彼氏の母親が色々と酷い人だった

2024/10/07

学生時代のしょぼい話を聞いてください。
19歳だった私は、学内のコンパで知り合った1つ年下の男と付き合い始めた。
彼は一見普通そうに見えたものの、この男(実家住まい)の母親が相当な基地外だった。

2度デートして付き合う事にした3日後に、
「大事な息子が年上の女に騙されてる!今すぐ連れて来い!!」
と大暴走して挨拶に行かされる羽目になった。

1週間後に場をセッティングされ、会うなり上から下までジロジロと舐め回すように私を見て
「地味だね」
とケチをつけられ、手土産のチーズケーキを
「ありがとう、でもこれ嫌いなんだけどね」
と激しいジャブ。

22の時に産んだ子だと聞いていたから当時40歳だったわけだけど、20歳にもなっていない私に若さで張り合ってくる基地外ぶり。

自分の周りの40代女性(親戚か習い事の師匠しかいなかったけど)は落ち着いた大人の女性ばかりだったので余計に。

客が来ると分かっているはずなのにTVが点けっぱなしだし、剥き出しで傷だらけのCDを積み上げたタワー(複数)を前にキンキン高い作り声で
「そーゆーの、ちょー嫌いなんやぁ」
と言う彼の母には驚愕した。
当時の私は
「年上(目上)の人が言う事には基本的に”はい”と、それに付随する事以外言ってはいけない」
という価値観で育っていた為、彼の母に違和感を覚えつつ当たり障りなく彼との付き合いを続けていた。

しかし、彼の母はこちらへ来い来いとしょっちゅう私を彼の家へ呼び出して家デートをさせ、彼と私を2人きりにはさせずに監視するようになり、値踏みの視線もよく感じた。

新しいアクセサリーとかバッグとか服とか、彼より先に彼の母が気付く。お前が彼氏かというくらい気付く。
(全部自分のバイト代で買っててプレゼントではない)

しかも値段も聞く上に、終いには根掘り葉掘り私が通っている美容院から使っている化粧品、最終的には仕送りの額まで事細かに聞いてきた。
その後、私と同じ化粧品カウンターで同じ美容部員さんを指名、20代用の化粧水や乳液をフルで購入。

同じシャンプーも揃えて息子である彼氏に。
「お母さんエエ匂いやろ?私子ちゃんと同じやな!匂ってもエェで!」
と迫る。

何かおかしいぞと思っていた時、私の父が医者だという事を彼氏が彼の母にバラしていた事がわかった。

医者と言うと結構なお金持ちだと思われるかもしれないけど、私の父は研究職の公務員だったのではやっている開業医の生活とは雲泥の差。
医師免許を持っているというだけで診察もしない。
(子供の頃団地の8畳間に5人で寝ていたというと驚かれる)

誤解されると嫌なので彼氏には公務員と言っていたのに、私の友達がネタ的に
「◯◯(私)ってお医者さんのお嬢さんなんだよ~稼げる男にならないと結婚出来ないよね」
と言ったのでバレた。

彼氏「私子ちゃんのお父さんってお医者さんなんだよー凄いよねー」
彼母「そんなお嬢さん、うちでは貰われんやん!どないするん!」

慎重に関係を構築していたつもりだったのに脱力した。
それがハッキリしてからの彼母は、より私を目の敵にするようになった。

「私子ちゃんには分からんかもしれんけど、普通のおうちではこうなんやでー」
「私子ちゃんのおうちはもっとえぇもん食べてるかも知れんけど、これがうちらの精一杯なんやぁ」
「何でも買ってもらえて綺麗にしてられてえぇなぁ、私は若くで結婚してずぅっと子育てで青春なんかなんもないわ」

「ハイ」
「そうなんですかそれは大変でしたねぇ」
「それからどうされたんですか」
「いいえそんな事ありません」
「いえいえとてもとても」
と人あたりよく当たり障り無く応対すればするほど彼母の増長は続き、段々実家の規模や生活ぶりにまで踏み込んでくるようになってきた。

いくらなんでも、というプライバシーのほじくりが当たり前になり、会った事もない実家の家族を気取っているだの金持ちぶっていて温かみが無いだのと批判され、家が大金持ちだからと決め付けて世間知らずで無知な私子へのダメ出しをする。

そこまでされて、ようやく私はこの人達と将来家庭を築く事は無理なのではないかと唐突に気づいた。

彼母「実家のお母さんは普段何してるの?」
私子「本が好きなので本を読んでる事が多いです。時々お勧めを送ってくれるんですよ」
彼母「えー?TVとか見ないの?」
私子「TVは父もあまり好きではないのでつけないようにしています」
彼母「専業主婦なのに!?ありえない!信じられない!」

キッカケはこんな会話だったと思う。
いつでもどこでもTV(バラエティオンリー)点けっぱなしのこの人たちと一緒になったら、私は静かに音楽を聴いたり本を読んだりする事もままならないんだ。

