩ってたらしく、同じ事ばっかり何が楽しいの?って聞かれて先に進めたら教えてよって怒られた。
サクサク敵を倒せて気持ち良かった。
二度とレベル上げはしないって言ってたけど。
そんなこんなで夏休みも終わって放課後だけ来るようになって、いつものようにだらだらしてて何気なく誕生日を聞いたら10月の頭が誕生日らしかった。
夏休み中に色々してくれてたから感謝の気持ちを…