美しい母と、その母にそっくりな中1の娘[第5話(終)]
2018/07/20
重々しい空気だった。
なんでこんな事になったのか?
由香ちゃんと2人でデート、途中までは兄妹のように仲良くいけてたのに。
「タクヤ、久しぶり・・・」
「久しぶり・・・ヨウコ・・・」
なんで、よりにもよって今ここでお前に会うなんて・・・。
ヨウコ「その子、妹さん?タクヤって妹いたっけ?」
俺「この子は・・・」
家庭教師先の生徒さんだよと言うよりも早く、「私、タッ君の彼女だよ!あなた誰?」と由香ちゃんが俺の腕を掴んで言う。
「えっ!」
俺とヨウコが同時に声を上げる。
2人あちこちお店を見て回った後、公園で順子さんのお弁当を食べて、お昼から市内の小さな遊園地に行くために地下鉄のホームで電車を待っている時だった。
ヨウコ「タクヤ?」
凄く懐かしい声がして振り返るとヨウコだった。
ヨウコは俺の彼女・・・だった。
別れてからずっと連絡をとっていなかったから彼女を見るのは久しぶりだった。
ヨウコは少しやつれたみたいで、昔のような明るい面影がなくなっていた。
俺「ちょ、違うだろ。この子は家庭教師先の娘さんで俺の生徒。今日は親御さんの了解をもらって遊びに連れてきたんだ!」
慌てて訂正する。
由香「えー、タッ君酷いよ!ーデートだって言ったじゃん!!」
不満顔の由香ちゃん。
ヨウコ「そっか・・ビックリしたw」
ヨウコはあっさりわかってくれた。
ヨウコ「そうだよね、さすがに歳が違いすぎるもんね」
由香「なんかそれ失礼じゃない?」
由香ちゃんが厳しい目つきでヨウコに食って掛かる。
由香「大体あんた誰よ、人の事とやかく言う前に名乗ったら?」
由香ちゃんは、子供扱いされたのが余程気に入らなかったのか、なんだかヤンキーみたいな口の聞き方だ。
俺「ゆ、由香ちゃん?!」
なだめようとする俺の手を振りほどく。
由香「タッ君は黙ってて!」
ヨウコ「ごめんなさい、私は松崎ヨウコ・・・あの・・・タクヤと付き合ってたのよ」
年下の態度に落ち着いた態度で答えるヨウコ。
由香「付き合ってたって昔の事でしょ、馴れ馴れしく話し掛けてこないでよね」
ヨウコ「べ、別に良いじゃない・・・話し掛けるくらいw」
あーどうやらこの2人は相性最悪みたいだ。
“◯◯線に電車が~”
ちょうど良いタイミングで乗る予定の電車が来る。
俺「ま、まあとにかく俺達は今から行く所あるから、ねっ、由香ちゃんも早く、電車来たし!」
由香「・・・」
2人とも睨み合っている・・・。
由香「ふん!タッ君の元カノだから私のお母さんみたいに素敵な人かと思ったら大したこと無いのね」
ヨウコ「えっ?」
ヨウコが俺を見る。
俺「由香ちゃん!?」
とにかく余計な事を言う前に強引に手を引いて電車に乗り込む。
ヨウコ「あっ、タクヤ!」
俺「ん?」
ヨウコ「私、まだあなたのこと諦めてないから!」
俺「・・・」
プシューッと音を立てて電車の扉が閉まる。
ヨウコは扉越しに俺を見つめていたと思う。
でも俺は顔をあげて真っ直ぐ彼女を見ることができなかった。
由香「ベーーーだ!」
走り出すと隣で由香ちゃんが舌を出してヨウコに丁重なお別れの挨拶をしていた。
ホームを過ぎてヨウコが見えなくなる。
俺「由香ちゃん!君は本当に連れて歩くとロクな事しないな!」
由香「なにさ!元カノだからってあの態度、失礼しちゃうわ!」
聞いてない・・・。
由香「大体なに?タッ君に捨てられたくせに未練タラタラでダッさい!」
俺「・・・」
由香「タッ君もああいう態度は良くないよ!もっとはっきりしないと!タッ君には私とお母さんがいるでしょ!」
俺「ちょっ、由香ちゃん声でかい!!」
車内の視線が痛い・・・。
由香「ね、あの女のどこが良かったの?」
遊園地でも遊具そっちのけでヨウコの話題に。
俺「どこがって・・・言われてもな」
黒いロングの髪落ち着いた感じ・・・とか。
由香「別れたんでしょ?」
俺「別れたよ・・・」
由香「何で別れたの?」
真剣な顔で聞いてくる由香ちゃん。
俺「何でって・・・って、なんで俺がそんなことまで由香ちゃんに教えないといけないわけ?」
由香「だってタッ君はお母さんの彼氏だし、一応気になるじゃん、娘としてはね」
そんな風に言ってはいるけど目がランランと輝いてて嘘臭い。
俺「・・・嘘だ、絶対興味本位だろ」
由香「まあ、それもない訳じゃないけどw」
俺「・・・別に、それこそ由香ちゃんが言った通り、ダサい話だよ。彼女が浮気して、許してくれって言われたけど、俺が我慢できなくて終わっただけだよ・・・」
由香「それで、あの女さっきあんなこと言ってたわけ?」