汚部屋で寝っ転がってTVを見ながらお煎餅バリバリ食べて解決熟女(当時彼母が好きだった番組)見るのと他人の噂をする事だけが人生の楽しみの大部分になっちゃうんだ、彼と結婚したらそういう人を
「義母です」
ってどこにでも紹介しなくちゃいけないんだとその時初めて思い至ってゾッとした。

一度付き合ったらよほどの事が無い限り結婚するものかと思っていた自分も相当な馬鹿だった。
心の中だけで彼とは別れる事に決めたのだけど、いざすんなり別れられるかというと疑問が残った。

当時の私としては、彼自身にはそんなに問題はないのではと思っていたので、私にベタ惚れの彼が納得しないと面倒だという思いがあった。
下手な事をして私が悪いように思われて変な噂を流されたりすると、今後の学生生活に影響が出るかもしれない。
考えた結果、私が彼母に嫌われれば良かろうという結論が出た。
(今なら私が嫌な事を言われ続けていたのに聞き流していたり彼母をとめてくれなかった彼氏も問題があると分かる)

彼母が嫌がる事で、私にあまりダメージの無い効果的な方法は何だろう?と考えた時に思いついた。
嘘でも構うもんか、彼母が大嫌いなお金持ちのふりをすればいい。

それからというもの、嫌で堪らなかった彼母に会うお家デートの日が楽しみになった。
今日も点けっぱなしのTVで都合よく何でも鑑定団がやっている。

彼母「私子ちゃんのおうちにもマイセンとかあるん?(チラッ」
私子「マイセンは少ないですねぇ、祖父が洋行した時に求めたものばかりで。今は母の好みでリモージュとかフランスものが多いです^^」

彼母「そ、そう。きっと高いんだろうね?」
私子「母に言わせるとお金は問題じゃなくて、一番いいのは好きな作家さんの作品を買って育てる事みたいですよ^^工房まで行くのが面倒ですけど^^」

彼母「私子ちゃんのおうちは部屋数どれくらいあるの?」
私子「さあ……数えた事がないので分かりませんけど(指折り数えて考え込む)、母屋だけの話ですか?離れは入れないんですよね?^^」

彼母「……母屋とか離れとかあるんだ」
私子「茶室は?入れないですよね?蔵は入れなくていいと思いますけど^^」

彼母「茶室!」
私子「落ち着きますよね^^祖母が小さい頃から教えてくれたせいかも^^」

彼母「お母さん宝石とかいっぱい持ってるんだろうね」
私子「さぁ?重いから好きじゃないって言っていつも預けっぱなしです^^」

彼母「成人式は着物なの?いいやつ買ってもらうんじゃないの?」
私子「今染め屋さんに下絵を描いてもらってるところなんですウフフ、父のお宮参りも母の嫁入りも誂えた呉服屋さんなので皆張り切ってくれてて^^帯は祖母の結納の時のにします^^」

TVで皇族の方が出るとサッと座り直す私。
そのトピックが終わるまでは背筋を伸ばして謹聴の姿勢。
終わると何事も無かったかのように元に戻る。

彼母「何?何なの?」
私子「え?ただ今上陛下のお姿がお映りになりましたので……」

彼母「だからなんなの、テレビでしょテレビ。ケッ」
私子「あ……大伯父が昭和天皇の地元への御幸の際、ご案内役を仰せつかりまして大変に名誉な事だったと常々申しておりましたのと、恐れ多くも直に拝謁してまことに得がたいお方でありながら近しくお声をかけてくださったと申しておりましたので皇族の方々には僭越ながらお慕い申し上げております。あっ彼男くん、もう時間だから行かないと^^」

要約すると相当嫌味だけど、何日にも分けて薄めた毒をちょっとずつ送り込んでやった。
自分で根掘り葉掘り聞いておきながらイライラする彼母を見て途中からどんどん楽しくなっていった。
私が今まで嫌な思いをした分、彼母もイライラしたらいいと思った。

彼母は段々と目に見えて攻撃的になり、鈍い彼も
「最近オカンおかしい」
と言うようになった。

それからは彼に、”彼母は彼を自分の夫の代わりにしている事”や”バイトや友達付き合いを制限して彼の自立を妨げている事”をじわじわ吹き込んでやった。

私が悪者にならないよう、慎重に言葉を選び彼を誘導して最終的に彼母と彼を対立させた。

彼母の
「あの女(私その場に居たのに)と付き合いだしてからあんたは変わった!」
という言葉に
「成長したんだ!母親なら喜べよ!俺ばっかじゃなくて親父に構えや!」
と言い返した彼氏を見て何となくもう大丈夫だと思い、別で話し合いをして別れた。
結構素直だった。

卒業して私は地元に戻り、何年も経ってからふと彼の家の近所に住んでいる友達に聞くと、彼母は彼を”私の小さな恋人”扱いし続けようとして粘着してウザがられていたらしい。

彼が稼ぐようになったら仲の悪い彼父と別れて2人で暮らす計画だったみたいだけど、今は彼父と彼母の2人で暮らしているとか。
彼は敢えて転勤のある仕事に就いたそうだ。

立場を利用して他人をいじめると、それなりに報いがあるんだと思った出来事でした。

多少私が関係してる結果かもしれないけれど……聞いてくださってありがとうございました。

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