全裸で食べさせられた給食[後編]
2017/01/29
咳払いして、先生は何事もなかったように授業を再開した。授業では3人ずつ前に出て、教科書の問題を解いていた。黒板に数式を書き、答えを書く。いやな予感がしたが、案の定、僕の番まで回ってしまった。
「どうした、パンツ一枚の裸ちゃん。前に出て、この問題を解いてよ。君なら簡単にできるはずだけどなあ」
先生の冷やかしにクラスの女子達みんながどっと笑った。僕は立ち上がり、素足でパンツ一枚の裸のまま黒板の前で答えを書いた。
すると、「式も書いてね。答えはどうせ合ってるんだろうけど、式がないと分からないよ、白いパンツの裸ちゃん」と先生が笑いながら言った。
続いてクラス全体に笑いが起こった。僕は緊張で震える手を抑えながら、なんとか数式を書き終えた。先生は他の二人を席に戻し、僕だけ黒板の前に立たせると・・・。
「今、私、この子のパンツつくづく見てたんだけど、真っ白で綺麗だよな。小便の染みとかウンチとか、何も付いてねえんだよ。みんなも下着は、いつも綺麗なのを穿いときなさい。この子みたいに、いつみんなの前で下着を晒すか、分からないからな」
みんなは照れたように笑い、それから僕のパンツに対して拍手を送った。
「でもな」
先生が口を挟むと、拍手が途絶えた。
「体が生白いね。全然お日様に当たっていないような肌じゃないか。白いのはパンツだけにしといた方がいいわよ」
余計なお世話だ、と内心つぶやきながら僕は席に戻り、着席した。
四時間目の授業がやっと終わって、僕は自分の席から風紀委員の女の子を呼んだ。すると横からY美が、「人に物を頼むなら自分から出向かなくては駄目でしょ」と言い、風紀委員にこっちに来なくてよいと伝えた。僕は相変わらずパンツ一枚の裸のままだったけど、このまま服を返してもらえないと困るので、恥ずかしさをこらえて風紀委員の席まで行き、服を出してくれるように頼んだ。しかし風紀委員は、知らないと言う。そんなはずはない。風紀委員以外の誰が没収するのか。気づいた人がその場で没収する。僕の服や上履きを没収したのは誰か分からない、という返事だった。焦った僕はクラスの一人一人に服のありかを尋ねた。
「知らない」「自分で探せば」
みんなの返事は素っ気なかった。服を探してうろうろしている僕は、机の移動など給食の準備で忙しいみんなにとって邪魔者だった。結局、誰が僕の服と上履きを没収したのか分からず、服も上履きも見つけることができないまま、パンツ一枚の裸の格好で給食の時間を迎えることになってしまった。
いつまでもパンツ一枚の裸で、普通に服を着ているクラスのみんなと一緒にいるのは苦痛だった。体育着でも身にまとおうとしたが、その日は体育の授業がなく、僕は体育着を持って来ていなかった。
「誰か体育着、持ってる人いる?」
持っていれば貸してくれそうな人を選んで、声をかけたが、残念なことに誰も持っていなかった。
「どうしたの。まだ服が見つからないの。早くしないと給食の時間になっちゃうよ」
後ろから声がして振り返ると、Y美がくすくす笑いながら立っていた。僕はY美に、そもそもこういうことになった原因はY美にある。服のありかを知らないなら、せめて一緒に探してくれても良いだろうと責めた。しかしY美は冷たく、「知らない、そんなの。自分の責任じゃない」と言って教室の外へ行ってしまった。
「誰か体育着持ってる人がいたら、僕に貸してください。お願いします」
半ばヤケになって声を張り上げたが、誰も衣類を提供してくれる人はいない。給食当番用の白衣さえ貸してもらえない。何か、僕に服を与えてはいけないような、無言の圧力がクラス全体にかかっているようだった。こういう時のクラスメイトたちは、みんな無情だ。僕はいつまでもパンツ一枚でいることの情けなさと、クラスのみんなの冷たさに力が抜けて、自分の席で涙を手で拭っていた。僕の近くにいる人たちは、僕が泣いているのに気づいたが、関わるとやっかいなことになると思ったのか、みんな見て見ぬふりをした。
給食当番たちが給食を運んできた。クラスには給食の前に手を洗う規則があった。でも、僕はこの恥ずかしい格好のまま、自分の席を離れるのも嫌だったし、まして教室の外に出るなんて以ての外だった。だが、クラスのみんなや先生は、裸だからという理由で手を洗う義務を免責してくれるとは思わなかった。
Y美が僕の裸の肩を叩いて、「もう洗ったの?嘘はだめ。誰もあんたが手を洗いに行ってるの、見てないよ」と言った。
四人のクラスメイトの女子が、「私達が手伝ってやるよ」と無理やり僕を立たせ、外に連れ出した。
「異性だけど、私達たちも恥ずかしい気持ちは分かるし」