俺「まあ、そういう事だね」
由香「まだ好きなの?」
俺「え?」
由香「あの女のこと」
俺「まさかwもう俺は終わったと思ってたよ・・・。あんな所で久しぶりに会ってちょっと昔のこと思い出したりはしたけどね、辛いだけだったし」
由香「ならいいけど・・・でも気になるな、あの女・・・」
俺「ほら、ヨウコの事はもう良いから、せっかく来たんだから遊んで帰ろうぜ!」
由香「そうだね!行こっ!」
ヨウコとは大学で知り合った。
同じサークルで活動してるうちに自然と付き合うようになった。
はっきりどっちかが告白したわけじゃなくて、気がついたら一緒に居るようになって、デートしてキスしたりエッチしたり・・・。
ちゃんと、『付き合おう』って言おうとしてた矢先だった。
ヨウコに別の男がいるって知った。
俺と知り合う前からの関係だったらしい。
ただ、ヨウコの気持ちは離れ始めていたけどズルズルと続いていたそうだ。
そんな時に俺と出会って好きになった、別れようとしてる時だった・・・。
そういう風に言われた。
「好きなのはあなただけなの・・・」
ヨウコは泣いていた・・・。
今思うと、その言葉に嘘は無かったのかもしれない。
でも、俺は結局我慢できなかった。
一方的に別れを告げて、サークルもやめた。
大学でも遠くで見かけると回れ右をして回避した。
番号もアドレスも変更した。
空いた時間は家庭教師のバイトを入れた。
由香「ねえ、聞いてる?!」
由香ちゃんの声にハッとなる。
2人の乗る観覧車はちょうど頂上に来たところだった。
俺「あっ、ごめん・・・なんだっけ?」
由香「もー!ちゃんと話聞いてよ!」
俺「ごめん!で、なんだっけ?」
由香「・・・もういい」
これはいかん・・・明らかに怒ってる。
俺「本当ごめん!色々考えちゃって、ごめん由香ちゃん!!」
拝み倒すようにして謝る。
由香「じゃあチューして!」
俺「えっ?」
由香「前みたいにまたチューしてくれたら許す」
俺「そ、それは・・・」
由香「いいから!!しなさい!」
由香ちゃんの眼から涙がポロリとこぼれ落ちた。
俺「由香ちゃん・・・」
しまった!という感じで必死に涙を拭おうとする由香ちゃんだが、必死に手で涙を押さえようとすればするほど両目からポロポロと止め処なく溢れてくる・・・。
由香「もういやだぁ・・・馬鹿みたいじゃん・・グスッ・・ずっと楽しみにしてたのに・・・グスッ・・・ううっ」
とうとう本格的にボロボロ涙が溢れ出す。
俺「由香ちゃんごめん!本当ごめん!!」
由香「馬鹿!タッ君の馬鹿!!うえぇぇええ」
大変だ、マジ泣きだ・・・。
由香「私だってタッ君大好きなのに!!」
俺「ごめん・・・」
小さい身体で力いっぱい俺に抱きついてくる。
俺「ごめん・・・」
馬鹿の一つ覚えみたいに同じ台詞しか出てこない俺。
由香「ごめんばっか!」
俺「ごめん・・・」
そう言い続けるしかなくて・・・。
由香ちゃんを抱き締めたまま、ただ子供をあやすように背中を擦るしかない俺・・・。
由香「・・・」
由香ちゃんが涙目のまま俺を見上げる、その表情が順子さんにそっくりだった。
そのまま顔を近づけてくる由香ちゃん・・・唇が触れ合う。
何度も短いキスをもどかしそうに繰り返す由香ちゃん。
由香「違う・・・」
俺「違う?」
由香「違う・・・」
由香ちゃんがキスしながら何度も言う。
俺「何が?」
由香「こんな風じゃない・・・もっと違うキスがいい」
俺「それは・・・」
由香「じゃないと許さない・・・」
俺「でも・・・」
由香「いい・・・もう勝手にする・・・タッ君は動かないで」
そう言うと由香ちゃんは強引に舌を入れてくる。
なんだかがむしゃらなキスだ・・・。
由香ちゃんが乗り出してくるように俺の口に吸い付いてくるから徐々に仰け反って2人観覧車のシートに伸びるように転がる・・・。
「んっ・・・ふっ・・・」
2人の吐息だけが響く。
由香ちゃんからなんだか順子さんと同じ匂いがする。
そうか・・シャンプーの匂いか・・・。
そんな事を考えてしまう。
由香「ふう・・・はぁ・・・はぁ・・・」
夢中でキスを繰り返す由香ちゃん。
由香「お母さんとタッ君ばっかり仲良くしてズルいよ・・」
俺「・・・」
由香「私もタッ君のこと好きだから・・・同じじゃなきゃヤダ・・・」
俺「・・・」
そう言うと由香ちゃんが俺の手をとって自分の胸に置く。
由香「お母さんみたいに大きくないけど・・・すぐに大きくなるよ・・・」
俺「由香ちゃん・・・」
由香「タッ君だって男の人なんだから私のこと好きじゃなくてもドキドキするでしょ?」
確かにドキドキする・・・。