のび太「ドラえもんとか、実際無理だろ」
2018/02/11
学生「どうかしました?野比先生」のび太「ううん、何でもないよ。それより研磨は終わったかい?」学生「はい。これでもうバリはないはずです」のび太「本体側のインターロック回路も大丈夫?」学生「はい、動作確認済みです」のび太「よし。じゃあモータを駆動してみようか」青い球体の中にギアボックスを収められるのを、のび太は少し離れて見守っていた。
中学卒業と同時に、ドラえもんが未来に帰った。
のび太がもう一人立ち出来る、別れを割りきれる年齢と判断したらしい。
高校の類型選択で、のび太は何となく理系を選択した。
数学や理科が得意なわけ
ではないが、国語や英語も別に得意ではなかった。
相変わらずの適当さでのらりくらりと高校を卒業し、藤子大学の工学部に入学し
たのび太は、そのまま大学院まで進学し、博士課程を修了する。
今ではその藤子大学工学部ロボット工学科で助手をしていた。
その日の午後、のび太が大学生協でラーメンを食べていると、不意に声をかけら
れた。
???「野比先生!」のび太「ん?ああ、しずかちゃん」しずか「うふふ。まさかのび太さんのことを先生って呼ぶことになるとはね」のび太「慣れないなあ、その呼び方」 のび太はガシガシと頭を書く。
ボサボサの髪の毛が余計ボサボサになる。
高校が別れてから疎遠になりがちだったしずかと、藤子大学の図書館で再開した
のはつい最近のことだった。
彼女は大学図書館で司書として働いているらしい。
しずか「それより、のび太さんまたラーメン?」のび太「うん。
でも昨日はカップの塩ラーメンで、今日は生協の醤油ラーメンな
んだよ」しずか「…………」
ふむふむ
しずか「のび太さん、そういうところは変わらないわね」のび太「そうかな?でもこないだしずかちゃんに言われてから、ヒゲは毎朝剃るよ
うにしたんだよ」しずか「それだけじゃダメよ。他に……」のび太「他に?」しずか「そうね、まずその伸ばしっぱなしのボサボサ髪を綺麗に切って整えて、 丸眼鏡をオシャレフレームに変えて、背筋を伸ばして、ヨレヨレの白
衣を洗濯してアイロンかけて……」のび太「………いろいろダメみたいだね」
wktk
しずか「そんなことより、ここへ来る途中に研究室の前を通ったんだけど……」のび太「ん?」しずか「のび太さんの研究室で作ってるアレ……ドラちゃん?」のび太「……うん。といっても、形だけだよ」しずか「そうよね……」のび太「情報工学科との共同開発でね、言語学習型のコミュニケーションロボッ
ト。
そのロボットのデザインを、ドラえもんにしてみたんだ。
周りから
はなんでそんなデザインに』って言われたけど」しずか「のび太さんらしいわ」のび太「けど、本物のドラえもんには程遠いよ」のび太「実際、今の科学じゃドラえもんは無理なんだ」
支援
???「やあ、野比先生にしずかちゃん」しずか「あら、出木杉さん」のび太「出木杉くん……その呼び方はやめてよ」出木杉「いいじゃないか。助手になったのはのび太くんの方が先なんだし」のび太「君のいる情報工学科とは違って、うちは慢性的な人手不足だから……そ
れだけの理由だよ」出木杉「謙遜するなって」のび太「そんなことないよ……現に今の共同開発だって君が皆を引っ張ってるし
ね。
出木杉くんの方が、やっぱり僕より優秀だよ」
出木杉「そうかな。それより、ドラえもんの話をしていたみたいだけど?」のび太「ああ、あのコミュニケーションロボットの方のね」しずか「言葉を学習するって聞いたわ」出木杉「まあ、多少はね。
でも22世紀からきた、あのドラえもんほどのAIはとて
も無理だ」しずか「そう……」のび太「……本当に、ドラえもんの言っていたような未来が来るのかな?」しずか「どういうこと?」のび太「ドラえもんが言っていた年までに、今の科学があそこまで進歩するなん
て思えないよ」出木杉「僕もそう思うな。今の科学では到底無理だ」しずか「でも、ドラちゃんはそう言ったのよ?」のび太「それが気になるんだ……どうしたってドラえもんの言っていた年には間
に合わない」のび太「なぜドラえもんは嘘をついたんだ?」
10
この最後の一文だけでどきどきしてしまう。
その日の夜、居酒屋に懐かしい5人がそろった。
のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫、出木杉。
のび太としずかと出来杉の3人が顔を合わせたので、どうせならみんなで飲もう
という話になったのだ。
ジャイアン「しかしのび太が大学の先生だなんてよー、何回聞いても笑えるよなw
ww」スネ夫「出木杉はしっくりくるのになwww」のび太「どうせ馬鹿ですよーだ……」ジャイアン「で、なんなんだよ?話って」出木杉「いや、実はね……」
これは支援する
スネ夫「なるほど、ドラえもんか……」 呟いたスネ夫がスーツのポケットから煙草を取り出そうとし、しずかの方を見て
やめた。
ジャイアンは逞しい腕を組み合わせ、考えこんでいる。
スネ夫は大学卒業後親の会社に入り、ジャイアンは高校を中退して剛田商店を継
いだと聞いている。
スネ夫「僕はのび太や出木杉みたいに専門じゃないけどさ、今の科学でドラえも
んが作れないことはわかるよ」ジャイアン「待てよ、俺テレビで見たぜ。二足歩行したり、会話するロボット」出木杉「ああいうのとはレベルが違うよ」ジャイアン「でもよぉ……そもそもドラえもんが出来たのっていつだ?」スネ夫「確か、あのシュレーディンガーの猫ってドラの漫画有る所知ってる?
ジャイアン「何だよ!まだ100年以上あるんじゃねぇか!それなら……」出木杉「無理だよ。
今の開発段階からドラえもんまでの間にある壁は、あまりに
も高く厚い。
感情を持って、思考して、なめらかな動作も必要。
今のロ
ボットはね、走るのさえ難しいんだよ?」しずか「それにドラちゃんより先に秘密道具が必要よ」のび太「うん、秘密道具はドラえもん誕生以前に出来てたはずだよ。
それに、ド
ラえもんの話が本当ならタイムマシンはもう出来てるはずなんだ」ジャイアン「え?」のび太「ドラえもんは言ったんだ……タイムマシンが発明されたのは2008年だって」 ジャイアンは黙ったまま、店内を見回した。
そして、カレンダーを見ると目を見開く。
ジャイアン「2008年って、去年じゃねぇか!!」スネ夫「反応遅っ!」出木杉「……その話は僕も初耳だったな」のび太「つまり、ドラえ…