そう言って、前後に二人、左右に二人がぴったり僕に寄り添って、少しでも僕のパンツ一枚の裸が隠れるように配慮してくれたのだった。他のクラスの女子達にまでパンツ一枚の裸を笑われるのがどれだけ辛いか、この四人はよく理解してくれていると思った。
しかし、その信頼は見事に裏切られる。手洗い場で手を洗い終わると、右隣に付き添ってくれている人が、「ハンカチあるか」と聞いた。持っているけど今はないと答えると、「そりゃそうだよな。パンツいっちょうの裸だもんな。でもな、規則では手を洗ったあとは必ずハンカチで拭くことになっているのよ」と急に意地の悪い表情になって言った。すると、後ろで付き添っている人が「でもよ、ハンカチなくてもパンツで拭けばいいじゃん。ほら、その濡れた手を早く白いパンツで拭けよ」と、低い声で僕に囁いた。僕は言われるままに濡れた両手をパンツの腰の辺りで拭いていると、突然、ガードしてくれていた四人が両腕を広げ、飛行機の真似をして、駆け足で去って行った。僕は手洗い場で呆気にとられて立ち尽くしていた。手洗い場は、給食前で混雑していた。パンツ一枚の裸のまま取り残された僕を見て、多くの女の人は手で顔を覆い、「きゃっ」と小さな悲鳴をあげた。上級生の女子数人は指差して笑った。女の人でも、好奇心に満ちた目つきで僕の裸をじろじろと見に近づいてきた人が何人か、いた。
僕はいたたまれず、走った。と、誰かが水をこぼしたのか、床の一部が濡れていて、僕は滑って尻餅をついた。足の裏から手のひらはもちろん、パンツの尻の部分までがびっしょり濡れてしまった。
「大丈夫か?」と駆け寄ってくれた人に心配無用を告げて立ち上がると、背後で嬌声が響いた。
濡れたパンツが尻にぴったり貼り付いて、透けて見えるというのだった。手を叩いて喜んでいる男の人や女の人がいた。僕は手でパンツを尻から引き離して、くっつかないように片手で押さえながら、ようやく教室に戻った。
教室に辿り着いて、濡れたパンツ一枚の裸を少しでも隠せるのは、自分の席以外になかったから、すぐに自分の席に行き、着座した。その時、尻に、ねちっと液体状の感触があった。まずいと思った。僕は座ったまま、ゆっくり尻を動かした。軽く尻を上げようとして、この液体状のものがなんなのか、分かった。接着剤だった。即効性のある強力な接着剤らしく、僕のパンツは椅子にぴったりくっ付いていた。誰のいたずらかは知らない。しかし、大変まずいことを起こさせるいたずらであることは間違いなかった。給食時には、班ごとに皿を持って並ぶことになっていた。僕の班は最後だったけど、それまでに椅子からパンツが取れる可能性はゼロに近い。先生がパンツ一枚の裸のままで椅子に座って体を固くしている僕を見て、「あら、可哀想にまだ裸のままなの。いい加減服を返してもらいなさいよ」と言って笑った。
「だって反省が足りないんだもん。一言も謝ってないから、まだ服は出してもらえないみたいなの」と、Y美が説明した。
すると、さっき僕を手洗い場に取り残して去った四人の女子が、「そうよ、そうよ」と囃した。
「いくらなんでも可哀想過ぎるわ」
先生は事も無げにそう言って、侮蔑したような笑みを浮かべた。僕の班の順番が来るまでに、どうか取れますように。祈る気持ちで、もぞもぞと尻を動かしていたが、椅子ごと動いてしまって、その度に同じ班の人から不審の目で見られるのだった。そして願いも虚しく、その順番が来てしまった。
「ほら、行くわよ」
同じ班の女子から裸の肩を叩かれたが、立ち上がることができない。もし、この接着剤が取れたら、パンツ一枚の裸を見られる苦痛は、全然大したものではないと思った。その時、校内放送があって、僕らの先生が職員室に呼ばれた。先生は、「みんな、先に食べてなさい」と言い残して教室を出て行った。一向に立ち上がろうとしない僕を、Y美や先ほどの4人の女子が取り囲んだ。風紀委員もすぐそばに来ていた。
「早く立てよ」「立ちなさいよ」
裸の背中を小突かれながら、僕は必死になって抗弁した。
「誰かが接着剤を付けたらしい。パンツがくっ付いて取れないんだよ」
Y美と風紀委員が目配せをしてニヤッと笑ったのを僕は見逃さなかった。
「これやったの、お前たちだな。どうしてくれるんだよ」
「そんなの誰がやったかなんて、どうでもいいのよ。お前は早く立って並びなさいよ」
例の女子4人の一人が僕の脇の下に腕を差し入れて、引っ張り上げようとした。僕は必死にパンツのゴムを掴んで、「やめて、やめて」と叫んでいた。しかし、僕はクラスで一番背が低く、非弱だった。一人が僕を引っ張り、もう一人が椅子を押さえていると、たちまち僕の体がずるずると上がっていった。椅子に接着したパンツが僕の体から離れてゆく。女の子たちが待っていましたとばかりに悲鳴を上げた。
僕はついにみんなの前で素っ裸にされてしまった。両腕を掴まれているので、おちんちんを隠すことができない。僕の両腕を掴んでいる…